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目次
1.ハロー、レイルシティ。
※本作は、サイバーパンク2077に多大な影響を受けています。
...この町は、みんな夜が大好きさ。
朝になると家に帰って、眠りこけちまう。
治安は悪い。ファイトマネーで稼ぐしかない。
だけど、そんなこの町が好きだったりする。
みんな顔見知りさ、全員がここで育った兄弟。
挨拶は顔面への肘打ち。愉快だろ?
引っ越しの挨拶には、お隣さんに唾を吐くのが礼儀だ。
そういう町で、私は便利屋のようなことをしている。
ろくな仕事は入ってこない。
うちをデリヘルかと勘違いしてるバカがいるもんでな。
たまに入ってくるちゃんとした仕事も、命の危険と隣り合わせだ。
あるときにはカーチェイスだったり、銃撃戦だったり。
ほら見ろ、私の耳がえぐれてるだろ?
トリガーでハッピーされたんだ、畜生。
だが、仕事が舞い込んだからには、絶対に成功させるのが便利屋だ。
《システムオールグリーン...仕事は順調かな?|便利屋《ファクトトゥム》。
いや、そもそも通信入ってる?こっちからじゃよく分からないんだ。
システムオールグリーンとかカッコつけたけど、適当に言っただけなんだよ》
「分かってる、入ってるから静かにしてくれ|依頼人《マンダント》」
《失礼したね、仕事を続けてくれ。何か依頼で不明点はあるかい?》
「無いな。おれが今気にしているのは、
家で冷やしといてる酒が旨いかどうかだけだ。
そもそも不明点だらけで、どこが不明点だか分かりゃしない」
今回の|依頼人《マンダント》は、大企業のお偉いさんらしい。
正直言うと、怪しさが振り切っている。
考えてもみろ、レイルシティに大企業があるとでも?
そして、この町の人間のモットーは
”外の奴らは信じるな”だ。
私だって例外じゃない...
そもそも、この|依頼人《マンダント》の素顔を私は知らない。
せっかくいいバーで、酒でもしばき倒しながら話そうと誘っているのに、
頑なに通信での会話しかしてくれない。
しかも最初に伝えられた依頼内容は、悪徳カジノの秘密を暴け。それだけだ。
大事なことは当日に、移動しながら話すとだけ言われた。
信用ならないやつだ。いざとなったら、依頼はバックレる。
《そうだったね、それでは依頼内容を話させてくれ...
|便利屋《ファクトトゥム》、今回君に依頼したのは悪徳カジノの秘密を暴く、という内容だったね?》
「ああ、それで?おれは重要な部分をまだ聞いていない」
《レイルシティのカジノといえば、レイルカジノしか無い。
察しがいい君なら、今向かっているだろう》
「もちろん、最近は勿体ぶる|依頼人《マンダント》が多いからな」
《それはすまないと思っているよ、だがこちらにも理由がある。
そして依頼の詳細だ。まず君は、レイルカジノの|最高責任者《オーナー》である
ドミニク・ベルクヴァインから、カジノの運営に関する書類の在り処を聞け》
「それだけか?なら簡単だな」
《おっと、まだある。ドミニク・ベルクヴァインの殺害もだ。
もちろんバレないように、だ。くれぐれもバレるんじゃないぞ》
「悪いが、レイルシティだとバレるなはバレろって意味だ。
......ドミニク・ベルクヴァインの殺害って言ったか?」
《ああ、彼はカジノでレイルシティの金の流れを変え、
経済的に大きく貢献した|救世主《ヒーロー》だ。だがそれは表の顔。
裏ではカジノで得た資金を秘密裏に使用し、残虐非道な人体実験を行っている》
「マジか、とんでもない男がいたもんだ」
《それでは、カジノのセキュリティについて話そう。
セキュリティレベルは6段階中の3、ゆるめではあるが警戒はできない。
特に正面玄関からの侵入は、武器類はすべて預かられる。だから裏口から...》
「|了解《オーケー》!おれは正面から行かせてもらう!」
《正気か?武器類無しでどうする?殺害も依頼のうちなんだぞ?》
「武器はカジノで見つければいい。それに最悪、無くても殺れる。
|腕と目《インプラント》さえあれば、大体のやつには勝てるだろ?」
《そうか、インプラント...レイルシティには、広く流通しているんだったか》
「何はともあれ、おれはおれのやり方でやらせてもらう。
気に入らないなら金はいらない。ただ、依頼は成功させると言っておこうか」
レイルカジノに着いた私は、先程言った通り正面玄関から堂々と入っていった。
そも、元から取り上げられる前提で来ているのだから、
武器なんて持ってきていない。
金属探知機なんかでボディチェックをされて、
身体の隅々をベタベタ触られた末、やっと通された。
カジノ中毒のジジイの身体を毎日触ってチェックするとは、
やつらもいい仕事してるもんだ。
そんな時にうら若い青年の身体を触らせてやったんだ、
機密情報はいただかせてもらう。
『Willkommen!当カジノへようこそいらっしゃいました!
Bitte genieße diesen Traum – nur für eine Nacht!』
陽気なアナウンスが、カジノ中に響き渡った。
それにしても、敗戦国の古臭い響きだ。
未だにドイツ語を使っているのか?
おっと、確かここの|最高責任者《オーナー》は混ぜ物じゃないドイツ人だったか。
それでも、今のレイルシティでドイツ語を使い続けるのはどうかと思う。
昔はここだって、ドイツ語が標準語だったが...
そんなことはどうでもいい。
今はどうやって|最高責任者《オーナー》に書類の在り処を聞き出すか、
そして、どうやって|最高責任者《オーナー》を殺すか...
その時、|依頼人《マンダント》からの通信が入った。
《|最高責任者《ターゲット》がどこにいるか分からない?そんな時は...
てってれーん!眼球インプラントだ!とりあえず、いつものナイトビジョンの感覚で...
その、ふん!ってやってくれないか?》
「|了解《オーケー》、ふん!」
《どう?見えるだろ、|最高責任者《ターゲット》の位置が》
「おお、すごいなこりゃ...|最高責任者《オーナー》の
身体の輪郭が光って見える。一体どうやった?」
《少しデータを送らせてもらっただけだ。
これで仕事もやりやすくなっただろう...期待しているよ、|便利屋《ファクトトゥム》》
そこで通信は終わった。
正直、過去最高レベルのバックアップ体制だ。
普通|依頼人《マンダント》どもは、私に任せきりで何もしない。
まあこちらが金をもらう立場である以上、文句は言えないが。
とりあえず、方向性は軽く決まった。
「あそこの|従業員《カジノスタッフ》に...ひとりで歩くのは危ないと伝えに行かなければ」
【キャラ解説】
・|便利屋《ファクトトゥム》
説明:治安が悪い町によく似合う、治安の悪い性格と言葉遣いが特徴の男性。
一人称は”私”。だが素の一人称を使うのは信頼が置ける相手のみで、
それ以外の初対面の相手や、信頼が置けない相手には”おれ”。
名前はちゃんとあるので、今後のストーリーで出す予定。
・|依頼人《マンダント》
説明:恐らくレイルシティの人間ではない。声は女性的だが、男性と推測。
一人称は”わたし”。話し方に、どこか胡散臭い雰囲気がある。
名前はちゃんとあるので、今後のストーリーで出す予定。
・ドミニク・ベルクヴァイン
説明:レイルカジノの|最高責任者《オーナー》。英雄と称えられる反面、
裏では人体実験に手を染める。純血のドイツ人。
爪の間が薬品臭いことでお馴染み。
【語録解説】
レイルシティ:夜の町。治安がすこぶる悪く、珍しいおくすりの売買も盛ん。
トリガーハッピー:銃の引き金をすぐ引きたがること。
また、「トリガーでハッピーされた」は、乱射されたという意。
|便利屋《ファクトトゥム》:ドイツ語で”便利屋”という意。キャラ名ではない。
|依頼人《マンダント》:ドイツ語で”依頼人”という意。キャラ名ではない。
レイルカジノ:レイルシティ唯一のカジノであり、その規模はかなり大きめ。
今まで金を使うのを勿体ぶってたジジイたちは、こぞってここに金を落とした。
インプラント:身体の一部を機械に置き換えること。要するに、サイボーグ。
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作者の一言:淡本中学校の息抜きにゆるゆる更新予定。
ずっと書きたかったんだよね。当て字大量、サイバーな世界観、
アメリカンな言葉回しと洋画のような雰囲気の文章が。
2.トリガー・ハッピー
※本作は、サイバーパンク2077に多大な影響を受けています。
「あそこの|従業員《カジノスタッフ》に...ひとりで歩くのは危ないと伝えに行かなければ」
持ち場を離れ、ひとりでふらふらと歩いている|従業員《カジノスタッフ》の背後に回り、
首元に腕を伸ばす。誰も見ていない...今ならやれる。
思いっきり力を込め、|従業員《カジノスタッフ》の首を締め上げる。
するとその瞬間、|依頼人《マンダント》から通信が入った。
今いいところだというのに、なんの用事だ?
《何をしているんだッ|便利屋《ファクトトゥム》!非ターゲット殺害はあまりしてほしくない!
ドミニク・ベルクヴァインは用心深い御仁だ!
遺体が見つかりでもしたら大騒ぎ!さっさと逃げて姿を潜めてしまう!》
「うるせぇな、少し服を貸してもらうだけだ。気絶で済ませるよ。
|従業員《カジノスタッフ》の肩書きが欲しいんだ」
《確かに、|従業員《カジノスタッフ》であれば動き回れる範囲は増えるか...
だが|最高責任者《ターゲット》がいる最上フロアは、|従業員《カジノスタッフ》でも
不法侵入扱いになる。侵入経路は考えておいてくれ》
「|了解《オーケー》、善処するよ」
《善処じゃないだろ!これは必須事項だ!頼むから!》
まあ、要は突っ走ればいいということだ。
最上フロアには、専属の警備員がいるはずだ。
そいつの身ぐるみさえ剥がせれば、あとは簡単。
そう、今さっき剥がした服を着ながら考える。
よし...これで私は今から|従業員《カジノスタッフ》だ。従業員用通路も使える。
とりあえず、まずはこの肩書きでしか行けない部分から攻めよう。
そう考え、私はまずセキュリティルームへ行くことにした。
《一応聞いておくが、なぜセキュリティルームに?》
「上等な得物が見つかるかもしれないからな。
手持ち無沙汰じゃ、殺れる命も殺れないだろ?」
《いい武器が見つかったからって、ドンパチやるんじゃないぞ。
今わたしは猛烈に心配しているんだ、君が静かに任務を遂行できるのか》
「はっ!最初からそんなもの期待されたら困るんだよ。
おれは素人だ、|暗殺者《ヒットマン》じゃない。それに、全員殺せば静かになる...簡単な話だ」
《よせ|便利屋《ファクトトゥム》、セキュリティレベル3とはいえ、
ここにいる警備たちはみな手練れだ。お前が素人だというならやめておけ!》
うるさいやつだ...そう思い、一旦通信をミュートすることにした。
私には私のやり方がある。邪魔はされたくない。
セキュリティルームに着いたが...
これはサイバー的なセキュリティだったか。
銃火器類などの、武器になりそうなものは置いていなかった。
だが、ここにあるのは...
|刺突武器《ドライバー》ではないか!普通に刺突するのも乙だが、
これを投擲すれば、|最高責任者《ターゲット》の息の根をサクッと止められるだろう。
|投擲物《ドライバー》はひとつ、|いい的《ターゲット》もひとつ...
この時点で考えることは皆同じだが、早まったりはしない。
もっといい殺り方があるはずだ。
私は便利屋だ、その時が来るまでは...まだ|乱闘《ハッピー》してはいけない。
とりあえず、もらえるものはもらって行くが。
そして、セキュリティルームを後にしようとした瞬間だった...
下着一枚で、男がセキュリティルームに入ってきた。
まずい...私が身ぐるみを剥がした男だ。
ここは見破られないうちに、さっさとオサラバするべきだ。
「ははーお前昨日飲みすぎたかー?猥褻物陳列だぞまったくもう...
とりあえず服着ろよ?おっといけねぇ!午後休入りまぁす!!」
「いやそれがさぁ、誰かに服を...」
なにか言っているのが聞こえた気がするが、構っていられない。
バレたのかバレていないのか分からない...だが、こうなったらもうやるしかない。
懐のハンドガンに手を伸ばした。
ああ、一応|依頼人《マンダント》には何をするのか伝えておくべきか。
そう思い、通信のミュートを解除した。
「もしもし|依頼人《マンダント》、恐らく変装がバレた。
もう後がないらしいから、もう|おれの好きに《トリガーでハッピー》していいか?」
《|便利屋《ファクトトゥム》!頼むからそういう衝動は抑えてくれ!
万が一バレたらどうする?ドミニク・ベルクヴァインは逃げてしまうだろ?
それを探すのは私の仕事なんだ!こっちの身にもなってくれ!》
「だーかーらー!もうバレたからドンパチ暴れてもいいだろって話さ!
どうせこのままだと|臆病者《ドミニク》は逃げちまうだろ?
だから、逃げる前に全部済ませるっつってんだ!」
《...分かった。だが、逃げられたら承知しないぞ?》
「分かってる、こう見えて|追いかけっこ《ハンティング》は得意なんだ」
そもそも、あのまま変装を続けていても
最上フロアには入れなかったわけで、結局は同じ話だ。
ドミニク・ベルクヴァインが逃げないうちに、すべて終わらせる。
まずは最上フロアにどう行くかだが...
「...エレベーターで最上フロアに行けたりしないか?」
《行けるけど...すごく間抜けだと思うよ。
もっとカッコよく行かないかい?ほら、|通気口《ダクト》とかあるよ?》
「暗くて狭い場所は嫌なんだよ!それに、間抜けでもいいだろ?
何勘違いしてるか知らんが、おれは|暗殺者《ヒットマン》じゃないんだよ」
《勘違いはしてないさ...だが、警備員に待ち構えられていたらどうする?
お前は蜂の巣にされるんだぞ?》
「それなら心配ないさ、出待ちなんて脅威にもならん」
そう言いながら、私はエレベーターのボタンを押す。
すぐ行こうと思ったが、誰かが走ってくる音が聞こえた。
私も鬼じゃない...少し待ってやろう。
「あっ、失礼します」
「...!」
乗り込んできたのは、下着一枚の男。
なんで着いてくるんだ、私が身ぐるみ剥がしたやつ!
気まずい空気が流れながらも、私はなんとか場を盛り上げようとする。
だが、ここで本格的にバレてしまったら終わりだ...
相手は武器を持っていないとはいえ、そこそこの強さはあるはずだ。
こいつは...右腕と、右足。そして恐らく循環器にインプラントが施されている。
「...えぇっと、最近暑いっすよねー!
もうめちゃくちゃ蒸し暑いっすよねー!整いますよねー!」
「俺を殺す算段が?」
「...あー、あはは......それも整うっすね...
あっ、もしかして裸なのって、暑いからじゃなくてご趣味だったりします?」
「お前に剥がれたんだろうがあああああ!!!!」
「クソッタレ!!バレてやがったか!!」
ハンドガンを取り出し、すぐに構える。
そして、|引き金《トリガー》に手をかけた。
「あばよ変態!!」
【語録解説】
セキュリティルーム:物理の方のセキュリティの時もあるし、
サイバー的なセキュリティの時もあるよね。
|刺突武器《ドライバー》:万能。投げたり、マスターキー(物理)としても使える。
血がぶしゃあってなるのが難点。
|いい的《ターゲット》:え?所詮動く的でしょ?
|乱闘《ハッピー》:この世で最も愚かな行為。
話し合いなんてそんな野蛮な...ここは穏便に暴力で...