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【曲パロ】彼の軌跡 / オルソドクシア
楽曲元:https://www.youtube.com/watch?v=YdPzENopl3s&list=RDYdPzENopl3s&start_radio=1
苦無さんの幼少期捏造小説 。
がちメロ過ぎてやばいでs((
────この世に、神なんて者は居ない。
幼少期、俺は早くもそう結論付けた。
冷え切った目で世界を眺め、誰かに届くこともない声で呟く。
「正しい教えなんて、ない」
▷▶▷
寒さに震えながら、かじかんだ手でまだ温かいパンを握る。人通りのない路地裏で、身寄りもなく彷徨っている俺はどんなに惨めなのだろう。
「おい!盗人のガキがこの辺を通らなかったか?!」
パン屋の店主の怒鳴り声が大通りの方から聞こえ、びくりと肩が跳ねる。足音をたてないようにしながら、俺は大通りとは反対の方へ抜け出した。
吐き出した息が白く染まり、消えていく。俺もいつかこうなるのだろうか。
「……ねぇ、ボク。大丈夫?」
ふいに降ってきた優しそうな声に顔を上げると、綺麗な女性が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
────反射的に、後ずさる。
だって、同じだったんだ。
同じ目をしていたんだ。
俺を捨てた、母さんと。
あんなに優しかった母さんも、最後は俺を捨てた。
理由は聞いていない。
ただ……十中八九、父さんが借金を残して逃げたことが原因だろう。
あの日を境に、母さんは狂ったかのように神に祈りを捧げていた。
俺も祈った。
何でも良いから、誰でも良いから。
母さんを救ってください。
俺を救ってください。
だけど、駄目だった。
神なんて、居やしなかったんだ。
ある日、母さんはふらりと外に出て、そのまま二度と帰ってこなかった。
どこに行ったのかもわからない。
生きているのかもわからない。
でももう、そんなことどうでも良い。
だって、わかってしまったから。
俺は見離されたんだ。
世界から、ヒトから、愛から。
所詮、全部全部そんな素晴らしいものじゃなかった。
「もしかして、迷子?ならお姉さんと一緒に……」
手を差し伸べてきた女性を振り払い、俺は駆け出す。
気持ち悪い。
そんな目で俺を見るな。
まるで自分の存在を否定されているかのようで、不快な思いが込み上げてくる。
(あぁ……)
あてもなく走り続ける俺は、焦がれるように何かに祈った。
もし、この世に神が居たら。
そいつを自由に操れたら。
どんなに俺は、幸せになれただろう。
────たどり着いた先は、教会だった。
盲目的に神を信じる者たちが、一心に偶像へと祈りを捧げている。
(……偶像に媚びを売りゃ救われる命だなんて、なんて等しく無価値で報われない命なんだろう)
冷たい瞳で彼らを見つめながら、俺は密かにそう思った。
「奇蹟など所詮ただの虚構。嘘だらけだ」
胸のうちに抑えきれず、思わず吐き捨てるように言ってしまう。幸い、誰にも聞かれることは無かった。
(……まぁ、別に聞かれても良いか)
どうせ、ここに存在するすべては無様で愚かなのだから。
ただ────そんな中にも、惹かれた存在が一つだけあった。
その身を、心を、全てを捧げてしまうほど人々を魅了する“主”の、唯一の代弁者。
たしかその存在を────“神父”、と言うのだろうか。
俺は、初めて何かに目を奪われた。
神なんて存在しない。
奇蹟なんて存在しない。
だから、どんなに祈っても、誰にも届かない。
それなのに。
────彼を前にすれば、誰も正しさなんてわからなくなるんだ。
いつの間にか、酷く心臓が波打っていた。
……あぁ、そうか。
唐突に、俺は気が付いた。
(俺も────あんなふうになりたいんだ)
信者たちに囲まれて。
存在もしない神に祈って。
その見返りとして、盲目的な愚者たちから“捧げもの”をもらう。
ただ独り、己の欲のために願うのだ。
「ふ、ふふっ……あははっ…!!」
込みあげた笑いを、止められることが出来なかった。
ようやく、生きるための道を見つけた。正しさなんて、二の次五の次だ。
いや、そもそも。
(正しい教えなんて、ないのだから)
俺は、歩き出した。
素晴らしい未来を思い描いて、神にすがる愚者どもを嘲笑って。
────破滅の道へ向かっているなんて、露程知らずに。
fin(オルソドクシアに続く)