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5月ー太陽の下で③
3度目の正直(?)文字数を少なくしました!
仲良しの二人、、どうなるのでしょうか?
体育祭から数日。私の右足首の捻挫はだいぶ良くなったけれど、まだ激しい運動は禁止。というわけで、移動のときは相変わらず前の席の葵に頼りっきりの日々だった。「葵〜、次の移動教室、教科書重いから一緒にカバン持ってって!」「あ、うん。いいよ、舞ちゃん」「葵、購買でパン買ってきてほしいな。私はここで待ってる!」「……うん。分かった。何がいい?」いつだって、葵はふわりと優しく微笑んで私の頼みを聞いてくれる。その日の放課後。私は来週提出の学級日誌を小脇に抱えて、葵のいる図書室へと向かった。ガラッと扉を開けて、少し大きめの声を出す。「葵ー! 助けて、この日誌のレイアウト、どう書けばいいか全然分かんなくてさ!」図書室の奥、カウンターで本の整理をしていた葵が、ビクッと肩を揺らした。「……舞ちゃん、ここ図書室だよ。静かにして」葵の声は、いつもより少しだけ低かった。だけど私はそのまま、教卓用の重い日誌を葵の目の前にバサッと広げる。「あ、ごめんごめん! それよりさ、この体育祭の反省欄、葵が代わりにちょっと綺麗にまとめといてくんない? 私が書くと、またガサツだって高橋先生に怒られちゃうしさ」いつものようにニカッと笑って、軽いノリでおねだりをする。パサリ、と葵の手から、整理中だった図書カードが机に落ちた。葵がゆっくりと顔を上げる。その綺麗な瞳には、いつもの優しい光が完全に消え失せていて、見たこともないくらい冷たい怒りが宿っていた。「……どうして、いつも私なの?」「え……?」予想外のトーンに、私の言葉が詰まる。「自己紹介のときも、学級目標のときも正式に、体育祭のときも……舞ちゃんはいつも強引に私を巻き込んで、全部私を頼りにして……。それだけじゃなくて、足が痛いからって、荷物も、購買も、日誌まで私に押し付けるの?」「お、押し付けるって……私はただ、葵を信頼して、相棒だから手伝ってほしくて……」「私は、舞ちゃんの便利屋じゃない!!」バン!! と、葵が激しく机を叩いた。静かな図書室にその音が鋭く響き渡る。葵の肩が、激しく上下に震え始めた。「私、本当はこういうの、すごく苦手なの……っ。自分の時間を削ってまで、誰かの身の回りのお世話をしたり、頼み事を断れずに引き受けたりするの、本当はすっごく疲れるの……!体育祭の後だって、舞ちゃんは『おんぶして』って笑ってたけど、私、本当はすごく嫌だった……! でも、舞ちゃんが強引に言うから、断れなくて……。みんなの陰口だって、私が言い返せなかったから舞ちゃんに嫌な思いをさせたって、ずっと悩んでたのに……!」葵の瞳から、大粒の涙がぽろぽろと溢れ出す。溢れる涙を制服の袖で乱暴に拭いながら、葵は私を強く睨みつけた。「舞ちゃんは、思ったことを何でも言えて、強引に人を引っ張っていけて、いいよね。でも、みんながみんな、舞ちゃんみたいに強くなれるわけじゃないんだよ……!」かける言葉が、何も見つからなかった。私は自分のノリを、葵に無理やり押し付けていただけだったんだ。「ごめん……私、そんなつもりじゃ……」「……もういい。私、少し舞ちゃんと距離を置きたい」葵は震える手でスクールバッグを掴むと、私の横をすり抜けて、走るように図書室を飛び出していった。バタン、とドアの閉まる音だけが虚しく響く。伸ばしかけた私の手は、空を切ったまま止あった。机の上にぽつんと残された、白紙の学級日誌が、夕方の風にパタパタと揺れている。◇「はぁーーーー……」夕日に照らされた帰り道。私は一人、まだ少し引きずる足で、トボトボと歩いていた。いつもなら隣に葵がいて、今日の授業の文句とかを笑って聞いてくれているはずなのに、今は自分の足音しか聞こえない。(怒っちゃったなぁ、葵……。あんなに怖い葵、初めて見たわ)頭をくしゃくしゃと掻きむしる。便利屋だなんて思ったことは一度もない。ただ、葵が何でも完璧にこなすから、ついつい甘えすぎてしまったのだ。(どうやって謝ればいいんだろ。「ごめん!」って言っても、また『舞ちゃんは強引でいいよね』って言われそうだし。うーん……)眉間にシワを寄せて、人生最大レベルの深刻さで考え込む。いつもノリと勢いで生きてきた私にとって、こういう繊細な悩みは、古文の呪文よりも難解だった。(……あ、そういえば今日、購買で新作の焼きそばパン買うの忘れてたな。明日の昼休み、ダッシュで買いに行こ。あ、でもまだ足痛いから競歩で――)「って、違う違う違う!!」私は自分の頭をバシッと叩いた。「何が焼きそばパンだよ! 今はパンのこと考えてる場合じゃないでしょ私! 葵との大ピンチでしょ!」一人で住宅街の真ん中でノリツッコミをしてしまい、すれ違った見知らぬ主婦の人に「あらやだ」という目でジロリと見られてしまった。恥ずかしい。顔がカッと熱くなる。だけど、恥ずかしさが通り過ぎた後、今度はじわじわと、胸の奥からモヤモヤとした別の感情が湧き上がってきた。最初は申し訳なさでいっぱいだった。だけど、一人でトボトボ歩いているうちに、なんだか無性にイライラしてきたのだ。(……っていうかさ、嫌なら嫌って、その場で言えばいいじゃん!)私は悪気があって頼んだわけじゃない。いつも葵が優しく「いいよ」って言ってくれるから、本当に喜んで手伝ってくれてるんだと思ってた。それを今更、昔のことまで全部引っ張り出してきて「便利屋じゃない」なんて怒られるのは、さすがに理不尽じゃないか?「葵だってさぁ!! じゃあ私にどうしろって言うのよ!?」誰もいない夕暮れの路地裏で、私は思わず大声で叫んでいた。言いたいことを溜め込んで、勝手に限界になって、勝手に怒って。超能力者じゃないんだから、言われなきゃ気付けるわけがない。「あーもう! マジで意味わかんないっ!」地面に転がっていた小さな小石を、痛む右足で八つ当たり気味にキックする。小石はカランカランと虚しい音を立てて、アスファルトの奥へと転がっていった。怒りと、悔しさと、寂しさがごちゃ混ぜになって、胸の奥が痛い。夕空がどんどんオレンジ色から紫色へと着替えていく。うちらを繋いでいたはずの凸凹な歯車は、5月の終わりの涼しい風の中で、冷たく止まったままだった。(つづく)
読んでいただきありがとうございます!
葵と舞がとうとう喧嘩をしてしましました、、
仲良しになれるといいですね(まあ作るのは私なんですけどね)
では〜!