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悪役令嬢は四人の兄と姉に愛されて幸せなので、ヒロインを虐める必要がない。②
なんと!ファンレターをいただきました!!
優しい応援にほっこりしました。ありがとうございました。これからもエミリアの奮闘を見守ってあげてください。
それと、ユーザーページをつくりました。お恥ずかしいことにユーザーページを作れるのを知りませんでした…。教えてくださった方、ありがとうございました。
「どうしよう…?」
自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知った翌日。エミリアはウィリアムが届けてくれたアイスを食べながら、思考を巡らせていた。
アレンと自分がヒロインに接触しないようにしよう!と意気込んだものの、そのためにどうすればいいのかがいまいちよく分からない。空になったアイスの容器をテーブルに置くと、エミリアは本棚から日記帳を取り出した。
(とりあえず、ここに今わかる情報を書き出しておこう)
一つ目。自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したこと。
二つ目。アレンが乙女ゲームの攻略対象であること。
三つ目。ヒロインは平民の特待生で、希少な聖魔法を使えること。
情報を箇条書きにして書いていくと、三つ目の所で手が止まった。ヒロインは聖魔法という回復系の魔法が使えて、そこに魔法オタクのアレンが興味を持つ事からアレンルートは始まる。
悲しいことにアレンルートでも当然エミリアは悪役令嬢なのだが…。ここで一つ疑問が生まれた。
(アレン兄さまが私を断罪するなんて、ありえるの?)
この世界のアレンはエミリアを溺愛している。乙女ゲームのストーリーのようにエミリアを断罪し家族の縁を切るなんてことはありえるのだろうか。そもそも、エミリアの性格もゲームとは違う。それなら、ストーリー通りに話が進むとは考えづらい。
いろんな事を考えてしまってエミリアの頭がパンク寸前だったとき。コンコンとドアが叩かれた。
「どうぞ」
慌てて日記を本棚に戻すと、エミリアは返事をした。
「お邪魔するよ」
そう言って部屋に入って来たのはリリアーナだった。騎士の制服ではなく、男物のシャツとズボンを身に着けている。
「リリアーナ姉さま!」
「エミリア。もう体調は大丈夫かな?」
「はい!」
「そうか。私の可愛い天使が元気になってよかったよ」
にこりとリリアーナがほほ笑む。王子様の様に格好いいその笑みに、エミリアは顔を真っ赤にした。
「リ、リリアーナお姉さまこそ格好いいです。その服はどうしたんですか?」
「おや、忘れてしまったのかい?今日は兄弟皆でエミリアの学園生活に必要なものを買いに行くんだよ」
「あ!そ、そうでした…」
この数日、余りにも色々なことがあり過ぎてすっかり忘れてしまっていた。大好きな兄姉とお出かけだとずっと楽しみにしていたのに。
「まだ時間に余裕があるから、着替えておいで」
「はい…。ごめんなさい」
「大丈夫だよ」
大急ぎでエミリアが着替えて部屋を出ると、そこには既に兄姉たちが待っていた。
「よし。行こうか」
皆で外に出ると、二台の馬車が門の前にとめてあった。
「おい。なんで二台なんだ?」
ウィリアムが言う。
「五人で馬車に乗ると危ないから、人数を分けてくださいと言われましたの」
ミーアが答えた。その瞬間、エミリアを除く四人は火花を散らし始める。
「ここはやっぱり、男女で別れるべきじゃないかな。そのほうがエミリアも楽だろうし」
「ええ。リリアーナお姉さまの言う通りですわ」
「はあ!?ずるいですよ、リリアーナ姉さんもミーアも!!」
「そうだそうだ!!俺とアレン兄さんが不利だろ!」
「何を言ってるんだい?私はあくまでも一般論を言っただけだよ」
「いやいや!!そもそもリリアーナ姉さんは男みたいなもんだろ!!」
そうして十分余りの口論の末、兄弟じゃんけんが行われた。
「「「「兄弟じゃんけん、じゃんけんポン!!あいこでしょ!!あいこでしょ!!」」」」
(この世界にも、じゃんけんあるんだあ…)
仲良しすぎるがゆえに全く決着がつかない四人のじゃんけんを見ながら、エミリアは遠い目をして考えた。
それから更に数分後、ようやく馬車の席順が決まった。アレン・ミーア・エミリアのチームとリリアーナ・ウィリアムのチームだ。
「そういえばウィリアム、さっきはよくも私を男みたいなもんだと言ってくれたね?」
「ヒッ!!誰か、助けて…」
真っ青になったウィリアムが助けを求めるが、無情にも馬車の扉は閉められる。
(ウィリアム兄さま…どうかご無事で…)
ルーチェ家最強の剣士リリアーナを止められるものなど誰もいない。別の馬車に乗った三人はウィリアムの無事を心から願った。
「そういえば、今日はどんなものを買えばいいのでしょうか?」
エミリアはアレンとミーアに尋ねる。
「そうだなあ…魔法の授業で必要な杖はいるよね」
「あ、そっか。アレン兄さまは教師として学園にいらっしゃるんですもんね…」
「そうだよ。エミリアになら何でも教えてあげるから、どんどん質問してね」
「ほかの方にも教えてあげてください」
にこにこと話すアレンは、相変わらずエミリアに甘々だ。やはりどうしても、ゲームの中のアレンとは違う気がする。そもそもこの世界にはゲームと違う点がかなり多い。それなら、普通に過ごしていればヒロインは回避できるのでは…?と、エミリアは希望を抱いた。
もしかしたら、ここは乙女ゲームと似てはいるが全く別の世界で、ヒロインなんてものはいないのかもしれない。
(そうよ。アレン兄さまが私を嫌いになることなんて、絶対にないんだから)
そう思うと今までざわついていた心にも余裕が生まれ、不安もわずかに和らいだ。
「ほかにも裁縫道具に、教本だとか…。買うものは沢山あるわよ」
「はい!」
やがて目的地に着くころには買い物が素直に楽しみになってきて、エミリアはワクワクで馬車を降りた。
「この木から作った杖が一番いいんだよ」
「この裁縫道具、昔わたくしが使っていたものと同じ。使いやすいのよ」
「教本は…これとかが一番分かりやすいぞ。解説も丁寧だしな」
「エミリアは可愛いからね。やっぱりこういう武器は常に隠し持っておいたほうがいい」
色々な店を順番に回っていき、必要なものをどんどん買っていく。魔法の杖はアレンが、裁縫道具はミーアが、教本はウィリアムがそれぞれエミリアに合うものを選んでくれた。恐らく学園生活には必要ないが、リリアーナからは護身用の小型ナイフを買わされた。
「兄さま、姉さま。今日はありがとうございました!」
帰り道、エミリアは兄姉たちと一緒に仲良く歩いていた。すると、向かい側から走って来た女の子と肩がぶつかってしまった。
「きゃっ!」
「…え?ああ、ごめんなさいね」
エミリアは尻もちをつく。ぶつかった女の子は面倒くさそうにしながらも、一応手を貸してくれた。エミリアが顔を上げた瞬間、二人の目が合った。
「ッ、エミリア…!?」
「…?どこかでお会いしたことありましたか?」
驚いたように声を上げた女の子が自分の名前を呼んだような気がしたので、エミリアは尋ねる。
「いっ、いいえ。人違いよ」
しかし慌てて言うと、女の子は逃げるようにその場を後にした。
「大丈夫かい?エミリア」
「あいつ、エミリアにぶつかったのにあの態度は何なんだ」
「チッ。せめてちゃんと謝ればいいものを」
「無駄よ。あんな方のレベルに合わせて怒っていては、身が持たなくてよ」
兄姉たちが怒っている中、エミリアは黙って考え込んでいた。さっきぶつかった女の子に、どこか見覚えがある気がしたのだ。
(誰だったかしら…?)
そこでふと思い出した。乙女ゲームのヒロインの立ち絵を。感情移入しやすいようにか顔は詳しく描かれていなかったが、恐らくあれが…。
「ヒロイン…?」
背中を冷たい汗が伝う。体ががくがくと震えて、立っているのですら精一杯になった。
(間違いない。ここは、本当に乙女ゲームの世界なんだ。ヒロインもちゃんと存在する)
つまり、エミリアが大好きな兄から断罪される未来も本当に起こるかもしれないということ。
「エミリア?大丈夫?」
様子のおかしいエミリアに気づいたアレンが声をかけてくる。彼がエミリアの名前を呼ぶ声はとても優しいし、心配しているほかの三人から向けられている視線にも愛情がこもっている。
(まだ。まだ、大丈夫)
むしろ、敵を知れただけ良しとしよう。今はまだ誰も自分から離れていないのだから。
(奪わせない。絶対に)
恐怖を誤魔化すように、エミリアは手の甲をぎゅっと握りしめた。
仲のいい兄弟の様子をしっかり書きつつ、ストーリーも進めていきます。
ご指摘も感想もお待ちしております!!