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Episode.1
元は『前世も転生後も孤独なので、悪魔と友達になろうと思います』というタイトルで投稿していましたが、設定を練り直したので、別作品としてまた一から投稿しようと思います!
…そもそも元の作品読んでる人のほうが少ないかもしれないけど()
『まもなく下校時間です。校舎に残っている生徒は────』
ほとんど聞く者のいないその校内放送に、エリカは顔を上げた。気が付くと、彼女の周囲を不規則に行ったり来たりしていた人影たちは姿を消し、日の落ちかけた空からは光がほとんど届かなくなっていた。
(…もう、こんな時間か)
廊下から隣の教室の扉が開く音が響いた。まだ校舎に残っていたほかの生徒────あるいは先生かもしれないが────の足音が、確実に遠のいていく。
軽く息を吐き、さっきまでファンタジー小説を読んでいたエリカもそれに倣った。
▷▶▷
「……寒っ…」
外に出るなり、エリカは白い息を漏らす。まだ真新しいマフラーを取り出し、その細い首に巻き付けた。そしてそのまま、冷たく吹きつける風に立ち向かいながら歩き始める。遥か頭上には、幻想的な夕空が広がっていた。
(……綺麗な空。だけど、どこか悲しい気がする)
どこまでも続く空には、沈みかけた太陽の光を優しく包み込むように夜の気配が広がり始めていた。しかしエリカには、茜色の光が藍色の闇に飲み込まれないよう、必死に抗っているようにも見えた。
(……まるで、私みたい)
エリカがそんなことを思ったちょうどその時、二人の女子高生が彼女を追い抜いた。
きらきらと、可笑しそうに笑いながら。
────羨ましい。
途端に、ざらりとした渇望が彼女の胸をよぎる。
私も、あんな風に友達とおしゃべりしながら帰ってみたい。
そして帰りにクレープを買って、ちょっとだけ遊びに出かけたりしたい。
一緒にプリクラをとって、テストやばかった~なんて言いながら笑いあいたい。
(私だって、青春をしてみたい……けど)
重い彼女の足取りは、どこかに寄り道することもなく自宅へと真っすぐ向かっている。しかし、その家だってエリカにとっては孤独の象徴だった。
共働きでいつも忙しい両親が家に居るはずもなく、帰ってもきっと冷めたご飯とわずかなお小遣いが置いてあるだけなのだから。
そんな環境下で育ったせいか、彼女は誰かと話をすることが苦手だった。おかげで小学生の頃から友達ができず、中学生になった今も教室の隅で本を読み漁る日々が続いている。
────人は、簡単には変われない。
それが、14年の人生でエリカが学んだことだった。
(だからきっと……私は、ずっと一人ぼっちなんだ)
彼女は心の声を打ち切るように小さく首を振り、帰路を急いだ。
先ほどよりも少し、藍色の闇は広がっていた。
▷▶▷
帰宅ラッシュの時間帯である今、普段通っている道路には車がごった返していた。エリカは、信号が変わるのをぽつんと待つ。リュックサックにつけられた天使の羽を形どったキーホルダーも、今は揺れずに大人しく彼女の胸元近くに収まっていた。
やがて信号が変わり、時が止まったかのように車がぴたりと動きを止める。その間を縫うように、エリカは歩き出した。
しかし、ちょうど横断歩道を渡り終えた時、彼女は何気なく後ろを振り返った。
予感がしたのだ。
虫の知らせのような、何となく忘れ物をしたような気がするときのような、根拠のない予感が。
透明な糸に引っ張られたかのように、エリカの顔は後ろを向く。
「……ぁ」
小さな衝撃がほとばしる。
彼女の視線の先には────道路の真ん中に落ちた、天使の羽を模したキーホルダーがあった。
エリカは、はじかれたかのように駆け出した。
だって、あれは。
彼女にとって、それは。
────脆くてあたたかい、大切な思い出の結晶だから。
(だめ……あれだけは、無くしたくない)
我を忘れ、小走りに目的のものへ近づく。とりあえず、落としたことに気づいて良かった。そんな安堵感すら覚えるほど、そのキーホルダーは彼女にとって大切なものだった。
そう────《《周りが見えなくなるほどに》》。
思わず耳を塞いでしまいそうなほど大きなクラクションが、彼女の思考を引き戻す。
「…………ぇ?」
引き戻された思考は、しかし、すぐに停止してしまう。
エリカの身体から、一瞬で熱が失われた。
彼女の目の前には────大型トラックが迫って来ていた。
────死。
その一文字が、彼女の脳裏に浮かぶ。
避けられない残酷な現実が、止まることなく進んでいく。
咄嗟に彼女は、心の中で“彼”の名を叫んだ。
(────助けて、《《しあくん》》…!!)
孤独な少女が最期に思い浮かべていたのは、最初で最後の幼馴染だった。
天使のような、ヒーローの姿だった。
その想いは誰にも届くことなく、強い衝撃と共にエリカの意識は闇へと堕ちていった。
ちなみにこれテスト3日前に書いてます(勉強しろ)