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0.5.生きた証
この小説には、ショッキングな描写が含まれます。
ご注意ください。
...暗い地下鉄の片隅、力無く垂れ下がる四肢が見えた。
もう冷たい男性の首には、太い縄がきつく縛られている。
ひとり死亡...残り23人。
ここにいる中で唯一筆記用具を持っている私は、
その事実をできるだけ丁寧に書き留めた。
もし私たちが死んだあと、ここに誰かが来たら、
この手記も発見してもらえるかもしれない。
私たちが生きて、そして死んだことを、私はここに書き留める。
新聞記者の性というところだろうか...
挫けそうになることもあるが、そんな時にいつも考えている。
私の仕事は、ひとを生き続けさせることなのだと。
文献、日記、歴史書。そういった記録の中で、
死して尚人間は生き続けることが出来るから。
死亡時の状況、生前の彼の様子...
事細かに書き綴る。すると、隣から声が聞こえてきた。
「馬鹿なやつ、貴重な縄をこんなことに使って...
......あんたの分も、私が生きたげる」
この女性は...ああ、この男性と仲が良かっただろうか。
いや、少し話していただけかもしれないが。
「ねえ、死体降ろすなら手伝うけど」
「いや、いいんですよ。私ひとりでも出来ますから」
「うるさい、荷物運ぶときも重そうにしてるくせに。
こう見えて私、土木作業員なの。力には自信ある」
「では...お願いいたします」
彼女の力も借りて、私は男性の死体を降ろした。
もうすでに、死体からは蛆が湧いている。
きっと、この気候のせいだろう。
放射能から起因する異常気象のせいで、ひどい暑さだ。
額から滲み出る汗を拭う。
「死体はどこか邪魔にならない場所に置いておきましょう。
他に死体が出たとき、まとめて燃やしたほうが無駄が少ない」
「邪魔にならない場所...なら、人道待避坑かな。
あそこに置いといて、ブルーシートでもかけておこう」
人道待避坑...確かにあそこであれば、邪魔にはならない。
だが、線路に降りる必要がある。
線路は、変異動物が侵入していることが多い場所だ。
万が一の場合、死ぬかもしれないが...
...そんな万が一を、今ここで引き当てるはずもないか。
武器さえ持っていけば、討伐できる可能性もある。
私たちは、お互い武器になりそうなものを見つけてから、
死体を抱えプラットホームへと向かった。
死体から肩に降ってくる蛆虫が、ひどく鬱陶しくて目眩がした。
歩きながら、私は彼女のことについて聞くことにした。
これからも世話になることがあるかもしれない。
お互いのことは、よく知っておくべきだ。
「あの、お名前お伺いしても」
「ツェンドール・スタイト。あんたは?」
「ホルスト・ライヒェンです」
「ホルスト...ね。今となっては、縁起いい名前だね」
「まあ、そうですね」
少し微笑みながら言う彼女に、私も努めて明るい声色で返す。
階段を下りながら、チカチカと点滅する蛍光灯に照らされた。
ここの蛍光灯も、じき切れるだろう。
それにしても、ツェンドールさんとは中々目が合わない。
というより...彼女自身が避けているようだ。
そう思っていると、彼女が話し始めた。
「私、こいつと一回話したことあるんだ。
あんまり弱音ばっか吐いてるから、いらいらして。
水あげたら静かになったから良かったけどね...」
「そうなんですか、優しいですね」
「優しくなんてないっつーの、私はこいつに貸しを作っただけ。
結局返してもらえなかったし、水も残り少ないし...
あげなきゃよかったなって感じだから」
そう言いながら、彼女のエメラルドのような瞳が揺れた。
言葉の真意は、汲み取ることができない。
だが私は、このひとがとても優しいひとだと悟っていた。
長い階段を降りきり、やっと私たちはプラットホームに足を降ろした。
ゴォォォ、という空気が通り抜ける音が、
私たちの不安な心を掻き立てた。
「じゃあ、私が置いてくるよ」
「え!?ひとりは駄目ですよ、なんのために私も武器を持ってるのか...」
「足手まといなの、あんた。体力もろくに無いでしょ?」
「でも...」
返す言葉も、見当たらなくなった。
確かに私は弱い。まともに運動をしたことはないし、
少し歩いただけで息が上がる。
私は、足手まとい...
ペンだことささくれが目立つ、自分の手を見つめた。
もしここで、彼女にひとりで行かせたとする。
それでもし、彼女が死んだら。
私は一生、今日のことを後悔するだろう。
確かに私は戦えない。だが、私にだって出来ることはある。
「だからあんたは先に戻って...」
「いいえ、私にだって肉壁になることくらい出来ます」
「...は?何言ってんの?」
「私も一緒に行くということです。さあ、早く置いてきましょう」
私の押しに負けたか、彼女は首を縦に振った。
線路上に降り、人道待避坑に死体を置いた。
あとはブルーシートだが...ちょうどあそこに、ぴったりなものが落ちている。
あたしが持ってくるよ、そう言ってツェンドールさんは
少し離れた場所にあるブルーシートを取りに行った。
...だが、なんだ。この妙な胸騒ぎ。
彼女の周りを、よく見てみる。
ひとつ隣の人道待避坑に、赤い光がふたつ...
...変異動物だ!!
「ツェンドールさんっ後ろだ!!」
「はっ!?」
変異動物は、ツェンドールさんへと飛び掛かる。
駄目だ、私より優秀な彼女を死なせるわけにはいかない。
走った、今までにないほど走った。
走って、走って...私は変異動物の前に割り込んだ。
ひどい激痛と共に、ツェンドールさんの叫び声が耳を刺す。
「ホルスト!!!!!」
肩を噛まれた痛みで声が出ない。
その代わりに、ハンドサインで”逃げろ”と示す。
あなたはきっと、私が生き残るよりも、よほど良い人だ。
彼女は私の訴え通り、プラットホームへ上がって
すぐに逃げ出した。そうだ、それで正解なんだ...これが正解なんだ。
私も一応、足掻けるところまで足掻こう。
変異動物を振り払い、プラットホームへ上がる梯子を掴む。
だが、肩の痛みのせいでうまく上がれない...
もたもたしているうちに、足に噛みつかれた。
変異動物は、私の足に噛みつきながら頭をがむしゃらに振る。
痛い痛いやめろやめろ...
私の足は千切れ、少し遠くへ飛んでいった。
変異動物はそちらに気を取られ、離れていった。
だが、私は無理だ。
激痛により、手汗が大量に分泌される。
梯子を掴もうと思っても、手が滑ってどうにもならない。
私は、線路の上に倒れ込んだ。
ああ、せめて...
このことを記しておこう。私が生きた証を、記そう。
X月XX日 おそらく晴れ
肩には、変異動物の歯型がしっかりと残っている。
肉は抉れ、血は止め処なく溢れてくる。
足からも同様。こちらは切断されており、どうにもならない。
指先の感覚が消えてきた。いつまでペンを動かせるかわからない。
私の千切れた足の方に気を取られていた変異動物が戻ってきた。
私の顔をのぞきこんでる、腹が満たされているからか、
すぐに私のことを襲うわけではない。
変異動物はわたしにかおを近づけた 息臭い放射能くさい
急にあたまにかみついてきたいたいはがくいこむ
いたいいたいいたいいたいくさいくさいきもちわるい
ずがいこつがわ
...このプラットホームに、もはや生物と呼べるものはいなくなった。
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残り22人
あと10日
0.5話ということですが、どうでしたか。
まだ参加者が集まっていないのに、めちゃ書きたかったので書きました。
最初に殺すのは自分のキャラって決めてました
じゃないと、他の参加者の人に顔向けできないのでね
次からは参加者様のキャラがメインとなります。
とりま5人集まったら一旦締め切りましょうかね
キャラ殺しすぎて足りなくなったときに備えて募集自体は続行しますが、
早いもの勝ちですのでご注意