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私は、返す言葉を失った。
外の世界で、私を探す人はいない。
その言葉は否定できない。
アパートに帰らなければ、管理会社が異変に気付くかもしれない。
大学に行かなければ、大学の人が不審に思う、、のはずっと先の話だ。
「さて。」
沈黙を破ったのは、霊夢さんだった。
湯飲みを置くと、小さく息をつく。
「難しい話はその辺にしときなさい。」
「折角用意したお茶が冷める。」
紫さんは肩をすくめる。
「あら、まだ話したいことは山ほどあるのだけど。」
「後で良いでしょ」
「相手が理解できていないまま、突っ切る気?」
そう言われて初めて、自分が理解していないことに気づく。
知らない場所
妖怪
幻想郷
才能
一つ一つは分かっているが、それがどうも結びついてこない。
なんで妖怪が、幻想郷にしか存在しないのか。
情報の繋がりが分からない。
「今日はもう休みなさい。」
霊夢さんは立ち上がると、建物の奥の方を指さした。
「部屋ならあるから」
『...え?』
思わず聞き返してしまう。
「今日は泊っていきなさいってこと。」
『......でも。』
「でもも何もないわ。」
霊夢さんは少し呆れたように笑う。
「貴方、帰る場所がないんでしょ。」
その言葉に胸が痛む。
帰れない。
ではなく、
帰る場所がない。
帰れる、帰れないの土俵にすら立っていない。
その言葉の方が、ずっと重かった。
『ご迷惑じゃ...ありませんか』
「別に。」
霊夢さんはあっさりと言う。
「|神社《ここ》なんて、いつも騒がしいし。」
「一人増えても、そこまで変わらないわ」
その言い方は、ぶっきらぼうなのに、
不思議と冷たくは感じなかった。
『ありがとうございます。』
自然と、その言葉が口から零れ落ちる。
霊夢さんは少し目を丸くしてから、小さく笑った。
「律儀ね」
その様子を見ていた紫さんが、楽しそうに扇子を揺らした。
「やっぱり、連れてきて正解だったわ。」
『え?』
聞き返した時には、紫さんの姿は消えていた。
まるで、最初からそこに誰もいなかったかのように。
「また勝手に帰ったわね」
霊夢さんは慣れた様子でため息を吐く。
「気にしなくていいわ。」
「......あの人は、いつもあんな感じだから。」
私は、紫さんの居た場所を見つめる。
夢ではない、らしい。
そう思うと、不安と同時に、少しだけ。
明日がどうなるのか、気になっている自分が居た。