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1-7 日常が始まる
頑張って書きました!( ・´ー・`)どや
「よ、嬢ちゃん。3泊してくけどいくら?」
「安いのがいいですか? 今空いている一番狭い相部屋だと小銀貨2枚です」
「ん。はい」
受付に座るアクアは、時折やってくる客からお金を受け取っていた。
「ごゆっくりどうぞー」
宿屋で働き始めてから一週間。仕事にも慣れ、平民の生活に馴染んできた。アクアは頬杖をついて受付の机に寄りかかる。
(小銀貨2枚でギリギリ3泊ってことは......1泊いくら?)
お金の感覚を身に着けようとしているが、難しい。まだよく分かっていない。
「アリシア、お疲れ様。交代ね」
「はぁい」
薄橙色の短い髪を揺らしながら、リューヌが来た。もう交代の時間だ。アクアは立ち上がり、自分の相部屋に向かった。
アクアの部屋はとても狭くて、二段ベッドが2つあるだけだ。女将──メイルが色々と配慮してくれたようで、部屋のメンバーは皆年が近い。
「アリシア! おかえりっ」
たったっとフルールが走り寄ってきた。彼女はアクアと同じ14歳で、淡い紫色の髪に薄桃色の瞳がとても美しい少女だ。新しくやって来たアクアによく懐き、「大人っぽい」と尊敬しているらしい。アクアは、おっとりしているけれど真っ直ぐで明るいフルールが好きだ。
自分のベッドに座っているネージュは、「あぁ、なんだ、来たのね」という顔をした後、また本を読み始める。無愛想なのに、顔立ちは綺麗。灰色の髪がよけいにそれを引き立てる。
アクアはネージュが何の本を読んでいるのかずっと気になっていた。高価な本を、住み込みで働く16歳の少女が持っているわけがないのだから。
ついさっき交代したリューヌは、明るくて無邪気なお転婆だ。まだ13歳の彼女を諌めるのがネージュの役割になっている。リューヌの気が強いところはネージュに似ているけれど、おしゃべりが好きな所は真逆だ。そんなリューヌは聞き手に徹することが多いフルールとよく話している。
フルール、リューヌ、ネージュ。
これがアクアの部屋のメンバーだ。
「ねぇ皆、知ってる? 向こうのサントルっていう街は、一夜のうちに水に満たされて|泉《オアシス》になってるらしいよ」
「知ってる。5日ぐらい前に客が言ってた」
「わたしも最近聞いた! びっくりだよね」
就寝の時間に、リューヌがベッドから身を乗り出して言った。ネージュとフルールも同意したので、アクアは笑顔を浮かべて相槌を打つ。
「ねぇ。わたしも一昨日ぐらいに聞いたけど、えっ? って思った」
宿屋で働き始めてから、口調もだいぶ変わった。フルール達3人の話し方を真似するだけでこんなに変わると思わなかった。
「やっぱもう知ってるか。それでね、噂で聞いたから本当かどうか知らないけど、まだ未成年の少女がその日の晩に失踪したんだって! 絶対何かあるよね?」
「えー、もしかしてその人実は貴族で魔法が使えたとか?」
「お貴族様が一人居て元に戻るなら今頃わたしらはこんな苦労してないって。お風呂入りたい」
「なんかお風呂入れないと変な感じするよね」
(......「失踪した」人がわたしだって気づきませんように)
楽しげに会話する三人と一緒に笑いながら、アクアは頬が引きつるのを感じた。
自然な感じを装っているとはいえ、干ばつの話題になるとアクアはいつもひやひやする。バレたら終わりだ。バレるくらいならその前にこの街を出ていかなければ、アクアが神殿から逃げた意味がなくなる。
それでも、この時間は単純に心地よかった。皆と話せるのが楽しいと、アクアは思っていた。
「あ、そうそう。今日わたしね......」
おしゃべりは続く。アクアが眠りについたのは、夜遅くなってからだ。
住み込みの者が毎日食べるこの味の薄い食事にも、埃と木材の匂いが混じった建物にも、だいぶ慣れた。アクアが神殿を出たあの日から、二週間が経っていた。
平和だった生活は、不穏になりつつあった。
貴族達が、サントルの街を泉にした人を探している──失踪した神殿の側仕えを探しているという噂は、広まっていた。気づいたのだ。|彼女《アクア》がやったのだと。
アクアは宿屋から出ないし、髪は変わらずアップにしている。あの頃から髪も顔も随分と汚れたので、水色の髪は青っぽく、白い肌は茶色く見えているはずだ。ありがたいことに、誰もアクアが神殿の者だと思っていない。
それでもアクアは、なるべく受付の仕事を減らそうとしていた。人に会わないようにするためだ。「髪色が水色の少女を探している」となった時、手下の情報収集でアクアのことを話されたら困る。だから、使い終わった部屋の片付けや掃除、料理の手伝いなど、人目につかない仕事を好んでやっていた。
「じゃあ、四人でお皿を下げて洗っておいて」
「分かりましたー」
基本的にフルール、リューヌ、ネージュ、アリシアでセットにされることが多い。アクアは「わたし、お皿洗ってくるね」と言って急いで食堂から出た。
客達が部屋に戻り、片付けが終わればその日の仕事は終わりだ。アクア達四人はそろって階段を登る。他愛ない話をする時間が増えて、アクアは嬉しかった。
いつもと変わらない穏やかな笑顔のフルールが、そうそう、と話を切り出す。
「皆、属性の使い手って知ってる?」
アクアの笑顔が凍る。
普段通りのテンションのリューヌとネージュ。アクアだけが、笑顔を引きつらせていた。
新しい名前がいっぱいですね。
ちなみに、女将さんの名前メイル(本来はメール)は母という意味です!
フルール、リューヌ、ネージュも同じようにフランス語になっています。花、月、雪です。
可愛い子達だけど、、、出番はあるかしら(考えてない)