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六度目の嫉妬
耳をもぐことができれば、こんなふうに苦しむことはないのかもしれない。
脳みそを空っぽにして廃人になれば、こんなことで心がざわつかないのかもしれない。
目を抉り出して仕舞えば、もう悲惨な自分の姿を見なくて済むのかもしれない。
あゝ、世はムジョウなり。
僕は周りから聞こえる音を遮断するようにして教室を飛び出した。三猿になって馬鹿になって虎馬を呼び起こさないようにした。
…今、馬が二回出てきたな!?馬車馬のように使われて可哀想な動物だ!
そんなことはさておき、僕は誰もいない場所、河川敷へといつの間にかやってきていた。もう自分が何をしているかもわからない。
教室では学生の半数以上が内定が決まったことに関して口々に報告しあっていた。皆、嬉々とした表情で、猿のようにウキウキキーキーとハシャいでいた。やかましいわ。
ご存知の通り、僕、田中タイシはいまだに内定が一社も出ていない。それどころか最終面接まで進んだこともない。たとえ一次選考を通過したとしても、その先に更なる高難易度ステージが立ちはだかっていると考えたら、僕は…どうしても…越えられる気がしない。
ふと、マリオのゲームを思い出した。一面をクリアしたら二面へと進み、二面をクリアしたら三面へと進み。クリアできなければもう一度トライする。
人生もこんなふうだったらまだマシなのに、と考える。就活には中間地点すらもない。しくじったら振り出しに戻る。鬼畜双六である。
僕はそんな双六世界が嫌いだ。就活なんてほぼ運ゲー。内定をとって浮かれている奴らは単にサイコロで6を出してゴールしただけだ。ラッキーハピネスだ。
僕は毎回1を出しているのかもしれない。一マス進む。一マス進む。もう一マス進む。…あ、ここのマス「振り出しに戻る」じゃん。アンラッキー。
そうだ!ただの運ゲーだ!僕が否定されているわけじゃないんだ!
そう考えてふと我にかえる。
運でも…負けているということか?
「くっそぉぉぉぉお!!」
行き場のない怒りとも悲しみとも取れない叫びが、河川敷を超え川をこえ、見知らぬ野良犬の耳に届いたのであった。
「わん!」