リレー開始者:桜井 玲奈
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初のリレー小説です。
よろしくお願いします。
静謐な邸宅に、新しい家族の訪れを告げる鐘の音が響いた。
その日、藍と玲夜の家庭には、新たな風が吹き込んだ。
両親の再婚に伴い、彼らには「義理の妹」という存在が加わったのである。
門をくぐり、緊張した面持ちで現れたのは、透き通るような肌と、どこか憂いを帯びた瞳を持つ少女、羽美であった。
十五歳という若さでありながら、彼女の立ち振る舞いには品格があり、その場にいるだけで空気が浄化されるような不思議な魅力があった。
「今日からお世話になります。よろしくお願いします」
控えめに頭を下げた羽美の声は、鈴の音のように澄み渡り、兄弟の鼓動を揺さぶった。
藍は十八歳という若さながら、既に大人の風格を備えた青年であった。
彼は最年長としての責任感を背負い、優雅な所作で彼女を迎え入れた。
しかし、その内面では、初めて目の当たりにした「妹」のあまりの美しさに、言葉にならない動揺が渦巻いていた。
一方で、十六歳の玲夜は、兄とは対照的な情熱を秘めた少年であった。
彼は羽美と視線が合った瞬間、心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受けた。
彼女の瞳に宿る繊細な光、そしてわずかに震える指先。
それらすべてが彼の感性を刺激し、一瞬にして「家族」という枠組みを超えた感情へと変質していったのである。
挨拶を終え、羽美が自室へ向かう廊下で、二人の視線が交差した。
そこには兄弟としての絆ではなく、獲物を奪い合う捕食者のような鋭い火花が散っていた。
「……いい子だね、羽美。何か困ったことがあれば、いつでも僕に言いなさい」
藍は穏やかな微笑を浮かべながらも、その瞳の奥には独占欲の影を潜ませた。
彼は兄としての権威を盾に、彼女を自分の庇護下に置こうと画策する。
「そんなこと言わなくてもわかるよ。僕の方が、羽美の好きなものをたくさん知ってるから」
玲夜は挑発的な笑みを浮かべながら、一歩前に踏み出した。
彼は兄の余裕を打ち砕くかのように、彼女への関心を隠そうともしない。
それからの日々は、静かなる闘争の場へと変貌した。
朝食の席では、どちらが羽美に椅子を譲り、どちらが彼女の好みの料理を優先させるかを巡り、言葉の裏で鋭い駆け引きが行われた。
放課後、羽美を迎えに行く際も、藍は車を用意し、玲夜は自転車で先回りする。
二人の間には、目に見えない境界線を引き、彼女を取り囲むための見えない壁が築かれていった。
「兄さんは少し堅苦しいよ」
羽美は時折、困ったように微笑みながら言う。
その一言に、藍の胸は締め付けられ、玲夜の嫉妬心はさらに燃え上がった。
彼らは自覚していた。
この感情が、本来あるべき兄弟の情愛ではないことを。
しかし、一度芽生えた執着は容易には消えない。
義理の妹という神聖な立場を守るべき兄と弟にとって、彼女への恋慕は背徳的な悦楽であり、同時に抗いがたい呪縛であった。
邸宅の廊下を通り過ぎるたびに、三人の視線が交差する。
藍の静かな執着と、玲夜の激しい情熱。
その狭間で揺れる羽美は、まだ気づいていない。
自分を取り巻く二人の男たちが、家族という仮面の下で、彼女を奪い合う熾烈な戦いを繰り広げていることに。
窓の外では季節が移ろい、庭の木々が色を変えていく。
しかし、この屋敷の中だけは、三人の歪な情愛によって熱を帯びた時間が止まったかのように、濃密な緊張感に支配され続けていた。