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2話
状況を整理しよう。
確かルナに魔法で眠らされた。目が覚めたらまぁまぁな高待遇の部屋に繋がれていた。
そしてなぜか幼くなっていた。うん。わからない。
「どうなってるんだ⋯?」
姿見に映る現実に項垂れる。何か考えようとしたが、栄養が足りていないのか頭が回らない。
仕方なく、服を捲り自分の腕を引きちぎろうとするが⋯顎の力が弱いらしく、歯型がつくだけだった。
それにしても。少し大きめのパジャマ。そして寝てる間に洗われたらしい体はさっぱりとしている。
これは高待遇なのか否か。僕は判断に迷っていると、ドアが開く音がした。そちらに目をやると、ルナが入ってきたところだった。
「ん?あー。駄目だよ?まだ寝ててね?」
「⋯ルナ、僕に何をした?」
「おぉ!名前覚えててくれたんだ。意外と律儀だね」
「いいから、答えろ」
「んー。とりあえずベッドに戻ろっか。」
ヒョイッと軽々と持ち上げられ、運ばれる。
「離せ!」
「うん。ベッドに着いたら離すよ」
ジタバタともがくが、小さい手足は非力で、びくともしない。
ぽすっとベッドに降ろされ、上布団をかけられる。そして、ルナはベッドの隣の椅子に腰を下ろした。
「で、さっきの質問の答えだけど。それは国の命令だから。」
「命令?」
「そう。その首枷と、幼児化の術を施すまでは外に出すなって命令」
「なぜ、幼児化?」
「簡単な話だよ。幼児化させたら、筋力も弱くなるし遠くにも行きにくい。」
「っ⋯」
「でも魔力はそのままだ。そこでその首枷だよ。それは魔力が発動できないようにするものだ」
確かに、魔力が操れない。なるほど。無力化されたわけだ。
そして、僕はルナに飼われるってことなのだろう。
少しシュンとしていると、パンッと両手を叩く音がした。ルナだ。驚いてルナの様子を伺う。
「よし。水もちゃんと飲んでるね。じゃあご飯持ってくるから寝ててね」
「⋯別に、食べなくても死なない」
「でも、お腹は空く。だからさっきから腕を噛んでる」
図星だったため押し黙る。
その様子を見たルナはクスッと笑って「ちょっと待ってて」と言って部屋を出ていった。
それを見送った僕は再度ベッドから降りる。別に今更逃げようとは思っていない。
ただ、部屋がどんなものか把握したかった。
ベッドから見て真正面のドアは外?に繋がっているらしい。
そっちに行ってみようとしたが、ガシャンと鎖がそれを止めた。
どうやら、出れないようになっているらしい。ではと手前の右側のドアを開ける。
トイレのようだった。僕は左側のドアも開ける。そこは書斎のようだった。
色とりどりの本に囲まれるように、椅子と机が並んでいるその部屋はとても魅力的だった。
僕はその部屋を出て、ベッドの部屋にあるクローゼットを開けた。
小さめの服が何着も並んでいる。部屋着のようなものから外出用のものまで。
外出することなんてないだろうに。僕はパーカーとショートパンツを取り出し身につける。
僕のものではないだろうが、手に取れる場所に置いておくほうが悪い。
すると、ドアが開く音がした。
「ただいま〜ってあれ?ベッドにいない⋯」
キョロキョロと辺りを見渡すルナだったが、小さい上に壁に座っていたからか死角に入ってしまったらしく、僕を繋いだ鎖に引っかかり体制を崩した。
「うぉっと!?」
ルナはなんとか体制を立て直したが、持っていたお盆がガシャーンと音を立てて落ちてしまう。
乗っていたスープは床に散らばってしまった。
「あちゃー。気が抜けてたかな。お?そこにいたのね。大丈夫?かかってない?」
コクリと頷く。
「雑巾と変えのご飯持ってくるから今度こそベッドで待ってて」
またもやヒョイッと運搬されベッドに戻される。
ルナは早足で部屋を出ていった。
僕はしばらく迷ったあと、スープのそばまで行く。
床に散らされたスープ。僕はこの光景に覚えがあった。
+
それは、僕が奴隷だった頃。丁度、今と同じぐらいの幼い体だった。
牢の外から人間が皿に入ったスープを中にぶちまけた。
「ありがたく食え」
そう言って去っていった。
牢の中の泥でぐちゃぐちゃになってしまったスープを他の子達は食べなかった。
だから、僕が食べた。ジャリジャリとした砂の食感。
ほとんど薄い塩水のようなそれを、無心で食べた。
+
それに比べれば、砂も少なくていい匂いがして湯気が立っている。
僕は地に這いつくばってスープを舐めた。美味しい。昔の何倍も。
僕のスープか怪しいが、こんなところにスープをこぼすほうが悪い。
僕は夢中でスープを舐めていた。だから、ドアの開いた音に気づかなかった。
「ふぅ〜ただいまーちょっと雑巾が見当たらなくて⋯何してるの?」
顔を上げると、驚いた顔をしたルナと目が合った。
が、スープを舐めるのに忙しい僕は再度、床を舐める。
「ちょ、ちょちょちょ。衛生的に良くない!ほら、飲むならこっちにして。」
ベリッと床から離された僕はポーイッとベッドに投げられる。
そして、ルナは僕に器に入ったスープをくれた。ゴクゴクとそれを飲む。
その間に、ルナは雑巾で床を拭いていた。
「床に溢れたスープ飲むとか本当にあの玉座に座ってた魔王?魔王のプライドどうしたの?」
僕はそれをツンと無視してスープを飲む。
床を拭き終えたルナは困ったように僕を見る。
「野良猫を拾った気分だよ⋯まぁ、お腹が空いてたんだよね。おかわりいる?」
「欲しい」
「めっちゃ食い気味に返事するね?わかった。持ってくる。⋯今度こそベッドにいてね?」
僕は無視した。