特に何もなく、日常を送っていた探偵、樽巻缶体。しかしとある時、街で大きな音が鳴る。
直後、聞こえたのは「スフォルツァンド」という叫びだった。
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フォルティシシモ・スケルツァンド-序幕
ピアニッシシモ:PP(ピアニッシモ)より弱い音。
煙草に慣れた手つきでライターの火を付けたその男は、私が見ているのに気づくと無言で同じタバコを一本差し出してきた。彼は、探偵である樽巻缶体(たるまきかんてい)であり、私は彼の助手である村谷伊織(むらたにいおり)である。
缶「吸わないのか?」彼は淡々と言った。伊「今は昼間だ。俺はタバコの煙が好きだからな。今じゃ見えねえよ。」缶「面白いな。独特の苦味がいいのに。」伊「個人差って知ってるか?」缶「はいはい、いつもそれだよな。」2人で談笑していると、突然遠くから爆発音が聞こえ、地面から全身へと衝撃が伝わる。缶「向こうだな。行くぞ。」彼は随分と勘が良く、頭も回る。しかし、だからこそストッパーを使えない。
現場へ行くと、横転したトラックの後ろに大量の車が並んでおり、玉突き事故だろうと考えた。しかし、異なったのは
缶「トラックの上…なんだあの変人…」トラックの上を見ると、そこには1人のスーツを着こなし中性的な顔立ちの大柄な者がいた。直後、耳に凄まじい痛みが走る。
伊「うっ?」辺りは静かだ。
痛みは収まり、
**直後、聞こえたのは。**
**`「スフォルツァンドォ!」`**
大きな爆発が起き、トラックと車が爆発していく。缶は無言で「こちらに来い」というサインを送り走った。後を追いかけている途中、後ろを振り向いた。スーツの人間は消えていたが、爆破により発生した煙で見えなくなっただけかもしれない。
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缶「おい、大丈夫か?」伊「う…あ…?あぁ…生きてるな…」缶「事務所に着いた途端にいきなり倒れやがって…」伊「ああ、すまんな…」缶「なあ。」伊「あ?」缶「一応テロ事件として警察は動いているらしいが、俺はどうも違う気がする。」伊「どういうことだ?」缶「俺はあの時聞こえたんだ。『デ…シェン…を…れ…』っていう声が。」伊「何だ?スピリチュアルなもん信じんのか?」缶「いや、でも…テロなんかじゃない。」伊「は?」缶「破滅の音楽隊って聞いたことあるか?」伊「ああ、あるが…まさかあのスーツ野郎がそのメンバーだと?」缶「その通りだ。そう思う。」伊「へぇ…」
*コンコンコン*
伊「俺が出る。」扉が開く。そこには、1人の老人がいた。「あぁ…探偵さん…俺の話を聞いてくれ…」缶体は聞こえるであろう範囲まで近寄った。矢「俺はまず…木流矢気(こりゅうやき)っちゅうんだが…家にこんなのが…届いたんだ…」木流矢気と名乗る老人は、一枚の紙を差し出してきた。その紙にはただ一つ、
**`スフォルツァンド`**と書かれていた。矢「もしこれが…あのテロと関係が…ある…と思う…と怖く…てな…」老人はいきなり帰った。缶「喋り方が随分遅かったな。」伊「ああ。」
缶「まあいい。指紋通すぞ。指紋。」
キャラクター紹介:樽巻缶体
樽巻探偵事務所の探偵であり、喫煙者。常にタバコとライターを持ち歩いているが、自分の痕跡が残らないようにするため、手袋を装着し「human」と書かれた目の位置に穴が空いている仮面を着けている。その顔は伊織しか知らないらしい。
フォルティシシモ・スケルツァンド-一寸先のニヒリスト
警察「指紋鑑定の結果が出ました。」缶「やっと出たか。」
あれから1週間。破滅の音楽隊はあれから音沙汰が無い。
警察「恐らくこれは…**柊鯉心**だと思われます」伊「ひいらぎ…こしん?」缶「誰だそいつ」警察「いや、調べてもらったのですが全く情報が出ませんでした」伊「どういうことだ?」警察「彼が15歳になったところから何も記録がなくて…そもそも小学校も幼稚園も行ってないんです…」缶「はあ?そんなんありえるかよ。」警察「本当なんですよ…」そこに、1人の老人が現れた。
矢「探偵さんのお二人いらっしゃいますね」缶「あぁ、昨日の奴か」
矢「あなた達本当にそれでできると?」
伊「どういうことだ?」
老人はコートを脱ぎ捨てる。
そこには、|スーツを着た男《あのときのあのおとこ》がいた。
スーツ「ああ〜もう面白すぎて笑いを堪えるのも難しかったですよ」スーツは手に何かを握っている。
`トライアングル`だ。
スーツはトライアングルを鳴らす。耳障りな金属音が聞こえ、直後そのトライアングルから光が発せられる。
缶「あれは…レーザーだ!避けろ!」トライアングルから光線が放たれる。スーツ「今のを避けるとは、すごいですねぇ…」伊「何嗜んでやがる!」伊織がスーツに拳を振る。しかし、
**キイイィィィーン**
トライアングルは大きな音を出した。
伊織は、額から大きな音を出した。
缶「クソッ、病院だ」スーツ「私は尾を掴まれるのは好きじゃないんでね。」瞬きをする間に、スーツは消えており、そこには額から血を流した伊織と腹を貫かれ、絶命しているであろう警察官がいる。
---
?「暇ですねぇ、羊ででも遊びましょうか。」
ベートーヴェンのような容姿をした男は、「|V《ブレス》」という刻印があるピアノを奏でるため、椅子に腰掛ける。観客達は皆、「|D.C.《ダ・カーポ》」と書かれた旗を掲げている。
男は、演奏を始める。「メリーさんの羊」を演奏しているのだろう。
演奏を始めてから、ピアノから音符が具現化して出現し、同時に羊が現れている。
男は、演奏をしながら言う。
?「虚無というものはいい。すべてを包み込むそこには、争いも駆け引きも悲しみも一切存在しない。ただそこに平和があるのみ。私の理想の終着点は、まさにそこなのです」
シ「はじめまして、わたくし、シモン・グレイスと言います」
観客、いや、**`ダ・カーポ音楽隊`**の者は皆、旗を上げ、演奏も終わらぬまま、歓声を上げる。
これは、四御島という日本の小さな島の物語である。
フォルティシシモ・スケルツァンド-「虎の威を刈る人、略して虎威人」
缶「伊織、思ったことがあるんだが言っていいか?」伊「発言を悪いことだとでも?」缶「…あのスーツ野郎は柊鯉心だと思うんだ。」伊「なんだ?あの紙の指紋鑑定で出たからか?」缶「ああ…その通りだよ。あの老人の正体がジジイに上手いこと化けたスーツ野郎だったんだ。自作自演も疑うだろ。」伊「でも…あんなジジイみたいにボイチェンするとか出来ねえだろ。」缶「…長寿音って知ってるか?」伊「名前だけ」缶「長寿音は先天的な能力で、周りの人間が『楽器』と認識したもので音を奏でるとその音によっていろいろなものを具現化させられるんだ。曲を演奏するならば、その曲に関するものが出てくる。」伊「じゃあ、名前が長寿音なのはその音で寿命を延ばしているってことだな。」缶「ああ、そうだ。」
*雨が降る。*
*ポツポツ。*
「メェ」変な鳴き声が聞こえる。か弱い…「ん?」
羊が入ってきた。
缶「は、はぁ?」伊「おかしいだろ!四御島に牧場は無いだろ!」缶「いや、落ち着け。羊にビビってどうする。」伊「あ、確かにそうか」羊は何食わぬ顔で事務所内をノロノロと歩き回る。やがて、出て行った。
ドアから1人の男が入ってくる。ベートーヴェン似の男だ。
「おや、こんにちは。私の羊が逃げ出してしま」
カチャッ
リボルバーを構えている探偵だ。
「…初対面の方にリボルバーを向けるだなんて、探偵らしくないですね」缶「当たり|前《めぇ》だろ。メェだけにな。」「わたくし、こんな見た目でも足が遅い方ではないので。」男はそう言うと、背負っていた大きなバグパイプを持ち、「トルコ行進曲」を奏でる。
見る見るうちに、バグパイプから“夢色”の変形する物質が出てきたかと思うと、形を変え、くねりうねり、ヒトになった。
缶「伏せろ!」
ドドドドッドドパリィイイィン!オドドオドドドド
鋭い銃声が鼓膜を突き刺す。物陰からよく見てみると、ヒトに見えたものは機械仕掛けのモノだった。男は、それらに手を仰ぐと、どこかへ逃げて行った。
缶「危なかったな…伊織、大丈夫k…」
伊織が、居なくなっていた。
辺りを見渡すと、明らかに先程の射撃では全く狙っていなかった所の窓が割れている。
ちょうど、人が2人入れるぐらいに割れて。
缶「**おーい!伊織ィ!**」
割れた窓から先を見れば、向こうには黒いノースリーブワンピースに水色に染められているボブヘアの人間が、伊織を無理矢理手を繋がせて走っている。
缶「クソッ!」伊織は割と顔立ちが整っている。周りにチヤホヤされるのはなんとなくわかっているが、ここまでされるのは初めてだ。
震える手でリボルバーを構える。
女目掛けて。
**バキュウウウウウウウウッン!**
大きな音を立てる。
音は空へ響き渡る。
今日のうちに、二回も銃撃があったのだ。
女は、
血を流してはいなかった。
よく見ると、女はオカリナを持っていた。そして強く鋭い眼差しでこちらを睨み、伊織をその場に置いて去った。
缶「おい、伊織!大丈夫か!」伊「ああ、なんとか…」缶「あの女誰だ…?」伊「知らん、でもなんか『*D.C.*』っていう字のバッジ着けてたのはわかった。」缶「D.C.、ダ・カーポ音楽隊か?」伊「ああ、あの物理的にニヒリズムな奴らか。」缶「はあ…本当に面倒なことに巻き込まれた。」
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「路地裏でスーツを着た中性的な男と一礼を交わし、次に1匹殺す。その後、リボルバーを所持した探偵が来るため、彼らに対処して時間を稼ぐ。予定はこれで合ってるな。`鯉心`。」
「ああ、それで合ってるよ。`業者さん`。」
四御島の地底には、不可解なモノが隠されているらしい。
我は、|未来《かこ》を観測できる。
我にはわかる。
あのスーツは、必ずしや自らの手であれを討てると。