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一話
残酷描写、暴力描写が過剰なまでにあるから苦手な人はUターン
読む人は心して読むよーに(どんなまえがきだよ)
きっと、魔王は滅ぼされたことになっているのだろう。
【不滅の魔王】、リラン―――僕ははぼんやりとそんなどうでもいいことを考えていた。
実際、僕は勇者であるルナに敗れた。しかし、老衰以外で死ねない僕がどう敗れたのか。
簡単。眠らされたのだ。【スリープ】人間が作り出した魔法によって。
最も、ルナもこの魔法が魔王に通用するのか賭けだったようだけど。
何時間眠らされたのか。あまり良くわからないが、激痛と共に目覚めた僕は冷たい鉄の椅子に拘束されていた。手、足、首、腰。硬い鉄に縫い付けられるように拘束されては身動きも取れない。
周りはまるで独房のようで、かび臭い。そしてほのかに血の匂い。
更に最悪なことに、目の前には武器を持った人間たち。この日から僕は地獄を見ることとなる。
まず、ご飯は与えられない。死ぬわけじゃないが、空腹に苦しめられた。
そして実験と称して体を切り刻まれたりされた。死ぬわけじゃないが、痛みに苦しめられた。
そんな日々が数日続いた時、談笑する声と共に何人かが入ってきた。
「ねぇ、これ死んでないよね?」
「御冗談を。これが死ぬわけないと貴女もわかっておられるでしょう?」
「でもピクリとも動かないけど?」
「体を一センチ間隔に切り刻むのを10回、毒薬を打ち込むのを20回、腹から内蔵を引きずり出すのを5回ほどしましたが、いずれも苦しむだけで死にはしませんでしたよ。ほら、傷もないでしょう?」
「⋯飲食は?」
「必要ないでしょう?そして服も。」
「⋯⋯⋯そうね」
いつも僕を酷い目にあわせる声が妙にへりくだった声をしていた。偉い人でも来たのだろうか?目を開けるのも億劫な僕に取ってはもう、どうでもいいけど。
そんなことを思っていたら、ガシャンッと僕が座っている椅子が蹴られた。
「ほら、目を開けて」
女の声⋯?こんな部屋に?でもこの声、どこかで―――
のろのろと目を開けると、そこには僕を眠らせた勇者、ルナがいた。
勇者は一瞬安堵した顔をした気がしたが、すぐに顔を歪ませた。
「私のこと、忘れたわけじゃないよね?」
流石に自分をこんな窮地に追い詰めた人間を忘れられるほど、僕は図太くない。
ルナはそんな僕の態度を見て、それから周りの人を見てからまた、僕を見た。
口が“ごめん”と動いたかと思ったら、頬に鋭い痛みが走った。ぶたれたのだ。
「何?その反応の無さ。」
苛立たしそうな声を出しているが、少しだけ苦しそうに見えた。
ルナはくるっと周りの人間の方を向く。
「⋯ねぇ。この猿ぐつわ、外していい?」
「いいですが、それを外すと己の肩を食おうとします」
「⋯」
しばらく迷ったようだが、ルナは僕につけられた猿轡を外すことにしたらしい。
その手つきが妙に優しい気がしたのはきっと自分の気のせいだ。
「これで話せるよね。⋯あぁ、コラ。自分の肩を噛まないよ」
別に、僕の体をどうしようと僕の勝手じゃないか。
反論しようとしたが、喉がカラカラで声も禄に出なかった。
「⋯魔人は人間の手によって全員滅ぼされた。残るはあなただけ」
ルナの凛とした言葉に僕の目は大きく見開かれた。
死んだ⋯?みんな死んだの?奴隷時代の仲間たちも、魔王時代の仲間たちも?
みんな、みんな、?僕が、不甲斐なかったばっかりに?守れなかったばっかりに?
とうに水分なんて枯れ果てた僕の目に一雫の涙が伝った。
周りの人間たちからどよめきが起きた。
「さすがは勇者様だ!一度だって涙を見せなかったコレが泣いてるぞ!ハハッ。ざまぁないですね!ご覧くださいよ、こんなにみっともない!」
「⋯」
もう、誰の言葉も聞こえない。
僕はただただ絶望していた。無力な自分に。だから、ルナの言った言葉も聞いていなかった。
「⋯じゃあ手はず通り、この魔王は私が管理するから」
「えぇ、えぇ!きっと勇者様ならもっとコレを苦しめることができるでしょう!」
「⋯」
ルナは僕の頭に手を置いた。やけに優しい手に、なんだか救いを求めたくなった。
「【スリープ】」
また、この魔法か⋯
僕の意識は深く、深く沈んでいった。
+++
「ん⋯?」
気がつくと、柔らかな布の感触が体を包んでいた。
いい匂いのするふかふかと幸せな感覚にしばらく微睡んで⋯いや、おかしいなと目を覚ました。
どうやら大きくて綺麗なベッドに寝ていたようだ。手足は縛られていない。が、首に硬い金属の感触。
首枷だ。黒い首枷がこのベッドに繋がっている。
これを無視すればかなりの高待遇に違いない。キョロキョロと辺りを見渡す。
綺麗で少し大きめの部屋だ。そして、ベッドの横の机に水の入った入れ物とコップが置かれていた。
こんなところに水を置いておくほうが悪い、とばかりに僕はその水に手を伸ばそうとし、
⋯己の体の小ささに気づいた。
「!?」
どういうことだ?なぜこんなに体が小さい?混乱しつつ、とりあえず水を飲む。
乾ききった体に染みる水。久方ぶりの水分はこれほどまでに美味しかっただろうか?
僕は全ての疑問を忘れて一滴も零さず入っていた水を貪るように飲みきった。
本当は毒でも入っているんじゃないかとも思ったが、変な味もしなかったし、舌も痺れない。
しばらく様子を見たが、特に何も無さそうだ。⋯まぁ既に体が小さくなっているという異常はあるが。
「あー。あー。」
声も高い。一体どうしてしまったのか?僕はベッドからよいしょと降りて、姿鏡に近づく。
―――そこには、幼い頃の自分が驚いた様子で立っていた。
「え、はぁぁぁああああ!?!?」
僕の絶叫が部屋を満たした。