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2.トリガー・ハッピー
※本作は、サイバーパンク2077に多大な影響を受けています。
「あそこの|従業員《カジノスタッフ》に...ひとりで歩くのは危ないと伝えに行かなければ」
持ち場を離れ、ひとりでふらふらと歩いている|従業員《カジノスタッフ》の背後に回り、
首元に腕を伸ばす。誰も見ていない...今ならやれる。
思いっきり力を込め、|従業員《カジノスタッフ》の首を締め上げる。
するとその瞬間、|依頼人《マンダント》から通信が入った。
今いいところだというのに、なんの用事だ?
《何をしているんだッ|便利屋《ファクトトゥム》!非ターゲット殺害はあまりしてほしくない!
ドミニク・ベルクヴァインは用心深い御仁だ!
遺体が見つかりでもしたら大騒ぎ!さっさと逃げて姿を潜めてしまう!》
「うるせぇな、少し服を貸してもらうだけだ。気絶で済ませるよ。
|従業員《カジノスタッフ》の肩書きが欲しいんだ」
《確かに、|従業員《カジノスタッフ》であれば動き回れる範囲は増えるか...
だが|最高責任者《ターゲット》がいる最上フロアは、|従業員《カジノスタッフ》でも
不法侵入扱いになる。侵入経路は考えておいてくれ》
「|了解《オーケー》、善処するよ」
《善処じゃないだろ!これは必須事項だ!頼むから!》
まあ、要は突っ走ればいいということだ。
最上フロアには、専属の警備員がいるはずだ。
そいつの身ぐるみさえ剥がせれば、あとは簡単。
そう、今さっき剥がした服を着ながら考える。
よし...これで私は今から|従業員《カジノスタッフ》だ。従業員用通路も使える。
とりあえず、まずはこの肩書きでしか行けない部分から攻めよう。
そう考え、私はまずセキュリティルームへ行くことにした。
《一応聞いておくが、なぜセキュリティルームに?》
「上等な得物が見つかるかもしれないからな。
手持ち無沙汰じゃ、殺れる命も殺れないだろ?」
《いい武器が見つかったからって、ドンパチやるんじゃないぞ。
今わたしは猛烈に心配しているんだ、君が静かに任務を遂行できるのか》
「はっ!最初からそんなもの期待されたら困るんだよ。
おれは素人だ、|暗殺者《ヒットマン》じゃない。それに、全員殺せば静かになる...簡単な話だ」
《よせ|便利屋《ファクトトゥム》、セキュリティレベル3とはいえ、
ここにいる警備たちはみな手練れだ。お前が素人だというならやめておけ!》
うるさいやつだ...そう思い、一旦通信をミュートすることにした。
私には私のやり方がある。邪魔はされたくない。
セキュリティルームに着いたが...
これはサイバー的なセキュリティだったか。
銃火器類などの、武器になりそうなものは置いていなかった。
だが、ここにあるのは...
|刺突武器《ドライバー》ではないか!普通に刺突するのも乙だが、
これを投擲すれば、|最高責任者《ターゲット》の息の根をサクッと止められるだろう。
|投擲物《ドライバー》はひとつ、|いい的《ターゲット》もひとつ...
この時点で考えることは皆同じだが、早まったりはしない。
もっといい殺り方があるはずだ。
私は便利屋だ、その時が来るまでは...まだ|乱闘《ハッピー》してはいけない。
とりあえず、もらえるものはもらって行くが。
そして、セキュリティルームを後にしようとした瞬間だった...
下着一枚で、男がセキュリティルームに入ってきた。
まずい...私が身ぐるみを剥がした男だ。
ここは見破られないうちに、さっさとオサラバするべきだ。
「ははーお前昨日飲みすぎたかー?猥褻物陳列だぞまったくもう...
とりあえず服着ろよ?おっといけねぇ!午後休入りまぁす!!」
「いやそれがさぁ、誰かに服を...」
なにか言っているのが聞こえた気がするが、構っていられない。
バレたのかバレていないのか分からない...だが、こうなったらもうやるしかない。
懐のハンドガンに手を伸ばした。
ああ、一応|依頼人《マンダント》には何をするのか伝えておくべきか。
そう思い、通信のミュートを解除した。
「もしもし|依頼人《マンダント》、恐らく変装がバレた。
もう後がないらしいから、もう|おれの好きに《トリガーでハッピー》していいか?」
《|便利屋《ファクトトゥム》!頼むからそういう衝動は抑えてくれ!
万が一バレたらどうする?ドミニク・ベルクヴァインは逃げてしまうだろ?
それを探すのは私の仕事なんだ!こっちの身にもなってくれ!》
「だーかーらー!もうバレたからドンパチ暴れてもいいだろって話さ!
どうせこのままだと|臆病者《ドミニク》は逃げちまうだろ?
だから、逃げる前に全部済ませるっつってんだ!」
《...分かった。だが、逃げられたら承知しないぞ?》
「分かってる、こう見えて|追いかけっこ《ハンティング》は得意なんだ」
そもそも、あのまま変装を続けていても
最上フロアには入れなかったわけで、結局は同じ話だ。
ドミニク・ベルクヴァインが逃げないうちに、すべて終わらせる。
まずは最上フロアにどう行くかだが...
「...エレベーターで最上フロアに行けたりしないか?」
《行けるけど...すごく間抜けだと思うよ。
もっとカッコよく行かないかい?ほら、|通気口《ダクト》とかあるよ?》
「暗くて狭い場所は嫌なんだよ!それに、間抜けでもいいだろ?
何勘違いしてるか知らんが、おれは|暗殺者《ヒットマン》じゃないんだよ」
《勘違いはしてないさ...だが、警備員に待ち構えられていたらどうする?
お前は蜂の巣にされるんだぞ?》
「それなら心配ないさ、出待ちなんて脅威にもならん」
そう言いながら、私はエレベーターのボタンを押す。
すぐ行こうと思ったが、誰かが走ってくる音が聞こえた。
私も鬼じゃない...少し待ってやろう。
「あっ、失礼します」
「...!」
乗り込んできたのは、下着一枚の男。
なんで着いてくるんだ、私が身ぐるみ剥がしたやつ!
気まずい空気が流れながらも、私はなんとか場を盛り上げようとする。
だが、ここで本格的にバレてしまったら終わりだ...
相手は武器を持っていないとはいえ、そこそこの強さはあるはずだ。
こいつは...右腕と、右足。そして恐らく循環器にインプラントが施されている。
「...えぇっと、最近暑いっすよねー!
もうめちゃくちゃ蒸し暑いっすよねー!整いますよねー!」
「俺を殺す算段が?」
「...あー、あはは......それも整うっすね...
あっ、もしかして裸なのって、暑いからじゃなくてご趣味だったりします?」
「お前に剥がれたんだろうがあああああ!!!!」
「クソッタレ!!バレてやがったか!!」
ハンドガンを取り出し、すぐに構える。
そして、|引き金《トリガー》に手をかけた。
「あばよ変態!!」
【語録解説】
セキュリティルーム:物理の方のセキュリティの時もあるし、
サイバー的なセキュリティの時もあるよね。
|刺突武器《ドライバー》:万能。投げたり、マスターキー(物理)としても使える。
血がぶしゃあってなるのが難点。
|いい的《ターゲット》:え?所詮動く的でしょ?
|乱闘《ハッピー》:この世で最も愚かな行為。
話し合いなんてそんな野蛮な...ここは穏便に暴力で...