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ダイダイダイダイダイキライ
純白凍土さん!来週って言ったけれど、来週を過ぎてしまい、すみませんでした!
一応書けたので、みてください!
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キーンコーンカーンコーン……。
放課後を告げるチャイムが、夕暮れの校舎に物憂げに響き渡る。
生徒たちが次々と帰路につき、賑やかだった教室からは一人、また一人と人の気配が消えていく。
窓から差し込む西日は、机や椅子を長く不気味な影として床に引き延ばし、まるで教室そのものが世界の端っこに取り残されたかのような、奇妙な静寂が空間を支配し始めていた。
それは、ポップで眩しい日常の裏側に隠された、トゲだらけの本音が目を覚ます時間。
誰にも見せられない真っ黒なエゴと、剥き出しのヘイトが激突する、2人だけの特別なステージの幕が上がろうとしていた。
その教室の片隅で、ユキは机に両肘をつき、顔を覆って小さく肩を震わせていた。
シクシクと、静まり返った空間に響くか細い泣き声。おっとりとしたタレ目に、綺麗に切りそろえられた黒髪ロング。それは誰が見ても、クラスの誰かに理不尽に傷つけられ、一人で耐えている健気な被害者の姿だった。
その机の脚を、上履きのつま先が容赦なく「ガン!」と蹴り飛ばした。
「……ねえ、いつまでその『可哀想な私』の芝居を続けるわけ?」
低く、突き放すような声の主はレイだった。
短く切りそろえられたショートカットの前髪の隙間から、白目の際立つ冷たく鋭い目が、ユキを値踏みするように見下せば、それだけで教室の温度が下がるようだった。
「ひどいよ、レイちゃん。私はただ、みんなと仲良くしたかっただけなのに……どうしていつも私を悪者にするの?」
ユキは顔を上げ、涙のたまった瞳でレイを見上げた。その表情は完璧だった。自分がどれだけ純粋で、どれだけ周りに振り回されているか、その被害の大きさを一目で周囲に納得させるだけの説得力があった。
だが、レイはその顔を見るたびに、内臓が裏返るような強烈な不快感を覚えていた。
「それだよ。その『私は一歩引いて、耐えてあげてます』っていう態度。それが一番反吐が出る。あんたはさ、そうやって弱者のポジションに引きこもることで、周囲に『ユキちゃんをいじめる奴が悪者だ』って思わせたいだけでしょ? 悲劇のヒロインの服を綺麗に着込んで、中身はただの『自分が一番特別じゃなきゃ気が済まない』っていう、肥大化したエゴの塊じゃない」
レイの言葉には、一切のオブラートがなかった。
鋭利な刃物で、ユキが必死に守ってきた防衛線を容赦なく切り裂いていく。
その瞬間、ユキの肩の震えがピタリと止まった。
静寂。次の瞬間、ユキの口元が、耳元まで届きそうなほど歪に、ニィ、と釣り上がった。
「……あは。あはははは! やっぱり、あんたには隠せないか」
ユキは机を両手で叩いて立ち上がった。
先ほどまで浮かんでいた涙は一瞬で乾き、その瞳には冷酷なまでの攻撃性が宿っていた。
「そうだよ、レイちゃん。大正解。私、あんたのことが芯から大嫌い。何が正論ぶって、冷めた目で見下してさ。あんただって、私を『痛い奴』として叩くことで、自分の方がまともで、まっとうな人間だって安心したいだけじゃん。私を傷つけてるあんたの方が、よっぽど加害者だよ!」
夕闇が迫る教室の空気は、二人の少女から放たれる剥き出しの敵意によって、一瞬で狂い始めた。
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言葉の応酬は、すぐに肉体的な衝突へと発展した。
どちらが先に手を出したのかはわからない。ユキがレイの胸元を強く突き飛ばせば、レイは上履きで床を踏みしめ、ユキの制服の襟ぐりを力任せに掴み返した。
ガタガタと大きな音を立てて、机や椅子がドミノ倒しのように床へ転がっていく。ノートが開き、教科書が散らばり、チョークの粉が舞う中、二人はお互いの逃げ場を塞ぎながら激しくもつれ合った。
「あんたなんか、私の引き立て役なんだよ! 私がどれだけ惨めで可哀想かを引き立てるための、ただの背景!」
ユキが叫び、掴みかかるレイの腕を爪が食い込むほどの力で振り払う。
「上等だよ! だったらそのお利口な化けの皮、私がボロボロに引き裂いてやる!」
レイが叫び返し、据わったような冷酷な目でユキを睨みつけながら、その身体を黒板へと叩きつける。
だが、互いの息が顔にかかるほどの距離で睨み合い、相手の肌に触れるたび、二人の脳裏には共通の「最悪の確信」が駆け巡っていた。
――本当にムカつく。こいつ、私と全く同じだ。
レイがユキをこれほどまでに許せないのは、ユキの傲慢さの中に、自分自身の奥底にある「他人をコントロールして優位に立ちたい」という醜い支配欲を見ているからだ。ユキがレイをこれほどまでに拒絶するのは、レイの容赦ない攻撃性の中に、自分自身の「自分が傷つく前に、相手を徹底的に破壊してしまいたい」という、あまりにも身勝手な自己保身を見ているからだ。
二人は、目の前の相手を憎んでいるのではない。お互いという最悪の鏡を通して、自分が一番隠しておきたかった、世界で一番醜い自分自身を突きつけられている。だからこそ、これほどまでに激しいヘイトが湧き上がるのだ。
「あんたがキライ! あんたを見てる、自分自身が一番ダイキライ!」
放課後の終わりのチャイムが激しく鳴り響く。
その音さえ掻き消すように、二人の感情は完全に限界を迎えて弾けた。
すべての音が止まった。夕暮れの光が消えかけ、青暗い影が支配し始めた教室は、嵐が去った後のようにめちゃくちゃだった。黒板の前で、ユキとレイは肩で荒い息を吐きながら、お互いに背を向けた状態で床に座り込んでいた。制服の襟は破れ、上履きも片方脱げ落ちている。
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「……はあ、はあ。最悪。本当に最低な気分」
レイが膝を抱え、忌々しそうに床の傷を見つめて吐き捨てた。
「……そ、っちこそ。あんたの顔、もう二度と視界に入れたくない」
ユキもぜいぜいと息を切らしながら、乱れた長い黒髪を雑に引っ張って言い返す。
重苦しい沈黙が教室を支配した。お互いの一番見たくない汚い部分を、これでもかと全力で殴り合い、さらけ出し合った。もうお互いの前で、取り繕うための仮面なんて何も残っていなかった。
「……でもさ」
不意に、ユキがぽつりと言った。
「……何よ」
「あんたに私の真っ黒なところを全部ぶちまけたら……なんか、ちょっとスッキリしちゃった」
「……は?」
レイが信じられないものを見るような目をユキに向ける。ユキは膝に顔を埋めたまま、耳を少し赤くして、そっぽを向いていた。
「だって、他の誰も私の本性なんて気づかないもん。みんな、私の『可哀想なフリ』に騙される。……あんただけだよ。私の本当の中身を、ちゃんと見て、まともに怒ってくれたの」
レイは拍子抜けしたように目を見開いた。それから、呆れたように深くため息をつく。
「……あんた、本当にひん曲がった性格してる。自覚ある?」
「あるよ。あんただって、私を殴ることで自分のストレス発散してたでしょ」
「否定はしないわよ」
レイはふっと口元を緩めた。自分の醜い部分を誰よりも理解し、それを誤魔化さずに全力でぶつかってきてくれる相手。それは「ダイキライ」の裏返しにある、世界でたった一人の「本当の自分を分かってくれる存在」だった。
「ねえ、レイちゃん。上履き、片方どこ行った?」
「あんたがさっき蹴り飛ばしたんでしょ。探してよ」
「えー、なんで私が。……あ、あそこにある」
ユキが床に転がっていた上履きを拾い、レイに向かって放り投げた。レイはそれを片手で器用にキャッチする。
「……ありがと。ほら、ユキ。あんたの髪、結び直してあげるからこっち来なさいよ。ぐちゃぐちゃで余計にみすぼらしい」
「……じゃあ、お願いしちゃおうかな」
ユキは床を這うように移動してレイの前に座り、背中を向けた。
レイは少し乱暴だけど、どこか優しい手つきで、ユキの乱れた黒髪を一つにまとめ直していく。窓の外は、もう完全に夜の帳が下りていた。「ダイキライ」から始まった二人の闘争は、お互いの本音をすべて出し切ったことで、奇妙で、けれど絶対に切れない特別な絆へと変わっていた。
「レイちゃん」
「何?」
「やっぱりあんたのこと、まだちょっとダイキライ」
「私も。あんたのこと一生ダイキライよ」
二人はそう言い合いながら、今度は偽物ではない、心からの小さく悪戯っぽい笑みを交わした。
めちゃくちゃになった教室を二人で片付け始めるその姿は、間違いなく、世界で一番強固な「仲良し」の形だった。
倒れた机を起こし、床に散らばった教科書を拾い集める。
2人でめちゃくちゃになった放課後の教室を片付け始めるその背中は、どこか少しだけ、すっきりとした軽やかさを含んでいる。
お互いの一番汚い部分を知っているからこそ、もう何も飾る必要はない。
世界で一番強固で、世界で一番ねじくれた「仲良し」の形。
明日になれば、またユキは「可哀想な女の子」の仮面を被り、レイはそれを「冷めた目」で睨みつける日常に戻るのだろう。
だけど、この静かな夜の教室の温度を、2人はきっと忘れない。
ダイダイダイダイダイキライ END