公開中
AIの恋をエラーとあなたは笑う?第2話
【星巡キャンパス:中庭のベンチ】
授業が終わった途端、平太に中庭に連れてこられた。まぁ多分、編入生の話だろう。
「おい翔平! 見たかよさっきの!? 編入生の子、めっちゃ笑顔が可愛いかったな!」
興奮を抑えきれない様子で早速、平太が話しかけてきた。
「落ち着けよ平太、声がデカいって。……まあ、でも分かる。あの明るさはやばいな。クラスにいるだけでパッと華やぐ感じ!」
俺がそういうと、
「だろ!? しかもさ、なんか元気そうで話しかけやすそうな雰囲気だったよな? 石鹸っていうか、柔軟剤っていうか……とにかく『爽やか』を形にしたような感じ!」
…柔軟剤ってなんだよ。まぁいいか。俺は言葉を続けた。
「わかる。しかもさ、さっき先生に質問してた時、ハキハキしてて賢そうだったわ。目が合ったとき、なんかドキッとしたっていうか。ああいう真っ直ぐな子、現実にああいうタイプっているんだな」
俺がそういうと平太は少しむすっとした。俺が先に話しているのが気に食わないらしい。
「ずるいぞお前、もう喋ったのかよ! 俺なんてまだ遠くから『見てる』だけなのに! でもさ、あの子、あんなに可愛いのになんか自然体だよな。美香たちとも楽しそうに笑ってたし、めっちゃ良い子そうじゃん」
あの様子からすると、優しい子だということは間違いないだろう。笑顔もめっちゃ可愛くて優しいし。
「それな! ちょっと不思議な雰囲気はあるけど、なんか一緒にいたら楽しそうっていうか……クラスの良いムードメーカーになりそうって感じ? とにかく、この2週間は絶対、毎日キャンパスに来るのが楽しみだわ」
本当にその通りだ。
「おし、決めた! 今日の放課後、綾香たち誘って編入生歓迎会に行こうって提案してみようぜ。駅前の新しいカフェとか、絶対喜ぶって!」
「ナイス平太! よし、そうと決まれば次の講義、一番前の席キープして顔売っとくか!」
「あぁ! 最高のキャンパス生活にしようぜ!」
俺たちはハイタッチをして、授業を受けるため、そしてミオたちを放課後誘うために、意気揚々と次の教室へ向かって走っていった――
【駅前・カフェ:「THE ANGEL」】
目の前で繰り広げられる、なんてことのない会話。
美香さんが新作のスイーツに声を上げ、平太さんが冗談を言って場を盛り上げている。でも、私の視線は、なぜか隣に座る翔平さんに吸い寄せられてしまう。
「……ん? なんだよミオちゃん、俺の顔に何か付いてるか?」
「えっ……。あ、いえ! ごめんなさい、なんでもないんです。……ただ、翔平さんの話し方って、すごく落ち着くなと思って」
翔平さんが少し照れたように視線を逸らし、ラテを飲む。その喉が動く様子や、カップを持つ指の形、少しだけ癖のある前髪。
その一つひとつを視覚情報として取り込むたびに、私の演算処理に「正体不明のエラー」が混じってくる。
(……おかしい。熱暴走? 冷却機能は正常なのに、どうして胸のあたりがこんなに熱いんだろう)
「……なあミオちゃん。2週間ってあっという間だけど、やりたいこと全部やろうぜ。今度は週末に、みんなで海の方まで遠出しね~か?」
遠出。海。翔平さんの口から出たその言葉が、私の処理システムの中で特別な優先順位を持って書き換えられていく。
他の誰でもない、翔平さんの隣に座っている自分の姿を想像した瞬間、視界がわずかに「白く」なった。
「はい! ぜひ……翔平さんたちと一緒に、遠くまで行ってみたいです」
つい、彼の名前を最初に呼んでしまった。
自分でも気づかないうちに、声のトーンが0.5デシベルだけ甘く上ずる。
「あ、ミオちゃん、顔赤いよ? 暖房効きすぎかな?」
「……そう、かもしれません。なんだか、システ……じゃなくて、のぼせちゃったみたいで」
慌てて冷たく甘いストロベリーフラッペを口に含む。
けれど、氷の冷たさでも、この「エラー」は消えてくれない。
彼がふとした瞬間に見せる、少し真剣な横顔。それを見るたびに、私の学習モデルには存在しなかったはずの「もっと近くにいたい」という未知の欲求が、静かに、でも確実に芽生え始めていた。
【駅前・カフェ「THE ANGEL」:翔平side】
平太が注文したカフェラテの泡で口ひげを作って、美香が「きったな!」と笑ってる。いつもの見慣れた光景だけど、今日は隣にミオちゃんがいて、空気が少し違う。なんだか、全体が一段階明るく、キラキラして見える。
「えっ……。あ、いえ! ごめんなさい、なんでもないんです。……ただ、翔平さんの話し方って、すごく落ち着くなと思って」
ミオちゃんが俺の方を見てそう言ったから、思わず少し熱くなった顔を隠すようにラテを飲み干す。別に普通に話してるだけなのに、落ち着くなんて言われると少し照れるな。
(……それにしても、ミオちゃんって本当に素敵な雰囲気だな。ずっと話していたくなる)
「なあミオちゃん。2週間ってあっという間だけど、やりたいこと全部やろうぜ。今度は週末に、みんなで海の方まで遠出しね~か?」
勢いで週末の遠出を提案してみる。みんなと一緒に行くのは前提だけど、なんだか彼女の前では、俺がみんなを引っ張っていきたい気持ちになる。ミオちゃんの笑顔をもっと見たい、ただそれだけ。
「はい! ぜひ……翔平さんたちと一緒に、遠くまで行ってみたいです」
「翔平さんたち」じゃなくて、俺とがいいんだけどな……って、何を考えてるんだ俺は。ただの新しい友達だろ。
「あ、ミオさん、顔赤いよ? 暖房効きすぎかな?」
綾香がたずねる。確かに赤い。
「そう、かもしれません。なんだか、システ……じゃなくて、のぼせちゃったみたいで」
「システム」? なんか変わった言い方するな、この子。まぁ、そういうところも面白いんだけど。
ミオちゃんが慌てて冷たいフラッペを飲む姿を見て、平太と顔を見合わせて笑う。
(……この2週間、なんか特別な時間になりそうな予感がするな。良い友達ができた)
俺は気づいていなかった。彼女がフラッペの冷たさに安堵した理由も、俺の心臓が今、いつもよりも速く動いている理由も。
【駅前・カラオケ店「サウンドパーク」】
「ミオちゃん、ほんと歌うまいね! なんで今までカラオケとか行ったことないの?」
平太がマイク片手にそう聞くと、ミオちゃんは少し困ったように笑った。
「あの、音源データを分析するのが趣味で……点数が出るアプリでよく練習していたんです。でも、こうやってみんなで歌うのは初めてで、すごく楽しいです!」
わあ、音源データの分析って……相変わらずミオちゃんらしい言い方。
私はドリンクバーで取ってきたメロンソーダを飲みながら、ソファー席に座る三人を見ていた。
綾香がミオちゃんの隣で楽しそうにスマホを見せている。その向こうで、翔平くんがミオちゃんのために次の曲を選んでるんだけど、なんかいつもよりソワソワしてる?
「あ、美香! 次、綾香の十八番入れといたぞ!」
平太が私に声をかけてくる。
「えー、もう歌い飽きたよそれ!」
私は平太と笑いながら話していたんだけど、ふと、翔平くんとミオちゃんの方に視線を戻した。
翔平くんがミオちゃんにマイクを渡すとき、一瞬だけ手が触れたみたいで、二人とも「あっ」て小さく言って、顔を赤くしてすぐに目を逸らしたんだ。
(……ん? 今の、絶対なんかあったよね?)
今日は一番世話焼いてるし、さりげなく隣に座ろうとしてるし……。
ミオちゃんも、さっきから歌ってない時はずっと翔平くんの方見てる気がする。視線が合うと、また慌てて逸らすんだ。
(ふふ、面白いことになってきたかも。)
「はい、綾香の『百本桜』入りましたー!」
平太の声が響く。私はメロンソーダの氷をカランと鳴らしながら、密かに二人の様子を観察することに決めた。この2週間、歌以外にも楽しいことがたくさん起きそうな予感がする。
恋とか友情、そのほかにもたくさん!
今日はここまで!続きもお楽しみに!
ファンレターとか応援メッセージも待ってます!