公開中
枯れた土
うーん、、、全然終わらない、、、、、、
次に出す三話の前半までの内容を、最初のプロローグ位置で書きたかったのですが......
「......っ。......」
喉の奥が焼けたようにひりひりする。苦しい。指先が干からびたような感覚がして、動く気力は湧いてこないのに、身体の奥だけが燃えるように熱い。
「っ、......はっ、......」
アクアは意識を集中させ、必死でまぶたをこじ開けた。
霞んだ視界の中、自分を心配そうに覗き込む人の姿が見える。泣きそうな顔でアクアの手を握っていたのはルーナだった。周りを動き回る侍女たちが見える。
「アクア!」
その美しい顔には普段の冷静さはなく、焦りと心配の色が浮かんでいる。
「ルーナ様……私、どうして……」
「庭園で倒れていたの。アクアも気分が悪くなってしまったのね」
ルーナの言葉に、アクアは自分の胸の奥が痛むのを感じた。
──違う。
水気がなくなったから倒れたのではない。 アクアが水の使い手だからこそ、異変の影響を受けてしまったのだ。
「ルーナ様、本当は.....」
違うのです、と続けようとした言葉は掠れ、視界が絵の具をこぼしたように暗くなる。アクアは闇の中に放り込まれ、ルーナの声も遠くなり、消えた。
次に目を覚ました時、窓の外はキラキラと明るい光に満ちていた。アクアの横には変わらずルーナがいる。
前と違って身体が軽い。熱もない。何か一緒に抜けてしまったような感覚もするが、気にしない。アクアは跳ね起きた。
「ルーナ様、わたしが倒れてからどのくらい......」
「4日よ。ずっと高熱が続いて、本当に心配したの......」
ルーナはもう一度アクアの手を握ると、本当に良かった、と言った。アクアは精一杯の微笑みを返した。
「何故、そのようなことが起きたのかしら」
アクアが頬に手を当てると、ルーナがゆっくりと言った。
「儀式で聖女様が身に着けていた水の神具が、砕け散っていたみたいなの」
「神具が、割れた......!?」
力なく頷くルーナの瞳には、重なった疲労が見て取れる。
「えぇ......。そのせいで、国のほとんどの地域で水が干上がっているそうよ。貴族社会は大混乱で、聖女さまにも神官にもどうすることも出来ないらしくて」
巫女も駆り出され、毎日のようにファンテーヌに祈っているらしい。
「あぁ、奉納舞の支度をしなければ。アクア、今日はゆっくり休みなさい」
「奉納舞って、そんな......ルーナ様の負担が......」
「いいの。水は戻らなくても、わたしが祈ることで民の希望になるのなら、わたしは喜んで舞うわ」
言葉が出てこない。何かが吹っ切れた。
あぁ、と思う。
彼女のためなら何をしたって構わない、と。
ルーナが出て行ってから、ベッドの上で考える。
やってみなければ分からないけれど、ルーナのためにやってみる価値はある。
誰も居ない自室で、アクアは密かに準備を始めた。
夜真っ暗になって、月が西に傾いてきた頃、アクアは部屋を出た。
門をくぐり、庭園の一角へ向かう。泉のあった場所。干からびた土に手を当てる。
──あ。
指先が地の深くの何かに反応している感じがする。出来る。
アクアは手にぐっと力を入れた。
「......っ!」
水を引き出そうとするたび、自分の体力が吸われていく感じがする。目がチカチカして、視界が白く染まる。額には冷や汗が浮かび、苦しさが襲ってくる。
視界が点滅するたび、ルーナの顔が浮かんだ。アクアが一生仕えると誓った人。
(水の女神ファンテーヌ様、どうかわたしに力を......!)
ぽちゃん、と水の音が響いた。底から水が溢れ始める。やがてそれは泉を満たし、庭園へと広がっていく。
頭が痛い。苦しい。でもこれでは足りない。
ルーナの愛する街全体が潤うように。
アクアは最後の最後まで力を使い切る。
「はぁっ、はぁっ......」
息を切らしたまま見渡すと、しっかりと水を蓄えた土が広がっていた。やり切った、とアクアは思う。これで少しはルーナを助けられた。
アクアは急いで自室に戻り、荷物をまとめたかばんに手をかけた。中には孤児ではない平民用の服や、お金にするための装飾品が入っている。
使い手の末路。
王都の中央神殿に閉じ込められ、必要な時以外は力を封じられ、何もできないまま一生を終える。
「わたしは、家族に抗うことができなかったけれど......アクアは自由に生きなさい」
(わたしはルーナ様に仕える生き方を選んだ。だから、ルーナ様の言ったことも守る)
そんな風に生きたくない。
アクアは深呼吸をすると、部屋の扉を開けた。
(ルーナ様、申し訳ありません......)
これでいい。アクアにできる精一杯のことはした。これからは、旅人として一人で生きていく。
そう、決めた。
足音を立てないように、気をつけながら歩く。門の扉にそっと手を掛けた、その時だった。
「ここで何をしているの?」
小さな声が響く。主の──ルーナの声が。
読んでくれてありがとうございました!
書くのにかれこれ1時間かかってしまいました。悲しい......