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【第一部】第四作戦:白十字救済会「サナトリウム」
第三作戦:出来損ないの私 の続きです
ルミナス聖教皇国の急襲を退けて数十分後ーー
アース達4人は重傷を負ったフェイを治療するため、白十字救済会「サナトリウム」へと向かっていた。
「ここが、白十字救済会「サナトリウム」…!」
アースは後ろの方を歩きながら、目の前にある建物を見上げ、呆気に取られていた。
それは、質素だが戦場とはかけ離れた清潔さを漂わせる白い建物だった。そこでは、敵味方問わず、怪我を負った兵士たちが等しく収容されており、治癒特化の能力・魔術を持つ救命士が治療を行っている。
「僕たちはもう何回も来てるよね。よくお世話になっているよ。主にイーサンが(突っ込んで怪我ばっかするから)」
カイはフェイを背負ったまま、アースの隣に立ってそう言った。しれっとイーサンを小馬鹿にするのは忘れないまま。
「うるせぇな…早く中に入るぞ。」
イーサンは忌々しそうに「チッ」と舌打ちしてキレながら、先頭を歩いてドアを開け、中へと入った。
中では、同じく帝国軍の兵士、それから聖十字騎士団の兵士までもが揃って治療を受けていた。ただ、施設内での戦闘は絶対厳禁である為、暴力などは振るわないが、お互いの敵意は隠さぬまま睨み合っているところもある。
「あ!怪我人ですかァ!?」
そんな中、一人の、ナース服を着た10代半ばと思われる少女が救急箱を持って忙しなく動き回りながら、アース達を見て目を丸くしてそう大声で言った。
「こいつだ。胸を銃で打たれた。心音もどんどん弱くなっている。」
イーサンがカイに背負われているフェイを指差し、威圧的な態度は変わらぬまま簡潔に説明する。そのイーサンの態度に女の子は「ヒッ…!」と怯えながらも、「わかりました!」と言って、慌てながらも治療を始めようとする。
「こら!そんなに慌てたら、怪我人の傷を完璧に治すことはできないよ!」
その慌てふためく女の子の様子を見て、白いパーカーを着た女の子が姿を現し、そうキリッとして叱りつけた。
「ひぇえ…ごめぇん…。」
「泣く暇があったらさっさと準備!怪我人優先!」
泣くナース服の女の子に対し、白いパーカーの女の子は再度叱ると、呆然とするアース達の方に向き直る。
「重症者ね!じゃあ、そこのベットに優しく運んで!」
パーカーを着た女の子は手を腰に当て、片手で空いているベットをビシッと指差す。
「オッケー。分かったよ。」
カイはニコニコとしたままそういうと、ベットの方に向かって歩き、背負っているフェイをゆっくりと、仰向けになるように寝転がさせた。
「準備できたよぉ〜!」
ナース服の女の子が、まだ涙目のまま、タタッと軽快な音を立てながら、細い足で駆けつけてそう言った。
「ん!上出来!じゃあ、ちょっと離れててね!治療するから!」
パーカーを着た女の子はそれを聞いて、満足そうに微笑むと、アース達を「しっし!」と手で追い払うような仕草をする。アース達もそれに従って距離を取ると、女の子はパーカーの袖を捲り上げ、目を閉じて深呼吸をする
「スゥ……【聖天の慈雨】!!」
女の子がそう詠唱すると、暖かな緑色の魔力がフェイの体を包み込み、胸の今でも血が流れる傷口を癒し、まるで逆再生かのように塞いでいく。
「わぁ……!すげぇ……!!」
アースもその美しさ・手際の良さに感動し、目を見開いて目を輝かせながらそれを見守る。
「いつ見ても圧倒的だねぇ〜、白十字救済会「サナトリウム」の人の治癒魔法は。」
カイもアースの隣に立ち、いつまで経っても絶えることがない笑顔のまま、ニコニコしながら片手を顎に当て、静かにそう呟いた。
数分経った後、緑色の魔力は女の子の体の中へ戻っていき、その時にはフェイの胸にあった傷は消え去り、元通りになっていた。と同時に、フェイの閉ざされていた瞼が、ゆっくりと持ち上げられる。
「…あ………。」
先程まで虚ろだった瞳は光を取り戻し、頬にも赤みが戻っており、完全に回復したようだ。
「フェオ曹長!!大丈夫ですか…!」
アースはベットの縁に素早く駆け寄り、フェイの片手を握って心配そうに眉を下げながら、顔を覗き込みそう言った。
「あぁ…大丈夫だよ。この子が治してくれたおかげさ。」
フェイはその様子を見てフッと笑ってそう言い、体を起こし、アースの頭を撫でる。
「ふふん!白十字救済会の力を舐めないでよね!」
白いパーカーの女の子は満足げに、ドヤ顔で鼻を鳴らしてそう言った。
「いや別に誰も舐めてないが。」
それを見てイーサンは眉を顰め、腕を組んだまま珍しく(?)まともなツッコミを入れた。
「なによぉ!ちょっとカッコつけるぐらいいいでしょぉ!」
そのイーサンのツッコミに白いパーカーの女の子はみるみる顔を耳までゆでだこのように赤くし、イーサンの腕をポカポカと小さい手で殴りながら、馬鹿正直にそう大声で叫ぶ。だが、イーサンはその様子を鼻で笑っているだけで、相手にしようとしていない。
「ははっ、まぁ良かったよ、フェイ。君の傷が治って。」
カイ二人のやりとりを見てそう小さく笑うと、フェイの方をくるりと向いてそう言った。
「そりゃどうも。これでまた、前線で暴れることができるよ。」
フェイもベットから降りて、前髪をかきあげ、額に片手を当て、もう片方の手を腰に当ててまた頼もしそうに笑う。
「よかったぁ…でも、無理はしないでくださいね!僕、ああ見えて普通にめちゃくちゃ怖かったんですから!!」
アースはホッと胸を撫で下ろしてそういうが、眉毛をキリッとして人差し指を立ててそう叱るように言った。
「ハッ、曹長が二等兵に怒られてやんの。」
すかさずイーサンが笑ってそう言うが、カイに「イーサンもこう言うことあったでしょ」と言われ、黙り込んだ。
「じゃー、一回敵も退けたことだし、今夜はパーティーだ!!」
フェイがそう言って片腕を振り上げて、先程の弱々しい姿は嘘かのように満面の笑みで宣言する。
「おっ、じゃあ酒は持ってこないとな。いくつか在庫がある。」
イーサンもニヤッと笑って賛同する。
「お、お酒…!?僕、飲めないんだけど…!?(18歳)」
アースは目を見開いて冷や汗を流し、オロオロしながら慌てる。
「ガキは黙って茶でも飲んどけ。(イーサン」
「お茶あるんだ!?(アース」
いつも通りわちゃわちゃしながら、白十字救済会「サナトリウム」を抜け、自分たちの拠点へと歩いていく。
「……………。」
カイはそんな中、一番最後尾で無表情で俯いたまま歩いていた。瞳にハイライトはない。
「…楽しそうだね(ボソッ。」
そう聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな独り言は風にかき消され、カイは顔をあげて足の速度を速め、輪の中へと入っていった。
(第四作戦:白十字救済会「サナトリウム」終)