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#2 初恋のひと
みんなのことを思い返す。
6年前はなんでも知ってたのに、今は知らないことだかけ。
なんだかいても立っても居られなくて、ジャージのまま家を飛び出した深夜2時。
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こんな時間に、家を出たのは初めて。
親はすっかり眠っているだろう。
もう7月。半袖でも外を歩ける気温だった。
静まり返る見慣れた住宅街。電柱から青いライトが道を薄暗く照らす。
足は自然と、あの場所へ向かっていた。
6年前、みんなで沢山遊んだしょぼい公園。名前はなんだっけ。
『ひまわり第2児童公園』
そう書かれた公園へ足を踏み入れる。
伸びきった草。少し錆びた遊具。
ここで鬼ごっこをしたり、かくれんぼ、ドッヂボール、中線ふみ、色鬼、人狼ゲーム、DS。色んなことをしたな。
わたし、ゆきむ、りんか、しもだの4人で。
みんなで遊具鬼をした遊具の階段を少し登る。あの頃みんなで遊具に石で刻んだ『るらりし!』の文字。
みんなの名前の頭文字を取った言葉。
(しもだだけ、上の名前だ笑)
この文字は、ゆきむの文字かな。
ゆきむ。ゆきむららいと。
みんなはらいとって呼んでたけど、なんだか恥ずかしくてわたしだけゆきむって呼んでたな。中学3年間、しもだは東京の中学校に行ったし、わたし、ゆきむ、りんかの3人はそれぞれずっとクラスが違かった。
でもゆきむらさんとか、あいださんなんて呼ぶことは一度も無かった。
ゆきむとか、りんかとか呼んだのも両手で数えられるくらいしか無いかもな。しもだなんて、一回も呼んでないだろうな。
少し、寂しかった。
わたしだけかな。
澄んだ夜空の下、わたしは1人遊具に座り込んだ。
「えっ」
聞いたことのある低い声がした。
わたしはびっくりして、声がする方に顔を向けると______
ゆきむがいた。
「なんで……?」
「こっちのセリフだよ!」
驚いたわたしにゆきむはツッコミをした。
懐かしい感じがする。
卒業してから約4ヶ月見ない間にゆきむは少し大人っぽくなって、身長も伸びている気がした。
そんな大きくなった体を縮めて、滑り台に寝っ転がるゆきむは、6年前を思い出させた。
「ほんとになにしてるの?」
「いや…、ちょっと…家に居ずらくなって」
ゆきむは体を起こし、少し俯いた。
久しぶりだというのに、少しも気まずいふりなんかせずに、友達のように話してくれた。
「家出?」
「そんなとこ。さとうは?」
「いやなんか、寂しくなっちゃって」
「へえ」
さとう。そう呼ばれたことが悲しかった。6年前は、元気にるなって呼んでくれてたのに。もうあの時の恋心なんて微塵もないけど、やっぱり寂しくなった。
大好きだったゆきむ。
クールだけど心の奥で優しくて、なんでも出来ちゃうかっこいい人。
今は、どんな人なのかな。
わたしはもう、ゆきむに詳しくない。
「いつから家出してるの?」
「2日前。俺の高校もう夏休みでさ。昼はバイトして夜はホテルに泊まってんの」
「それ大丈夫なの?」
「別に、なんも連絡とかないし」
「なんで家出したの?」
「……なんか、適当」
はぐらかす癖は変わってなかった。
思ったよりも、ヤンチャになったのかな。それとも、なにかあったのかな。
わたしは夜空を見上げる。
「夜空、綺麗だね」
「うん」
「また、彗星見れないかな……」
6年前、わたちたちは町外れの高原で彗星を見た。ゆっくり落ちていく彗星を確かに、この目で見た。
あれは3000年に1回のレアな彗星。また見れたらいいななんて思っても、次に見れるのは3000年後。
「3000年後だな」
「えー、そっか…」
前みたいにゆきむの前ではしゃげなかった。やっぱり悲しくて、わたしも俯いた。
「あのさ、さとう」
「なに?」
わたしはゆきむと目を合わせた。
「あのさ……昔、お前よく俺の相談乗ってくれてたよね」
「うん…」
ゆきむの相談、悩み、愚痴、自慢、色んな話を聞いた。この話をわたしだけにしてくれてたらいいななんて、毎回思っていたのは秘密。
「また、相談乗ってもらいたいんだけど、いい?」
「うん……いいよ。なんでも話して…」
「ここじゃ近所迷惑だし、来て」
「来てってどこに…」
「ホテル」
初恋のひと。大好きだった、ゆきむ。
今思えばゆきむのあの真剣な眼差しは、下心とか変な意味なんて無くて、ただわたしを頼ってくれていたんだと思う。それにもっとはやく気づければよかったのに。