『少女は、無邪気に笑う————悪魔のそばで。』
人づきあいが苦手で、家族との交流も少なかった14歳の少女“エリカ”。
交通事故に遭い死んだ彼女が転生した先でも、『悪魔の子』と呼ばれ忌み嫌われて……。
そんなエリカは、一人の悪魔と契約をした。
その契約内容は————『私と友達になって』?!
これは、ちょっと……どころかだいぶ変わった、少女の転生物語。
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目次
Episode.1
元は『前世も転生後も孤独なので、悪魔と友達になろうと思います』というタイトルで投稿していましたが、設定を練り直したので、別作品としてまた一から投稿しようと思います!
…そもそも元の作品読んでる人のほうが少ないかもしれないけど()
『まもなく下校時間です。校舎に残っている生徒は────』
ほとんど聞く者のいないその校内放送に、エリカは顔を上げた。気が付くと、彼女の周囲を不規則に行ったり来たりしていた人影たちは姿を消し、日の落ちかけた空からは光がほとんど届かなくなっていた。
(……もう、こんな時間か)
廊下から隣の教室の扉が開く音が響いた。まだ校舎に残っていたほかの生徒────あるいは先生かもしれないが────の足音が、確実に遠のいていく。
軽く息を吐き、さっきまでファンタジー小説を読んでいたエリカもそれに倣った。
▷▶▷
「……寒っ…」
外に出るなり、エリカは白い息を漏らす。まだ真新しいマフラーを取り出し、その細い首に巻き付けた。そしてそのまま、冷たく吹きつける風に立ち向かいながら歩き始める。遥か頭上には、幻想的な夕空が広がっていた。
(……綺麗な空。だけど、どこか悲しい気がする)
どこまでも続く空には、沈みかけた太陽の光を優しく包み込むように夜の気配が広がり始めていた。しかしエリカには、茜色の光が藍色の闇に飲み込まれないよう、必死に抗っているようにも見えた。
(……まるで、私みたい)
エリカがそんなことを思ったちょうどその時、二人の女子高生が彼女を追い抜いた。
きらきらと、可笑しそうに笑いながら。
────羨ましい。
途端に、ざらりとした渇望が彼女の胸をよぎる。
私も、あんな風に友達とおしゃべりしながら帰ってみたい。
そして帰りにクレープを買って、ちょっとだけ遊びに出かけたりしたい。
一緒にプリクラをとって、テストやばかった~なんて言いながら笑いあいたい。
(私だって、青春をしてみたい……けど)
重い彼女の足取りは、どこかに寄り道することもなく自宅へと真っすぐ向かっている。しかし、その家だってエリカにとっては孤独の象徴だった。
共働きでいつも忙しい両親が家に居るはずもなく、帰ってもきっと冷めたご飯とわずかなお小遣いが置いてあるだけなのだから。
そんな環境下で育ったせいか、彼女は誰かと話をすることが苦手だった。おかげで小学生の頃から友達ができず、中学生になった今も教室の隅で本を読み漁る日々が続いている。
────人は、簡単には変われない。
それが、14年の人生でエリカが学んだことだった。
(だからきっと……私は、ずっと一人ぼっちなんだ)
彼女は心の声を打ち切るように小さく首を振り、帰路を急いだ。
先ほどよりも少し、藍色の闇は広がっていた。
▷▶▷
帰宅ラッシュの時間帯である今、普段通っている道路には車がごった返していた。エリカは、信号が変わるのをぽつんと待つ。リュックサックにつけられた天使の羽を形どったキーホルダーも、今は揺れずに大人しく彼女の胸元近くに収まっていた。
やがて信号が変わり、時が止まったかのように車がぴたりと動きを止める。その間を縫うように、エリカは歩き出した。
しかし、ちょうど横断歩道を渡り終えた時、彼女は何気なく後ろを振り返った。
予感がしたのだ。
虫の知らせのような、何となく忘れ物をしたような気がするときのような、根拠のない予感が。
透明な糸に引っ張られたかのように、エリカの顔は後ろを向く。
「……ぁ」
小さな衝撃がほとばしる。
彼女の視線の先には────道路の真ん中に落ちた、天使の羽を模したキーホルダーがあった。
エリカは、はじかれたかのように駆け出した。
だって、あれは。
彼女にとって、それは。
────脆くてあたたかい、大切な思い出の結晶だから。
(だめ……あれだけは、無くしたくない)
我を忘れ、小走りに目的のものへ近づく。とりあえず、落としたことに気づいて良かった。そんな安堵感すら覚えるほど、そのキーホルダーは彼女にとって大切なものだった。
そう────《《周りが見えなくなるほどに》》。
思わず耳を塞いでしまいそうなほど大きなクラクションが、彼女の思考を引き戻す。
「…………ぇ?」
引き戻された思考は、しかし、すぐに停止してしまう。
エリカの身体から、一瞬で熱が失われた。
彼女の目の前には────大型トラックが迫って来ていた。
────死。
その一文字が、彼女の脳裏に浮かぶ。
避けられない残酷な現実が、止まることなく進んでいく。
咄嗟に彼女は、心の中で“彼”の名を叫んだ。
(────助けて、《《しあくん》》…!!)
孤独な少女が最期に思い浮かべていたのは、最初で最後の幼馴染だった。
天使のような、ヒーローの姿だった。
その想いは誰にも届くことなく、強い衝撃と共にエリカの意識は闇へと堕ちていった。
ちなみにこれテスト3日前に書いてます(勉強しろ)
Episode.2
はいどうも、テストで死んできた第二だよ☆()
「っ、ぅ……ここ、は……」
寝不足を責め立てるような頭痛に似たガンガンとした痛みを感じながら、エリカは目を覚ました。
ただし────真っ白な天井の病院ではなく、真っ暗な洞窟の中で。
「………………ぇ?」
ボケていた頭から、急速に血の気が引いていく。
「な、に……ここ、どこ……?」
懸命にたどり寄せた記憶の中から、ステージ上のスポットライトのような光がフラッシュバックする。
「ぁ……私、トラックに……」
事故直前の出来事を思い出し、エリカの身が強ばる。しかし、それ以降の記憶は思い出せそうにない。
手のひらにひんやりとした岩の冷たさを感じながら、とりあえず彼女は体を起こした。交通事故に遭ったのが嘘だったかのように、まったく苦痛は感じなかった。
もはや夢だったのではないかと思いつつ、エリカは出口を求め一度周囲を見回す。しかし、人影はおろか地上の光すら見当たらなかった。
わずかに落胆し、わけのわからない現状に困惑と恐怖を覚えながらも、彼女は少しずつ歩みを進め続けた。
▷▶▷
頬に冷たい感触があり、エリカはびくりと肩を震わせる。
どうやら、上から雫が垂れてきたようだった。ほっと胸をなでおろしたのもつかの間、彼女はあることに気が付く。
────水たまりに、少女の姿が映っていた。
袖に金色の装飾が付いた黒いローブが少女の華奢な身を包み、闇を吸い込んだみたいに真っ黒なウルフカットの髪は寝起きのように毛先がぴょこんと跳ねている。無造作に伸びた前髪に隠された紫色の瞳は、まるでアメジストみたいだ。足元には、高級そうなこげ茶の厚底ブーツが収まっていた。
水の鏡に映っていたのは、墨から生まれてきたかのような、そんな少女の姿だった。
エリカは、食い入るようにその鏡を見つめた。その理由は、いつの間にか彼女が知らない服を着せられていたからではない。
……いや、それもあるかもしれないが、彼女にとってそんなことよりも更に衝撃的な事実がそこにはあった。
水面に映ったのは────見知らぬ少女の姿だった。
「……これ…私…?」
呆然とした顔のまま、少女は手を握ったり開いたりする。そしてそのまま、頬をつねった。
じんじんとした痛みが、白い頬に残る。
それは、紛れもない現実を表していた。
真っ白になった頭の中に、一つの言葉が浮かぶ。まさかとは思いながらも、少女は口に出さずにはいられなかった。
「もしかして私────転生、した?」
転生系好きなんですよ…ぐえへへへ((