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偽装の平凡
平凡な日常を、ずっと過ごしていたい。
朝起きて、ご飯を食べて、学校に行って、友達と遊んで、寝て。
そんな普通で変わり映えのない日々をただひたすらに送っていたい。
変に頑張っても、失敗したら嫌だし。
雄太「おはよ〜!」
「おはよう雄太、今日も元気だなぁ」
そんないつもの挨拶を交わして、変わらない日々が巡る。
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雄太「俺の彼女で〜す!」
『初めまして〜、ゆう君がいつもお世話になってます〜!』
唐突に、頭を鈍器で殴られたような出来事だった。
声が震えないよう、口を開ける。
「雄太って彼女作るタイプなんだね、!めずらし〜」
雄太「逆に俺らとおんなじくらいの年齢で、彼女作りたくない人を見つける方が難しくね?」
「そっ、か。何はともあれおめでとう」
その日から、だんだんと自分が取り残されていくような気がした。
「あれ?竹林君この前のテスト30点くらいじゃなかった?今回70って、何があったの?」
竹林「いや、何があったも何も勉強しただけだよ。流石に30は焦るわ」
「あれ、三上さんってそんな足早かったっけ?」
三上「ちょっと失礼すぎない?私放課後少し走ったりとかしてるからね」
皆はどんどんと苦手を克服していく。自分で考えて、行動して。
僕はテストの点が悪くてもどうとも思わないし、運動ができなくても改善しようとは思わない。
皆に向かって手を伸ばすけど、その手は空を切るだけ。
段々と姿が見えなくなっていって、ついに
雄太「お前危機感とかないの?そろそろヤバくね」
今までの全てを否定された。
雄太にとっては何気ない一言なんだろう。それでも、僕にとっては人格を否定されたように思えてしまう。
「....ょ..れ」
雄太「え、何?」
「何だよそれ!!!」
雄太は聞いたことのない僕の大声に驚いていた。正直、自分でも驚いた。
「失敗を恐れずだとか、成功の元だとか!!知らないよっ!!!!!」
「なんでそんなに進めるの!?怖くないの!?」
雄太は伸ばしたその手を、自分に戻した。
雄太「お前、デカい声出せるじゃん。昔は出せたのかよ?」
ぴくり、と少し反応をして。
「しらねぇよ」
そう吐き捨てて、教室の扉を乱暴に閉めた。
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僕は変わらない。失敗が、どうしようもなく怖いから。
僕の普通は段々と壊されて、つい昨日修復不可能なまでにぶち壊された。
壊したのは、自分かもしれないけれど。
布団から出ることすら億劫で、どうしようもなく何もしたくない。
僕はその日、何もしないという最悪の形で。
変わることを決意した。
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あの日から数ヶ月経った。
僕は怖いから何もしたくないんじゃない、面倒臭いから何もやらないんだ。
変わるには努力が必要、でもそれをしたくない。
ただそれをせずとも何かを成せるわけではない。だから怖いという逃げ道を作った。
その逃げ道すらあの一言で、もう壊されてしまったけれど。
あの時以来、成績はガクンと落ちたし、雄太とも話せない。親とは目すら合わせていない。
社会のゴミと言われても、何も言い返せない。
僕はどうしたらいい、僕は何がいけなかった。
答えは出ているけれど、目を背け布団に潜る。
僕は今日も、最底辺で息をしている。