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六頁 アイス
そうして家に帰り、部屋でのそのそと着替えていると、ベルトに手をかけたところでガチャリと玄関ドアの開く音がした。
親はまだ仕事中のはずなので、となると__
「よーがりん! 愛しの幼馴染が遊びに来たよん」
案の定。
二階に向かって声がかけられるが、彼女はそのままリビングへ行ったようで上がっては来なかった。
なびきは昔、僕の着替え中に部屋に突入してきて、平身低頭土下座をしたことがあるからか、不用意に僕の部屋の周りはうろつかないようになっていた。
まぁ、そのときはまだ小学校一年生とかなので正直あまり覚えていないし、僕もそこまで不快ではなかった気がするので、大ごとにはなっていないけれど。
やがて僕は着替えを終え、リビングへ降りていくと、なびきが我が物顔でソファを占領してアイスを貪っていた。
「ん、やっほ。このアイスおいしいね」
「いや、それ、僕のハーゲンダッツなんだけど」
「二個同じのがあるってことは、片方は僕の分でしょ? よがりん、同じのをたくさん買ったりしないじゃん」
「……。……まあいいんだけどさ」
何事もなかったようにキッチンの方へ行き、冷凍庫からハーゲンダッツを取り出す。
後ろから「あっ、その反応は図星だね〜?」というからかいが聞こえてきたが無視した。
ソファに座った僕は蓋を開けアイスを頬張る。しばらく無言が続いた。
「__でさ。新学期始まってどうよ。よがりん」
「ん。……別に、どうもこうも。まぁいいんじゃないか、スタートとしては」
ふと放たれたなびきの問いかけに、僕は曖昧に頷く。
それに対してなびきは吹き出して、
「ふうん? 僕は嫌いじゃないよ〜、よがりんの曖昧主義」
「……そりゃどうも。アイス溶けるぞ」
「はいはい」
そしてアイスを食べ終わった僕は、スプーンと空のカップを片付けようと立ち上がる。
するとなびきが自分の分を無言で差し出してくる。
……お前、先に食べ終わったのになかなか片付けないなと思っていたら、そういうことかよ。
なびきを呆れた目で見てから、大して重くもない足取りでキッチンへ向かった。
「……なびき、お前さ、もうちょい危機感とか持ったほうがいいと思うぞ」
再びリビングへ戻り、ソファで脱力しているなびきを見て、僕は言う。
「わかっちゃいると思うけれどさ。心配だよ、そういうとこ」
制服ではなく、薄手のチュニック。
なびきはおかしそうに頬を緩めて、
「わかってないねぇ。大丈夫だよ〜、僕はさ、危機感を持ってないんじゃなくて、発揮してないだけなの」
大袈裟に肩をすくめて言うなびきに、僕は微かに目を丸くしてから
「……光栄だね」
と言って、なびきの隣にそっと腰かけ、肩の力を抜いた。