名前の通り掌編です。二次創作でも曲パロでもなんでも掌編集です。
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目次
歳際
12/31。今日は年越しですね。
みんなは笑い合って、一年を振り返り、明日からのことを思う。素敵な日です。
そんな日に、貴方は私の前からいなくなった。「さようなら」を言う暇もなく、いつの間にか。
周りを見れば、笑顔が溢れていれる。私とは大違い。
悲しいことに、明日があるのかも、分からない。
この世で生きていくには、私は些か未熟だっ
た。荒波に飲まれ、揉まれ、いずれ朽ちて消えてゆく。
未来を見据えることなく、過去に縛られ続けた馬鹿なニンゲン。
それが私なのかもしれない。
僕の人生は、僕自身でめちゃくちゃになった。
俺の過去の過ちのせいで。
何回繰り返しただろう、何回泣いただろう。
でも、時は遡ることも止まることもなかった。
長ったらしい話はここまでにして、私も貴方に会いに行きます。良いお年を。
いつまでも、貴方を憶っていました。
素敵な日に大切な人をなくした悲しい誰かのお話。遺書なのかもしれないし、日記かもしれないし。残念ながらこれは短編。この人にとっては大きな分かれ道でも、私たちにとっては短すぎた。報われないですね。
めりーくりすます
イルミネーションが飾り付けられ、キラキラと輝くツリー。街ゆく人々は笑顔を浮かべ、おそらくカップルだろうか。とても楽しそうに言葉を交わしている。
かく言う僕も、彼女がいる。所謂リア充という人種なのだろう。
「ねぇ、見て見て!クリスマスツリーめっちゃ綺麗じゃない?」
「そうだね」
彼女は楽しそうに街を歩く。そんな彼女を見れて、僕も幸せだ。
そうこうしている内に、時間は過ぎ、楽しかった時間も終わりを迎えようとしている。
都心部だからか、まだイルミネーションの明かりはついていて、人も少なくない。
時計の針が進むごとに、僕が彼女と居れる時間は少なくなり、やがて。
(なんか寒気が..そんなに気温は低くないはずなんだけどな)
「クソッ、リア充が..!」
ナイフを持った男がこちらに走ってくるのが見えた。彼女だけは、と直感的に思ったが、気づくには少し、遅かった。
ザシュッ、という音が聞こえるかと思ったが、そんなことはなく無音だ。強いて言うなら服を貫通した時の音くらいしか聞こえないだろう。
真横で最愛の彼女が刺されたというのに、僕はいたって冷静だ。おかしいことだとは思っているが、自分でもなぜ動けないのか分からない。
彼女は自身の腹に包丁を刺された瞬間は、刺されたことに気づいていない様子だった。
しばらくして、彼女は痛みで悶え始めた。そこで僕もハッとして、焦りが出始めた。地面には彼女の血が垂れ、血溜まりが出来ていた。額には変な汗が滲み、そこからはあまり覚えていない。
もう、最初から最後まで、訳がわからなかった。
(もし、彼女と僕が付き合っていなかったら、彼女は..)
今日も水を入れ替え、米をよそい、線香を立てる。
ふと外を見ると、まだクリスマスのムードが抜けきっていないのか、ツリーにはまだイルミネーションが輝いている。
訳の分からないお話です。クリスマスは様々な人に幸福と不幸を届けるのかも知れませんね。
逃避行
「一緒に逃げない?君があの日、ああ言ったみたいにさ」
山のてっぺんで、2人は背中合わせで座り込んでいる。
『何言ってんの、今逃げ終わったところでしょ?』
2人は裸足で服は所々が破けており、土汚れがついていた。
「確かにね」
上を見れば、どんなプラネタリウムよりも綺麗な星空が広がっていた。
「..まさか私達も星空を見て、綺麗とか思うようになるとはなぁ」
『それはそう』
また、2人の間に沈黙が流れる。
『てかさ、回りくどい言い方だから何言いたいのか全然分からないんだけど』
「あー、まずそっからかよw」
「まずさ、私たちは人体実験をされてて、そっから私たちの国まで逃げてきたわけじゃん?」
『うん、それは流石に分かる』
「そんで、我らが祖国に今にもバクダンが落ちそうなわけじゃん?」
『うん...うん?』
一瞬理解しそうになり、問題点に気がついた。
『え、いや。バクダンって..?』
「バクダン知らない人?あの、全体的に黒くて〜火薬が入ってて爆発するやつ」
『いやバクダン自体は知ってる』
「あぁそう?じゃあなんも聞くことなくない?」
もう1人はしばらく考え、こう聞いた。
『いや、そもそもなんでここにバクダンが降ってくるの..?』
「えぇ〜なんか私達って向こうではまぁまぁ良い感じの実験台だったらしい。逃げたんなら逃げた先壊せばいい、っていう」
『あ〜、そういう?分かったわ。で、どうすんの?』
また静かになる。
「もういっそのこと地獄とか行っちゃう?」
『えよくね?いいじゃん、めっちゃ似合うじゃん』
「でしょ〜?」
『んじゃ行くかぁ?』
そう言いながら、2人は立ち上がる。
「何で逝く?」
『え〜、確か実験所からくすねてきたフォールディングナイフがあるはず..』
がさごそとポケットを弄る。
『おっけあった、三つか..一個なんかに使って残り2つはそれぞれの分ね?』
「異論ナーシ!」
『ん〜まぁブッ刺しときゃいいか』
そう言いながら1本目を深くまで地面に突き立てる。
『ん、あげる』
「助かるー」
2人はナイフの切先をお互いの腹に向けた。
『せーの!でブッ刺すからな?遺言は今のうちだぞ?』
「うわあぶなw刺しかけたじゃんw」
「うーーん、遺言...美味しいご飯が食べたかったです。綺麗な服を着たかったです。ふかふかの布団で寝たかったです。後は〜..」
『ちょ、長い長い..遺言かぁ」
少し考え、口を開ける。
『まぁ最期までお前と居れたから特にないわ』
「おい何勝手にカッコよくしめようとしてんだよw」
『えぇーwじゃあお前とちゃんと地獄に行けますように。これでいいや』
「それ願い事じゃんww」
2人は暫く笑い、やがて静かになった。
『よし、行くぞ』
「アイアイサー!」
「『せーのっ!』」
お互いの腹にお互いのナイフが刺さり、お互いを見つめ合う。
2人は最後も笑っていた。
祈り
その夜、私はカミサマにお願い事をしました。
「カミサマカミサマ、どうか私を善人にしてください。」
両手を組み合わせ、目を閉じて。
「善を助け、悪を挫く。そんな素晴らしい善人にしてください」
「此れはある種の懺悔です。カミサマカミサマ、どうか私を善人にしてください」
神様のへの御供物の様に置かれた一本の血塗られた包丁。
鉄の匂いがする部屋。
床を歩けば、そこはたちまちレッドカーペット!
「カミサマカミサマ、どうか私をお許しください」
反省も、後悔もしている。けれどそれでも辞められない。
「カミサマカミサマ、私を善人にしてください」
私は悪人で、どうしようも無い屑。それでもまだ、善人になりたい。
「カミサマカミサマ、私は救われますか?」
遠くから聞こえるお迎えの音。
やったぁ!遂にカミサマが来てくれたんだ!きっと私を善い人にしてくれる筈!
「〜〜!!」
声が聞こえる。
「カミサマカミサマ、やっと逢えましたね!」
手にナニカが掛けられる。手招きをされる。
「カミサマ、今から何処行くの?」
訳のわからない乗り物に乗って、訳のわからない場所に連れて行かれる。
「カミサマ?私は確かによくないことをしたよ?でもよくないことをしたのは、よくないことをしていた人だけだよ?」
「カミサマ?私は悪人だけど、ココロは綺麗だよ?多分」
「どうして?私はそこら辺にいる人よりも、善の意識はあるはずだよ?」
「カミサマ?カミサマカミサマカミサマ、カミサマ?」
がしゃん
レバーの音が響く。
<暗転>
---
『今朝の4時55分。死刑が実刑されました。ーーは最後まで神様、神様と呟き続けていたそうです。続いては----』
善人であろうとした悪人。可哀想ですか?
変化
歳を取る、背が伸びる。それは人間にとって避けられないもので。
「少し身長が伸びたかな..」
全身鏡に映る自分を見る。
「変わったなぁ..」
---
『あんたもうそろそろ卒業でしょ?それで、就職先はどうするの?』
親が問いかける。
「どうしようかなぁ」
卒業なんて、したくない。だって
(大人になんて、なりたくない)
『どうしようかなって..ちゃんと考えなさい!』
声を張り上げられる。
「そんなこと言われてもさ」
少しの言い合いが始まる。
ダンっ!
[こっちは仕事で疲れてんだよ!勘弁してくれよ..]
父親が机を叩き、そう吐き捨てる。その目の下には、クマができていた。
(大人に近付くことの何がいいの?)
---
小さい頃は、近所のケーキ屋で働いていた店員さんが憧れだった。
いつもニコニコしてて、明るくて。
でも、それすらも作ったもので。
営業終わりに、少しドキドキしながら店員さんに手紙を渡した。店員さんは嬉しそうに受け取ってくれた。私も、嬉しかった。
手紙は道路の脇に落ちていた。
その翌日に店員さんに「手紙は読んでくれた?」と聞いた。店員さんは、素敵な笑顔で『読んだよ〜!素敵なお手紙ありがとうね!』と言った。
いつのまにか憧れなんて消えていた。
大人になれば、自分が自分では無くなってしまうのだろう。
それなのに、いつの間にか店員さんのような笑顔ができるようになっていた。
(もういっそのこと、これ以上変わらないようにすればいいのかな)
時間が存在する限り、私は変わり続ける。
それなら、時間を止めて仕舞えば変わらなくて済む。
『明日一緒にケーキ買いに行くからね』
1階から母親の声が聞こえ、適当に返事をする。
---
深夜0時、ドアを開ける。
変わらないままでありたいから、綺麗に保たれるよう海へと足を進める。
「遺言も書いたし、あとは変わらなくなるだけか」
しばらく歩き、段々と潮の匂いが香る。
浅瀬の方に足を踏み入れ、ちゃぷちゃぷと深い方へと進んでいく。
(昔の私だったら、自殺なんて御免だったろうな..変わっちゃったなぁ)
肌を突き刺すように冷たいはずの海水が、今は心地よい。
ふと、足が止まった。
本当に、これでいいのだろうか。結局私は変わった状態で死ぬことになる。
いつか見た、誰かの笑顔が思い浮かぶ。
それが何を意味するかなんて、私には分からない。
(でも、大人になるのは嫌だ)
足が波を掻き分ける。
今はただ、体を預けていたかった。
茶番
この世では多様な茶番が繰り広げられている。
華々しい道を歩む者も居れば、辛く苦しい道を歩む者も居る。
例えば、友への憎悪を激しく抱いていた者は、今は友の側で抱えていた憎悪を捨て、笑っている。
それに反し、想い人への想いがライバルにより砕かれ、行き場のなくなってしまった想いだけを抱え続ける者も居る。
それらの話は、聞いた者に多少の爪痕は残したことだろう。
善であろうとすればするほど、周りは離れていく。悪であろうとすればするほど、周りが善へと押し進めてくる。その繰り返しが、無限に続くだけ。なら、我々はどこを向いて歩けばいいのだ?
それと同様、ハッピーエンドに見えたとしてもバッドエンドに見えたとしても、それが逆転しうることはあり得ないことではない。
目の前で誰かが倒れたとしても、それを助ける者はそうそう居ないだろう。皆、目ではなくスマホを向けるだけ。普段「人を助けられる人間になりなさい」と言ったその人さえもその場から逃げる。
この世は矛盾に溢れている。この文字列も、あの文字列も、あの人もこの人も全部矛盾だらけだ。
矛盾だらけの不完全な世界に、美しく纏められた物は不釣り合いだ。だからこそ、人々は美しいものに集まる。
皆目を背ける、汚い現実から。薄気味汚れたこの世界から。
これを読んで何かを感じたとしても、それすらもまた茶番だ。
最後の晩餐
「28番、昼食の時間だ」
その声は、檻の向こうに居る無精髭を生やした男に投げかけられた。
28番「もうそんな時間か」
男は生気の宿っていない目でこちらを見る。
「今夜ついに処刑だ。よかったな」
イヤミったらしく言葉を投げかける。
28番「あぁ、とても嬉しいさ」
きょとんとした顔をして、こう尋ねる。
「死ぬんだぞ?怖くないのか」
28番「そりゃ怖いさ、でも、こうやって牢獄で暮らし続けるのも、飽き飽きしてきた」
「呆れた。まぁいいさ、今晩の飯は何がいい」
28番「最後の晩餐ってやつか?」
男は少し嬉しそうにこう答える。
28番「そうだな..暖かい白米と味噌汁、塩の味がしっかりとついた魚。そしてお茶」
「..平凡だな。もっと他にないのか?例えば..」
言いかけたところで、男が静止する。
28番「俺にとっては夢にも見なかったような食事さ、これでいい」
「分かった。せめて死ぬ前に遺書くらい書いておけよ」
そう言って、檻の隙間から紙とペンを渡す。
こつこつと耳に残る音を立てながら、去っていく。
---
「28番、最後の晩餐を持ってきてやったぞ」
その声は、檻の向こう側に居る腹を空かせた男に投げかけられた。
28番「遅かったな」
「死ぬ時くらい満腹で死なせてやろうと言う計らいだ。感謝するんだな」
男は少し不満そうな顔をしながらも、目の前に並べられた一般的な家庭の食事を見る。
28番「看守さんに会えるのも最後だろうし伝えておくべきか」
「なんだ、遺言か?少し早いが聞いてやる」
28番「俺はロクな人生を過ごしてこなかった。あのクソ女の口車に乗せられ、まんまと詐欺られた」
「あぁ。そのせいで捕まり、もうそろそろで処刑だもんな」
男はこう続ける。
28番「要は生きる意味を無くしたってことだ。生きる意味は無い言う奴は偶に居るが、本当は生きる意味を持っている」
28番「こんな歳なのに、迷った子供みたいに道が分からなくなってる。結局俺は何を成して、何を成したかった者なのか」
28番「せめて、俺の引導は看守さん。あんたが渡してくれ」
困惑したようにこう言う。
「何を言いたいかよくわからん。まぁどっちにしろ、今日でお前の人生は終わりだ。考える必要なんてないだろ」
フッ、と静かに笑う。
28番「そうかもな」
---
今から処刑者の処刑を行う!
3人の処刑人が同時にボタンを押すと、処刑が執行される。もしその3人が押せなかったら、後ろに居る1人がレバーを引き、処刑が執行される。
(いつになっても慣れん..)
手が震える。ボタンが押せない。まるで透明な壁があるようだ。
男は椅子に座り、項垂れている。
(俺に引導を渡すほどの度胸なんてないさ)
がこん。
遺書
看守さん、俺を無事処刑できたかい?できていなかったとしても、それはそれでいいさ。
俺が君に殺してくれと頼んだのは、なんとなくさ。あんまり気負いすぎたら面倒だからな。
結局俺は何を成したかは分からない。このかた何にも考えずに生きてきたからな。
俺の最後の瞬間を見たところで、思うものは何にもないだろ?それでいい。
結局俺は、騙され何も成さずに死んでいくだけだったってだけさ。
不眠はご不満
寝れない。
眠りたいのに、眠気はあるのに寝れない。
眠りたいのに、名前をつけれないモヤモヤが頭の中に居座り続けていて。
あの時迷惑..いや、それならあの時の既読無視...
何かを思い出していたはずなのに、何を思い出していたのかを忘れてしまう。残るのは後味の苦いもやもやとした感情だけ。
あぁ、寝たい。
眠たい寝たい、でも寝れない。
睡眠薬は、買えばそれで終わるけれどバレたら色々と面倒くさくなる。
病院にも行けないし、誰かに相談もできない。相談したとてまともな回答なんて返ってこない。
寝れないというよりも、寝るという機能が体に備わっていないようだ。
永眠したらこんな悩まなくても済む、とは考えたがそれをするほどの勇気はない。
いつのまにかキッチンに立って包丁を首に当てて、結局それだけだ。
あぁ、眠たい寝たい。どうしたら寝れるのか。
そんなことを考えている間に、すでにカーテンの隙間から光が漏れ出ていた。
君のための薬指
その日は結婚指輪を買いに行く日だった。
美優「ねぇねぇ、この指輪よくない?」
美優の薬指には、既に指輪がはまっていた。今日買う指輪は、俺のための指輪だ。ただ
「美優に贈ったのは婚約指輪だぞ?本当に結婚指輪は要らないのか?」
美優「う〜ん、でも結婚指輪を貰ってもそこまで嬉しくない気がするんだよね。プロポーズの時の指輪がいっちばん嬉しいもん!」
そう笑う彼女の花嫁姿を想像して、少し顔がニヤけそうになった。
美優と俺はつい先週まで交際をしていたが、ついに結婚まで持ち込むことができた。
美優「挨拶も済ませたし、後は式くらいかな〜」
「婚姻届とか指輪選びとかまだまだあるぞー」
その話をした途端、逃げるように奥の方の指輪を見に行った。
その時だった。
ガッシャーン!
ドアのガラスが割れる音。その原因は、猛スピードで突っ込んできた車だった。
ショーケースの中の指輪が飛び、割れたガラスが俺の左手に刺さる。
普通は痛がるところだが、あいにく俺の頭には彼女のことしかなかった。
「美優、美優!」
そう名前を呼び、辺りを見渡す。
店内の奥にいたのが功を奏したのか、美優には怪我一つないようだった。
周りからは何かを呼ぶ声や、カメラのシャッター音が聞こえる。
(そんなことせずに美優を安全なとこに連れてけよ..)
それを最後に俺の意識は暗転した。
---
目が覚めると、そこは病室だった。
俺が第一に感じたのは、生きていて良かったという安心感ではなく、絶望だった。
左手がない。手首から先がごっそりとなくなっていた。
少しして、美優と医者が病室に入ってきた。
美優は嬉しそうに俺に抱きついて、泣いていた。
医者が言うには、初めに俺に突き刺さったガラスよりも細かいガラスが血管や筋肉などに突き刺さっていたらしい。
俺は指輪を嵌められなくなった。
これに関しては、医者を恨むつもりもない。正しい判断をして、俺を救ってくれた医者を責める術など、俺にはなかったからだ。
「美優。俺、美優のためにとってた薬指。もう戻ってこねぇわ」
マグロ漁船〜大量虐殺〜
俺はマグロ。しがないただのマグロ。
ここ最近、俺らの海にしょっちゅうでかい鉄の塊がやってくる。
「マグ美、あいつらうざくない?」
マグ美「それなー」
マグ美は俺の彼女。マグロが泳ぎ続けるのと同じように、それなーと言い続けている。
「そろそろ痛い目見せてやるか?」
マグ美「それなー」
ちょうどいいタイミングで網が降りてきた!
「うぉぉぉぉぉ!!!!」
あみをうまいこと尻尾に引っ掛け、反対側に思いっきり泳ぐ。
だが抵抗虚しく陸へ上げられてしまった。
(くそっ、、俺はこんなにも弱い...)
脳裏にマグ美の顔が浮かび上がる。
(俺は、俺はぁっ!)
「こんなところでは終われねぇぇぇ!!!!」
『おぉ、このマグロ生きがいいぞ!』
そう言った漁師の首元へ身を寄せて、思いっきりがぶり!と噛みつく。
「まずい!」
すると、他の漁師たちが網や包丁を持って登場してくる。
...その時!
ざっばあぁん!
大きな波音と共に船がぐらぐらと揺れる。
「これは!」
「他のマグロたち!」
まさか、俺を助けに、、!?
仲間の協力により、船は沈没しかけていた。
他の漁師は振り落とされる中、この漁師だけは踏ん張って耐えていた。
「決着をつけようじゃないか、」
びゅう..と潮風が鮫肌ならぬマグロ肌を撫でる。
「今ッ!」
お互い、血飛沫が飛び散る。
ついに船は沈没した。
海の底、俺はマグ美と共にいた。俺は死にかけだが。
「マグ美、ごめんよ」
「それなー」
「俺、最後にお前に伝えたいことが、あるんだ..」
きらきらと日差しがさしこむ。
「愛してる」
「...それなー」
なにこれ
死生
ふと不安になった。
人は死んだらどうなるんだろう。
よく聞くのは、天国や地獄に行くというものだ。
天国と地獄はどのような場所なのだろう。
地獄はなんとなく想像できる。体が燃やされ、針に突き刺され、それでも死ぬことのできない。
じゃあ天国は?
天国でも死なないのか?つまらなくなることはないのか?善でも悪でもない者は天国へ行けるのか?
そもそも天国や地獄などのものは、空想の世界ではないのか..?
死んだら無に帰るのか?思考は止まり、その先は?
真っ暗?それとも真っ白?それとも今の記憶はなくなり、0からスタートすることすら忘れ新しい生を始めるのか?
それなら前の自分はどこへ?
それなら、なぜ人が死ぬ時遺族は葬式をする?墓参りをする?
無に帰る...そもそも、無ってなんだ?
息が詰まる。息ってどうするんだ、そもそも息ってなんだ..?
息が、息、息息息息。
触れてはいけないものに触れる。
触れる...その触れる手は、手は?
手は、あるのか?
人外方法
人間を辞めたい。それが昔からの夢だった。
人間であると死ななきゃいけなくなるし、辛いこともたくさんある。
でも人間をやめられればきっと幸せに生きられるはず!
「いいないいな〜人外っていいな♪」
小さい声で替え歌を歌いながら、街を歩く。
『ねぇねぇお姉さん、困ってることとかない?』
チャラそうな金髪に、クマの濃い男。いかにも怪しさ満点な見た目をしている。
「困ってること...う〜ん、あるけどそれがどうかした?」
『やっぱり!うまい話があるんだよ、これを使えば嫌なことなんて忘れて毎日が幸せになれるよ!』
人を辞めずに幸せになれる...?
「凄い..!私買います!」
『なら特別に、今回だけ無料にしてあげる!』
---
家でもらった薬を開け、水に溶かして飲んでみる。
...しばらくすると、強烈な吐き気に襲われた。
それでいてなお、
たのしい。
しあわせをかんじられる。
めのまえがまっしろで、まるでてんごく。
「ひと、やめなくてもいいんだぁ」
---
「おにーさん、前の薬、またちょうだいよ」
この前のお兄さんは怯えた顔をしてこう言った。
『は..?お前、人間か、!?』
「なんでそんなことを言うの?ひどいなぁ」
そう言って手を伸ばす。
『...ッぐぁっ、!』
ギリギリとお兄さんの首が締め上げられる。掴んでいた腕はだらーんと垂れ下がった。
スマホが地面に落ちる。
「あれ...?」
あぁそっか
私って元々人間じゃなかった、のか
偽装の平凡
平凡な日常を、ずっと過ごしていたい。
朝起きて、ご飯を食べて、学校に行って、友達と遊んで、寝て。
そんな普通で変わり映えのない日々をただひたすらに送っていたい。
変に頑張っても、失敗したら嫌だし。
雄太「おはよ〜!」
「おはよう雄太、今日も元気だなぁ」
そんないつもの挨拶を交わして、変わらない日々が巡る。
---
雄太「俺の彼女で〜す!」
『初めまして〜、ゆう君がいつもお世話になってます〜!』
唐突に、頭を鈍器で殴られたような出来事だった。
声が震えないよう、口を開ける。
「雄太って彼女作るタイプなんだね、!めずらし〜」
雄太「逆に俺らとおんなじくらいの年齢で、彼女作りたくない人を見つける方が難しくね?」
「そっ、か。何はともあれおめでとう」
その日から、だんだんと自分が取り残されていくような気がした。
「あれ?竹林君この前のテスト30点くらいじゃなかった?今回70って、何があったの?」
竹林「いや、何があったも何も勉強しただけだよ。流石に30は焦るわ」
「あれ、三上さんってそんな足早かったっけ?」
三上「ちょっと失礼すぎない?私放課後少し走ったりとかしてるからね」
皆はどんどんと苦手を克服していく。自分で考えて、行動して。
僕はテストの点が悪くてもどうとも思わないし、運動ができなくても改善しようとは思わない。
皆に向かって手を伸ばすけど、その手は空を切るだけ。
段々と姿が見えなくなっていって、ついに
雄太「お前危機感とかないの?そろそろヤバくね」
今までの全てを否定された。
雄太にとっては何気ない一言なんだろう。それでも、僕にとっては人格を否定されたように思えてしまう。
「....ょ..れ」
雄太「え、何?」
「何だよそれ!!!」
雄太は聞いたことのない僕の大声に驚いていた。正直、自分でも驚いた。
「失敗を恐れずだとか、成功の元だとか!!知らないよっ!!!!!」
「なんでそんなに進めるの!?怖くないの!?」
雄太は伸ばしたその手を、自分に戻した。
雄太「お前、デカい声出せるじゃん。昔は出せたのかよ?」
ぴくり、と少し反応をして。
「しらねぇよ」
そう吐き捨てて、教室の扉を乱暴に閉めた。
---
僕は変わらない。失敗が、どうしようもなく怖いから。
僕の普通は段々と壊されて、つい昨日修復不可能なまでにぶち壊された。
壊したのは、自分かもしれないけれど。
布団から出ることすら億劫で、どうしようもなく何もしたくない。
僕はその日、何もしないという最悪の形で。
変わることを決意した。
---
あの日から数ヶ月経った。
僕は怖いから何もしたくないんじゃない、面倒臭いから何もやらないんだ。
変わるには努力が必要、でもそれをしたくない。
ただそれをせずとも何かを成せるわけではない。だから怖いという逃げ道を作った。
その逃げ道すらあの一言で、もう壊されてしまったけれど。
あの時以来、成績はガクンと落ちたし、雄太とも話せない。親とは目すら合わせていない。
社会のゴミと言われても、何も言い返せない。
僕はどうしたらいい、僕は何がいけなかった。
答えは出ているけれど、目を背け布団に潜る。
僕は今日も、最底辺で息をしている。
名前を付ける程ではありません
「暇だ」
正確に言うと、暇ではない。やらないといけない仕事もあるし、食事も取らないといけない。それがこなせない訳ではないが、何をしても満足感が得られない。充実とは、どういう状態だっただろうか。
すりガラス越しに、世界を覗いているようだ。何もかもが不安定で、ぼんやりとしている。後ろでは、天気予報のアナウンサーの声が聞こえる。
〈今日は昼から夕方にかけて、段々と曇りになっていくでしょう〉
「ぁーー」
椅子に座り、魂が抜けたように腕がだらんと下がる。ぼーっと、ただただ時間だけが過ぎていく。名前のつけられない感情だけが、頭の中を渦巻いている。
椅子から立ち上がり、ソファに膝から倒れ込む。流れるようにスマホを開き、意味もなく流れる文字を追い続ける。
「何をやろうか......」
ぼそっと呟いたその言葉は意味を持たず、音として消えるだけだった。
やりたいことなんて見つかるはずもないのだから、そんなことを言ったって何も変わらない。
スワイプをしていた指を止める。それは、小さな子供が無邪気に外で遊んでいる動画だった。昔は、少年だった頃に私は、何をしていただろう。
---
私は、人一倍好きな事にのめり込む性格をしていた。
昼夜問わず、1分1秒..とは言えないかもしれないが、それだけ多くの時間そのことに費やしてきたつもりだ。
「そろそろ辞めにしておきなさい」
母親からそう言われても、手が離せない。そんな子供だった。
ある時はスポーツについて。ある時は絵について。ある時は天文について。
様々な分野に触れてきたつもりだ。しかし、私の知的好奇心はその程度では収まらなかった。
(もっと色んなことが知りたいなぁ)
今とは真反対。..いや、今は昔の反動なのかもしれない。
---
なぜ人は歳を重ねるごとに、こう陰鬱でジメジメとした思考が増えるのだろう。そんな疑問を抱えながら、晴れとも曇りとも、どちらともつかない空の下を歩く。特に意味があるわけではないが、気づいたら外に出ていた。
(どうせだし、なんか食うか)
辺りを見渡し、目に飛び込んできたカフェのドアを開ける。
カウンターは満席だ。別に空きが出るまで待ってもよかったのだが、そんな事をしていたら更に心のモヤは増え続けるだろう。この気持ちを少しでも紛らわすために、一人寂しくテーブル席に座ることにした。
メニューを見るが、特に目を惹かれるものはなかった。メニューを閉じ、ふと目線を上げた時だった。
[申し訳ございません、お客様。もしよろしければ、こちらのお客様と相席していただくことは可能でしょうか?]
店員さんが、申し訳なさそうに尋ねてくる。
正直断りたかったが、今はそんな気分にもなれなかった。
「はい、大丈夫ですよ」
そう伝えると、店員さんはお冷を二人分置き、ペコペコしながら一人の女性を残して消えていった。
「席、座らないんですか」
女性は軽く首を横に振り、席についた。
『何も頼まれないんですか?』
高く、それでいて凛とした声。
「えぇ、まぁ。..貴女は?」
『カフェラテでも頼もうかと』
あぁ、いいですね。なんて言葉を返し、窓の外を眺める。後ろから、店員さんと女性の話し声が聞こえる。
注文が終わったのだろうか、女性は私に話しかけてくる。
『普段、カフェとか来られるんですか?』
「いや、特にそう言ったことは」
......沈黙。私は会話が下手なのだろう。
『..今日はいい天気ですよね』
「そろそろ曇りですよ」
......おそらく、二人とも会話が下手なのだろう。
「えっ..と、今、やりたいことが見つからなくて」
余計に話が進まない話題を出してしまった。本来、こういう話は初対面の人にするようなものではないだろう。
恥ずかしさからか、自然と目線が下がる。
「..すみません」
何に謝っているのかすら、分からない。目だけを動かし、ちらりと女性を見る。
『....』
なぜか、笑っている。
「笑いますよね......そりゃ急にこんな話されても」
人と話すと、何もうまくいかずにいつもより声が出しにくくなる。いつも感じている名前のないものよりも、もっと嫌な気持ちが頭の中で蠢く。
『いえ、嘲笑はしませんよ。これは貴方にピッタリだと思うんです。』
言い方が不自然で、怪しすぎる。
(壺とか勧められても、絶対買わないぞ......!)
『貴方、言葉にできない何かがあるんじゃないですか?』
心臓の鼓動が聞こえた。心の内を覗き込まれているようだ。
『そういうものって、無理に言葉にしなくてもいいと思うんです』
彼女はにこりと笑う。
『作曲、してみませんか?』
---
あれから小一時間話し、店員からの視線が気になってきたところで退店をした。
それまでの間、私はずっと彼女の話を聞いていた。
彼女は作曲をしているらしい。知り合いに作曲家が居ないから、仲間が欲しかったそう。だからきっと、私に作曲を勧めたんだろう。
彼女が言うには、綺麗に作られた曲よりもありったけの感情を込めた曲の方がより"完璧な曲"である..らしい。
彼女はそれと、もう一つ私に言ってくれた。
貴方はいい曲を作りそうだ、と。
そんな事を思い出しながら歩いていると、すぐに家に着くことができた。
「..作って、みるか」
少しの気まぐれ、少しでも無心になりたかった故の逃げ道。やる意味はないが、やらない意味もない。
家に入り、パソコンを探して起動する。椅子に座り、楽曲制作ソフトを立ち上げる。説明を読み、思うがままに音を並べ重ねる。自分でも何をしているのかわからない。ただ、体が動く。時々手が止まる。それでもまた、動き出す。
私の感情を、初めて音として書き出す。重しの乗っていた心が、軽くなっていく。
この時の私は、意味を求めず、ただ思うがままに。
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『凄くいい曲ですね..! 嫉妬しちゃうくらいです。久々に曲で感動したかもしれません』
私たちは、この前と同じカフェで曲を聴いている。名前も知らず、連絡先も交換していないのに、また出会えたのはあの時の同じ時間帯にきていたからだろうか。
「なんだか、やりたいことが見つかったような..そんな気がします」
私はそう告げる。
『そういえば、曲名はどうするんですか?』
考えてすらいなかった。
う〜ん、そうだなぁ..と頭を悩ませる。
「名前を付ける程ではありませんよ」
曲名の小ネタ的なのです。
名前を付けるほどではないっていうのは、この曲は主人公の感情を元に作られた曲だから、感情の名前を知らないんだったら曲の名前もつけられないねっていう話です。
分からない
※この話を読むにあたって
物書きがこんなことを言うのは恥じるべきなのかもしれませんが、この小説は何も考えずに作りました。なので読む時も何も考えずに読んでいただけると幸いです。
分からなかった。自分は何者で、何を持って生まれてきたのか。その生は、何か意味を孕んでいるのか。分からなかった。
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朝、目が覚める。憂鬱で、退屈で、億劫な、そんな朝。小さくあくびをしながら、身支度を整える。
両親は共働きで、朝早くから出かけている。だから朝食も自分で用意しなくてはならない。うっすらとした味のする朝食を口に運び、歯を磨く。ついでにと思い、手を洗おうとする。深くガタガタに揃った爪の間に水が入り、少し痛みを感じた。
準備が整えば、リュックを背負い、ぼんやりとした意識の中足を進める。目だけを動かし、ちらりと周りを一瞥する。友達だろうか。仲良さげに話しながら通学をしている学生がいた。恋人同士だろうか。お互いの距離が近く、照れくさそうに会話をしている学生がいた。足を踏み出すまでが、遅くなっていた。
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教室に着いて早々、2人が話しているのが目に入る。自分と、話をしている2人との3人グループ。自分が着くのがいつもより遅かったからなのか、2人だけで話しているようだ。心なしか、自分を含んで話している時よりも楽しそうに見えてしまった。ただの被害妄想だろうか。
リュックを机の横のフックにかけ、椅子に座る。その様子に気づいたのか、2人が話しかけてくる。
『おはよ〜』
『今日の授業めんどいやつ多くね?』
なぜか急に、頭が真っ白になった。いつもどういう風な返し方をしていたのか、分からなくなってしまった。心拍数が上がり、喉が閉まるのがわかる。震えそうになる声を抑え、短く答えた。
「……だな」
2人は少しきょとんとした顔をした後に続ける。
『やっぱ〜〜だと〜〜?』
『ははwーー、ーー!』
3人でいるはずなのに、なぜこうもひとりぼっちに思えるのだろう。少し、気分が悪くなった。
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授業を受けた後でも、気分が優れることはなかった。担任のところに向かい、話しかける。
「先生。ちょっと体調悪くて……早退してもいいですか?」
『分かりました。顧問の先生とかにも伝えておくから。お大事に』
ありがとうございます、と礼を告げリュックを背負い足早に教室を立ち去ろうとする。
『あれ、どしたの?』
朝らから声がした。2人だった。何もやましいことはないし、怯える必要はないのに、手が震えそうになった。
「体調が、よくなくてさ。帰るわ」
声を絞り出し、そう答える。
『そっ、か。お大事に。またな!』
その言葉に返すこともなく教室から立ち去る。
校門を出たところで、もう気持ち悪さは限界を迎えていた。息が荒くなる。足取りがおぼつかなくなる。しばらくしゃがみ込み、呼吸を整える。そこからはもう、無心でただ足を動かしていた。
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家に着いて早々、ソファに倒れ込む。止まっていた思考が、急に動き出す。2人は楽しそうだった、自分がいない方が楽しげだった。まだ授業があるのに帰ってきてしまった。朝から晩まで誰とも目を合わせられていない。会話すらまともにできない。できていたことができなくなった。誰も困らない、こんな自分がいなくとも。
自分が自分を責め続ける。言葉が脳に反射し続けて苦しい。自分が、自分だけがひとりだ。虚しい辛い悲しい。誰かがそばにいて欲しい。そんなことを思っていても、なぜかそれが本当ではないような気がする。自分が自分でないような、そんな気が。
分からない。誰かに必要とされているのか。分からない。自分はひとりのままでいいのか。分からない。分からなくちゃいけないのに、分からない。分かりたくもない。結局自分は何なのか、結論の出ない問いに向き合い続けるなんて、気が狂いそうだ。