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#4 無気力なオカン
「推しが尊い!」
昼休み。いつもの空き教室にて親友に叫ぶ俺。
親友はまたか、と言いたげな顔でため息を吐く。
「で?今日は誰の話?」
「よくぞ聞いてくれた我が親友!」
「あーはいはい。もういいから早く話してくれ」
どこかうんざりした親友の様子を華麗にスルーした俺は、お礼に親友の好きな唐揚げをあげながら思い出を噛みしめる。
「今日は三原那美ちゃんだ!」
「あー。あの無気力そうな子。」
普段眠そうな様子の彼女はどこか儚い見た目で守りたい女子一位(俺調べ)だ。
しかし、実はとてもしっかりもののオカン系女子なのである。
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それは昨日の夕方。
いつものように親友と帰った後、俺は外へ出た。
もちろん推し目当てである。
あーどの推しに出会えるかなーとルンルン歩いていると、いつものように弟さんを園に迎えに来た推しを見つけた。
「真央くん?帰るよ。」
あー。いつもマイペースそうなのにしっかりものなのマジでギャップ。
しんどい。
弟とはぐれないように手を繋ぐ様はまさに聖母。
そうして弟と共に買い物へ行く聖母。
あー尊い。この店ごと買いたい。買えないけど。
そんなことを思っていると、事件が起こる。
聖母が目を離している少しの間に弟さんがたーっと走っていってしまったのだ。
まだ聖母は気づいていない。
⋯仕方ない。
俺は聖母を見るのを中断して弟さんを追いかけた。
泣きたい。もっと買い物してる推しの姿を見ていたい。が、弟さんに何かあったら大変だ。
弟さんはお肉売り場で止まった。
何やらキョロキョロと辺りを見回している。
一体どうしたのか?しばらく見ていると、弟さんの目に涙が浮かぶ。
「びゃぁぁっぁああああ!お姉ちゃんどこぉぉぉぉおおおおお!」
大号泣だ。
慌てて弟さんに近寄る。
「君、どうしたのかな?」
「お姉ちゃんっ⋯いなくなっちゃった!」
えぐえぐと泣きながら俺に訴えてくる。
どちらかというといなくなったのは弟さんのほうじゃ?というツッコミをぐっとこらえる。
「そっか。じゃあ一緒にお姉ちゃん探そうか。」
「⋯!うん。」
俺は弟さんを肩車する。
きゃっきゃと喜ぶ弟さんを微笑ましく思いながら推しを探す。
恐らくだが、推しは今頃弟さんを探し回っている頃だろう。
弟さんの年で行きそうな場所。
お菓子売り場に行ってみよう。
俺はお菓子売り場に足を運びつつ、大声で呼びかける。
「この子のお姉ちゃんいませんかー!」
そうしてお菓子売り場にそろそろ着くな、といった頃。
「真央くん!」
後ろから焦ったような声が聞こえた。
振り返るとやっぱり推しがいる。
「お姉ちゃん!」
俺は弟さんを床にそっと降ろす。
するとテトテトと推しの方へ向かう。
が、推しは驚いたようにこちらを見ている。どうやら俺と気づいたようだ。
「あー。よかったですね。《《お姉さん》》、弟さんが見つかって」
あくまで俺は気づいてないフリをする。
すると、気づかれていないと思った推しはサッと顔を伏せる。
「ありがとうございました」
モゴモゴとお礼を行った推しはこれ幸いとばかりに大急ぎで去っていってしまった。
バレてないと思ってる推し、可愛い。
俺は推し達を見守りつつ頬を緩めた。
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「なんであんなに顔合わせてるのにバレてないと思ってるんだろ?可愛すぎる」
うっとりとする俺に親友が冷めた目を向ける。
(コイツ、僕と別れた後、そんなことしてるのか。キモ。ていうかそこまで行くとストーカーだろ誰か注意しろよ。)
「⋯それってストーカーじゃない?」
「家までつけてないからセーフ。」
アウトだろ、という親友の声を無視して唐揚げをもう一つあげる。
まぁ、口止め料である。