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目次
劣等生シンドローム ◯プロローグ
私は、劣等生だ。
そう、言い切れる人はどれだけいるだろう。
決して多くはないと思う。だが、少なくもないかもしれない。
私も言い切れる人の中の一人だ。
「そんなことないよ」「元気だして」「大丈夫だよ」。
そんな言葉、もう聞き飽きた。
きっと、私は最後の日まで報われない。
そんなことは、わかってるから、放っておいてよ。
劣等生シンドローム 1 ◇視線恐怖少女の過去1
3月上旬。もうすぐ今年度も終わりを迎える頃。
あたし――|言葉《ことは》 |来楽《くら》は、今年で小学校を卒業します。
あたしは学校が好きです。勉強や宿題は面倒だが、朝起きたときに、"よし今日も学校だ、頑張ろう"と思えるくらいには学校が好き。
そんなあたしは、今友人たちと他愛もない会話を交わします。
「それがさー」
「確かに」
友人の名前は|北原《きたはら》 |祭莉《まつり》。あたしにとって一番の友だち。
「そういえば、クラ」
「ん?なあに?」
「"劣等生症候群"って知ってる?」
劣等生症候群ってなんだろう。聞いたこと無いな…。
症候群ってことは、病気なんだよね?
戸惑うあたし。祭莉は優しく囁いた。
「あのね、最近SNSとかでよく聞く噂。実際にその症候群が存在するのかは、患わないとわかんないの」
"症候群"って名前がついてるのに、噂だなんて、なんか変。
だって、"その病が存在する"って改めて認められて症候群の名前がつくんじゃないの?
「噂…?どういう症候群なの?」
「症状はね、人によって大きく違ってくるの」
「どういうこと?」
「ほんとに人それぞれなの。体の一部が動かなくなったって人もいれば、目や髪とかの見た目が変わるだけって人もいる」
あたしは目を見開いた。
「…そんなに違うの?それなのに、それらの症状全部まとめて"劣等生症候群"って言えるの?」
ふと思った疑問を投げかけた。
だって、そうじゃん。そんなに人によって違うのに、それらまとめて同じ症候群なんて言えないじゃん。
そんなあたしに、祭莉は口元に笑みを浮かべた。
「その症状の共通点はね、3つあるの」
「まず1つ目。この病気は、SNSで活動をしている人しか発症しない」
「へぇ」
「そして2つ目。この病気は、日頃のストレスから来るの」
「最後、3つ目。この病気を発症すると、体のどこかに黄色のアザが現れる」
私は全ての共通点を聞き終えて、心の中に小さな疑問が浮かんだ。
「…なんでそんなに詳しいの?」
自分が発症したってわけでもないだろうし。どうしてそんなに詳しいんだろう?
「…………」
祭莉ははっとしたような表情になり、一度目を閉じてから答えた。
「…私の友達が、発症してて」
「ふーん」
『キーンコーンカーンコーン』
「あっ、チャイム鳴っちゃった」
「またあとでね、来楽!」
あたし達は解散して、自分の席に戻った。
先生の話を聞きながら、さっきの"劣等生症候群"について考えた。
――劣等生症候群。それは、存在するかもわからない、謎の病。
この時の私はまだ、知らなかった。
これから自分が、どんな悲劇に合うのかを。
---
「ただいまー」
ふう、やっと学校が終わったよ。学校が好きとはいえ、やっぱり6時間は疲れる…。
「来楽ちゃん、おかえり」
毎日毎日聞く、聞き飽きたお母さんの甘い声。
正直お母さんは過保護すぎて嫌い。やっぱり家よりも学校のほうが安心する。
「…」
何も言わずに自分の部屋に入ろうとした。
「来楽ちゃん。最近視力が落ちてきているでしょう。スマホを1日1時間に制限するから、貸して」
お母さんにそう言われて、あたしはムッとした。
だって、私はネットのある小説サイトで日記などを投稿している。フォロワーも最近200人を突破して、良いところだっていうのに。
1日1時間なんて嫌。あたしのことなんだと思ってるの?ちっちゃな幼稚園児じゃないんだから。
「嫌だっ」
あたしはそう言い放った。
だってそうでしょ。1時間ってひどいよ。
「…来楽ちゃん…?」
「そのちゃん付けもやめて。もう、放っといてよ」
あたしは自分の部屋に入って、扉を勢いよく閉めた。
「はぁ〜、なんなの……」
あたしはため息を吐いた。
スマホ触ろう…。
SNSで自分の愚痴をいくつか書き込んだ後、タイムラインを見た。
愚痴垢のタイムラインには、共感できる愚痴がたくさん流れてくる。そんな愚痴たちにいいねを押す。
そして、しばらくするとこんなものが流れてきた。
『劣等生症候群って知ってる?』
"劣等生症候群"…。
それって、祭莉が言ってた…。
本当に流行っている噂なんだなぁ。
そんなふうに軽く捉えて私はスマホを閉じた。
---
翌日。
「わーっ遅刻する!」
こんにちは、遅刻系ヒロイン、言葉来楽ですっ。
パンをくわえて、走って走って、やっと学校についたよ。
ふう、疲れたな。
学校の靴箱を開けると。
「…え……」
なんと、たくさんの画鋲が入っていた。
「……っ一体誰が…」
---
教室
ガラリと教室の扉を開けると、私は大声で叫んだ。
「私の下駄箱にっ!画鋲入れた人誰ー⁉」
流石に声が大きすぎたかも…。
でも後悔する暇もなく、ある人物の声が聞こえてきた。
「来楽っ」
「え?」
聞き覚えのある声のする方を見た。その先には…
「祭莉?」
なんと私の大親友、祭莉がいた。
なんだろう?
「祭莉、どうしたの」
祭莉は口をきゅっと結ぶと、あたしの方を見た。
「……ごめんなさいっ」
急に頭を下げた祭莉に、あたしはぎょっとする。
何何何ー⁉
一体どうしたんだろう。あたし、何か祭莉に悪いことされたっけ。
……もしかして…。
「…来楽、ごめん」
「私がやったの、画鋲…っ」
あたしの心のなかにあった嫌な予感が的中した。
泣きそうになりながら謝る祭莉を、あたしはじっと見つめた。
「…祭莉が?」
どうして祭莉がそんなことをしたの?
ふつふつと怒りがこみ上げる。
どうして祭莉が…。まさか裏切り?私をいじめたくなった?
そんなことを考える。でもそのようなことを考えても仕方がない。
私は祭莉に問いかけた。
「どうして、そんなことをしたの?」
「……そ、れは」
「それは…?」
あたし達がそんな会話をしていると、高い声が割り切って入ってきた。
「祭莉ちゃん!」
祭莉の身体がビクッと震える。
この声は、クラスのリーダー的な女子の浜藤かんなちゃんの声?
でも、そんな子が、祭莉にどんな用?
「祭莉ちゃん、ありがと」
「か、かんなちゃん…」
「ちょ、ちょっと、何⁉急に入ってきて。私、祭莉と話してて…」
あたしはそんなことを言った。でも、かんなに睨まれてしまった。
ひいーっ、ごめんなさい。
「来楽ちゃん。あんたのこと、ずっと前から嫌いだったの」
「調子乗ってるでしょ、来楽ちゃん。このクラスにあんたのこと好きなやつなんて1人も居ないわよ‼」
かんなに言われた言葉が頭の中でループする。
「…え…」
どうして。
私が何かしたの?ずっと前から嫌いだった?どうして?かんなちゃんとなんて、ほとんど喋ったこと無いのに…
「ど、どうして?かんなちゃん…」
「どうしてって。あんた、所詮は陰キャのくせに、陽キャみたいに振る舞ってるのムカつくの。絶対調子乗ってるでしょ」
「え…」
私は目を見開いた。私、そんなふうに思われていたの。
「ま、祭莉も…祭莉も、そう思っていたの?」
私は、祭莉の方を見て身体を震わせた。
「っ来楽…」
「……」
下の方を見る祭莉に、かんなが耳元で囁いた。
「…祭莉ちゃん?」
「っ……かんな、ちゃん…」
祭莉は一度目をつぶったあと、目を開いて私に言った。
「…そうだよ!来楽のことなんて、ずっと大嫌いだった‼」
ラナはそう言って、走っていってしまった。
「じゃ、そういうことだから。ばいばい来楽ちゃん」
「まっ……」
目に涙があふれるのを感じ、はっとする。
何、どういうことなの。
泣いているところを見られるのが嫌で、あたしはトイレに向かった。
トイレの中
「……なんでっ…」
そう呟いた。あたしがあんなふうに思われていたなんて。
恐怖心で心がいっぱいになっていくのを感じる。
「…………」
人間って、怖いんだなぁ。
改めてそう思う。
人が怖い。人の、視線が怖い。
――あたしの地獄のような日々が始まった。
こんにちは!作者のるみあです!
私は普段はプリ小説というアプリで活動をしております!
こちらでは小説を主に上げていくので、どうぞよろしくお願い致します。
それでは、また次の機会に!
劣等生シンドローム 2 ◇視線恐怖少女の過去2
---
教室
「……」
教室に入ると、あたしに視線が一気に集まった。
きっと、さっきの出来事を見られていたのだろう。もしくは、見ていなかった人は、見ていた人に何が会ったのかを聞いたのか。
周りの視線が怖く、髪の毛で顔を隠した。
「……見ないでよ…」
――人の視線への恐怖。それは、この日から始まった。
ちらりと祭莉の方を見る。
すると、祭莉もこちらを見ていたようで、目が合ってしまった。
――その瞬間だった。《《あれ》》の始まりは。
「バチッ」
そんな音が聞こえた気がした。
「……っ」
その痛々しい音と共に、頭に激痛が走った。
「……ぇ…」
頭が痛い。
頭を手で押さえて、なんとか痛みをこらえようとする。
頭がズキズキと、私の全てを否定するように痛む。
…どうして?なんで、こんなに急に。
痛みは薄れてゆくが、こんなに急に激痛が走るものなのだろうか?
流石に痛すぎた。
なんなんだろう。
保健室に行く?でも、もう痛みは収まったし…。
「……」
きっと、偶然。
ただ、今日は身体の調子が悪かっただけで。
あたしは、そう思った。思うことにした。
---
翌日
わいわいと賑わう休み時間の教室で、あたしはひとり、ぽつんと自分の席に座っていた。
「……」
あたしの胸が、きゅっと締まる。あるいは、締まる気がしたのか。
あたし、祭莉が居ないと何もできないんだなぁ…。
それにしても、暇……。ほんとにやることないなぁ。
「言葉さん。この資料、職員室に置いてきてくれる?」
あ、はい。わかりました。
担任の先生の声に反応して、顔をあげようと思ったら。
「バチンッ」
っ⁉
手がびりびりと痺れる。
な、何?それに、今の音、前も……。
「…言葉さん…?」
あ、先生が心配してる…。
痛いけど、痛みを伝えて余計に心配されるのも嫌だし。
ていうか、保健室なんて行ったこと無いから行きたくない…。
「す、すみません。大丈夫です」
しびれが収まってくることに安堵して、資料を受け取る。
あたしは、資料を受け取って、走って教室を出ていった。
---
「はぁ…はぁ…」
職員室に資料を置いた後。
あたし、わかっちゃったよっ。
あの頭痛や手のしびれの原因っ。
《《あれ》》は……!
人と目が合う瞬間に、起きている!
「……なんで…」
目が合って、あの音がして、そして、体調が悪くなる。
職員室にはたくさんの先生がいた。
だから、職員室に入った瞬間、一斉に先生たちがこっちを向いた。5人くらいの先生と目が合った。
そして、ものすごい吐き気に襲われた。
どうやら、たくさんの人と同時に目が合うと、体調不良の大きさが大きくなるらしい。
「……なんでなの?」
---
チャイムが鳴って仕方なく教室に戻る。
あたしは人と目が合わないように下を向いて教室に入る。
席につくと、ななめの席に座っていた祭莉と目が合った。
「バチバチ」
目の前が一瞬真っ暗になった。
やばい、くらくらする…。今度はめまいか…。
…祭莉……。
「……っ」
目も合わせられないなんて、ひどいよ。
本当になんなんだろう、これ……。
……ん?
何、これ。
私は、あることに気づいた。
――手の甲に、黄色いアザがある。
「……」
「……!」
"この病気を発症すると、体のどこかに黄色いアザが現れる"
…………
………
「……!」
"劣等生症候群"
あたしは、その症候群の名をノートに書いた。
あたし、劣等生症候群になったんだ……。
---
それからあたしは、頻繁に保健室に通うようになった。
もちろん、祭莉とも話していない。
友達も作れていない。
中学生になったら作れるといいけど……。
っていうかっ、中学生になっても友達が作れる気がしませんっ。
――あれから、劣等生症候群はもちろん治っていない。
小説のサイトや愚痴垢でも頻繁に愚痴を吐いて、ストレスを解消しているけれど…、それだけじゃやっぱり治るわけじゃない。
---
小学校卒業式。桜の咲く中、涙を流すみんなをあたしは見つめた。
「…」
みんなが涙を流す中、無表情でぽつんと立っているあたし。
…これって泣いたほうがいいのかな?
「はぁー…」
あーあ。楽しい学校生活だったのに、最後の最後にあんなことになるなんて、ほんっとサイアク。
ついてないなー…。
そんなことを考えていると、あの人の声が聞こえてきた。
「来楽」
「…!」
もしかして……
祭莉?
「…来楽」
ど、どうして…。
「あの…そ、その」
え…?
「ご、ごめん!やっぱなんでもないっ!」
ま、祭莉、ちょっといい?
「え、何?」
……目の色が、変わってるよ?
「…え」
「……っ!ご、ごめん!じゃあ私もう行くからっ!」
ま、待って⁉
い、行っちゃったよ…。
最後の、なんだったんだろう?
祭莉のいつもの吸い込まれそうな漆黒の色の瞳が、血みたいな赤色の瞳になってた…。
「…祭莉も、あたしと、同じなの…?」
あたしのそのつぶやきは、誰にも届くことはなかった。