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〈氷の海原に向けて〉
「…っえっくしょい!!」
既視感があるくしゃみを炸裂させながら|星墟宇宙《ホシアトソラ》は吹雪の中を歩いていた。
|風車《やぎ座》から旅立って早3日。最北端なるところに向けて歩いているのだが。
「なんでこんな着かねぇんだよ!!」
その嘆きは木霊して雪を容赦なく降らせ続ける雲に消えていった。
使い続けた脚はガクガクブルブル震え始め、指先は冷たく紫に変色し始めている。
いわゆる遭難というやつだろう。死にそうだなぁ、これ…
そんなことをぼんやり考えていると、いきなり視界が180度回転した。
どうやら脚を縺れさせて雪の上に大の字で落ちたようだ。
もう起き上がる起き上がる気力も体力も無く、そのまま睡魔の誘うもとへ堕ちていった。
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目を覚ますと、白い塗装が剥がれた石の天井と目が合った。
ここはどこなんだ?そもそも私は生きているのか?
山程疑問を抱えながら身体を起こすと、周囲がとても暖かいのに気がついた。
ここは最北端の近く、しかも冬の吹雪の中のはずだ。
「起きました?」
声がした方を向くと、体がぼんやりと発光した人間―|水瓶座《サダルスウド》がこちらを見下ろしていた。
「えーっとぁ…着かぬことをお伺いしますが、ここ、天国?」
「地獄です」
「えっ」
「…まだ生きてますよ。」
中々なブラックジョークを挟んでくるサダルスウドに冷や汗を隠すこと無くかきながら、周りを見渡してみた。
そこには9割が足に包帯を巻かれていたりする動物たち、そして残りの1割に人間が寝ていた。
「…貴方のように旅をしてきて倒れる旅人は腐るほどいます。」
「ゾンビじゃん」
「うっせぇ」
きっと作者の脳内が反映されたんでしょう。サダルスウドが敬語を諦めました。
「…そんな旅人を保護してんだ。他の星座には馬鹿みてぇって言われるけど」
「馬鹿に助けられたのかぁ…そうかぁ…」
サダルスウド。行け。そいつを吹雪にほっぽり出すんだ。
「殺意高くない?」
たまにコメディ入れたくなるんだよ。
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「どうせなら一杯どう?」
「酒は飲まん」
「いやコーヒー。」
「…ブラックで。」
注文を受けると同時にコーヒーを淹れ始めた宇宙を横目に見ながら、こんな厄介な来客は何時振りだろうとサダルスウドは考えを巡らせた。
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この建物は、元々病院だったのだ。
雨の日だけ現れるという不思議な病院で、その病院は雪が雨判定らしく暫くここに留まっていた。
勤務している医者と患者を眺めるのがサダルスウドは好きだった。
そして、一人の儚い少女を愛してすらいた。自分は星座で、届かないことをわかっていても。
しかし、患者は当たり前のように病気で。苦しむ姿を見るのがとても我が身のように辛かった。
そして、午後から晴れるというニュースが流れていた日、その少女は死んでしまった。
誰にも見えなくても、サダルスウドは誰よりも彼女の死を悲しんだ。
そして、その病院に倣うように、旅人や動物を治療し始めた。
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「雨の日だけ現れる病院ねぇ…これまた不思議なものも在ったもんだ。」
「それは同意。」
温かいコーヒーをサダルスウドに渡すと、宇宙は徐ろに立ち上がり、階段の方へ歩いていった。
サダルスウドは止めなかった。
屋上の扉を少々苦労して発見し外に出てみると、雪はもう止まって水瓶座が上に煌々と輝いていた。
宇宙はカバンから持ってきた小さな椅子を出すと、それに座り星を眺めた。
雨の日だけ現れる病院。それに宇宙は聞き覚えが合った。
昔、怪我をした日に休めるところを探し回っていると、雨の森の中からひっそりと佇む病院を見つけた。
職員や患者はクセがある人ばかりで、治療もしてもらいながら少し会話をした記憶がある。
彼らは奇病で苦しみながらも、自分の人生を生きていた。短いとわかっていながら。
宇宙が目指すのは、そんな生き方だ。
お気づきの方居ると思いますが、この雨の日だけ現れる病院ってのは奇病は雨に包まれての病院です。そのうち登場させます。