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目次
「非業の死」演出家
「門脇与一が体現している全てが好きなだけで、
門脇与一個人には特に、思わないなー何も。」
「んー…副産物かな!」
わたしから見たとき!てだけどねーと、小さく後付けするようにして、手元の蜂蜜入りのアイスカフェラテをストローで軽く混ぜながら伏し目がちに彼女は言った。
カラカラと氷とグラスがぶつかりながら混ざっていくそれを光のない黒い瞳でぼーっと見つめるその姿に、悍ましさすら覚えた。
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僕は門脇与一の創る物語が大好きだ。
悲劇も喜劇も彼の手掛けた全ての作品においてその才能、技術、美しく昇華され、彼自身の『魅惑し、それを強烈に響かせる』という遠い昔読んだインタビュー記事の彼の活動理念の言葉は、今では僕自身の目指すべき頂点となるほどに。
新作発表会公式イベント 「門脇与一が語る異質」
門脇与一:コメント全文
表現、発表、提示、全てにおいて己の深い根底を開示する時、それを見た見知らぬ誰かは肯定するし、もしくは否定する。あるいは私たち自身がその彼らを肯定し、否定する立場にもなる。
私は常に否定されてきた。時には誰もが興味すら持たなかった。私自身、自分で作ったモノは願望に近く、希望であり災厄なんだ。
誰もが否定している中で、私もそれを否定している。あってはならない作品達しか私が作ったものにはない。だから、誰にも知られないよう気づかれないようひそかに狂気、魅惑、虚、を忍ばせるんだ。
みんな、表立っているものにばかり目がいくから気づかない。あるいは気づいているのかもしれない。でもそれはとても依存性の高いもので、すでに魅了されている者たちには意味のない現実なんだ。
私はね、面白くて怖くて美しい。そして、理解と欲を掻き立てる演出さえ備われば、それは名作になり得るという事を言っているんですよ。
素晴らしいでしょう、プロセスは単純なんです。
それまで"が"ですが。
要するに、否定させない努力と肯定させ得る技量があれば何においても困ることはほとんどないという持論ですよ。あくまでね!
カルチャーショック
続
#1
https://tanpen.net/novel/fc3e83a9-ecd6-40bd-ac08-d95e84ec9a1c/
美しい男が突然に語った。
「わかりやすい形容詞に感動できるお前らの低脳具合が羨ましいよ」
その男、もとい|利巧佑二《りこうゆうじ》の第一印象は、あまりにも美しい骨格に凛々しい目つきに形の整った眉からやけに神経質そうだと思った。それは美麗というより整っているとの表現が合致しているようだったからだ。
「その言葉、あの音、この絵がお前の思想なのか?」
利巧佑二の容姿や態度は、まるで今までの人生で自分を卑下する必要は一度もなかった。と鼻高々に物語っているようだった。
「お前は表現者を投影する事で、自己形成する馬鹿なのか」
そうか。この男はわからないのだ。わざわざ誰かが表現したり理解したり気づいて欲しくて生み出した作品のそれぞれに相応しい価値を。だからそんな言葉がいえるんだ。この男は信じている。誰もが自身と同じように、表現者になれるのだと。
純粋に生きていてその思考に行き着いたのならそれはもはや屑だ。
「っ…………素晴らしいな」
「凡そのものだ!」
やかましい。し、腹立たしい。ここまで品のない高圧的な奴の言葉ほど神経を逆撫でするものはない。
こういう阿呆には言葉で、意思で伝えるしかないのだ。
「何か気に障ったのなら、申し訳ないな。」
「だが、………僕自身、君のその偏屈な思想には微塵も興味がないんだよ」
先ほどまで饒舌に話していた男は、黙りこくって動きもしない。
相当ショックのようだな。
無様で大変、哀れな姿だ。
だがどうしてか、滑稽のようには思えない。
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美しくないものはこの宇宙にあるはずがない。
これほど、あたたかで残酷な現実はないだろう。
だがそれは、普遍的な虚実でも事実でもない。
強かで華やかで可憐。それは大方美しいとされるものたちだ。だけど、これらが醜い。汚いとされr
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デリート、デリート、デリート、デリート…
つまらない文だった。
何も魅力がない。つまらない、つまらない、価値のない文だ。ああ、僕はどうしたら門脇のようになれるんだ。どうしたらあのような頭の人間になれるんだ。
憎らしい、あの男の言葉はあの男だから言えた言葉だ。
反吐が出る。僕も所詮、羨望しているのだった。
本当は気づいてる。門脇と男の揺るがない表現者としてのプライドとその作品の説得力のルーツについて。
あの男は、世の中の人が全員表現できる側の人だと思っていやがる。ふざけんなよ、お前らみたいな傑物と俺たちみたいな底辺の端くれの共通点なんかあるはずがないんだ。ああおかしい。おかしいんだ。僕はあの人たちと同じ土俵にも立てていないのに。ああ、僕はなんでこんな事が好きなんだ。
ああ、憎い。こんな時にも手を差し伸べてくれるのは門脇与一の作品なんだ。
〈利巧佑二の胸の内〉
「あの意志の弱さ、視野の狭さ、理解力のなさで門脇与一を目指すだと……?」
「馬鹿げている」
そうだ。俺は俺自身の思想や美学については語っていない。俺のそれは俺以外に明け渡す気はさらさらない。
「馬鹿だ。あいつは」
「あいつは舐めている。あいつは俺をこきおろした!!」
屈辱なのだろうか。よくわからないが虚しくてやるせない。悔しい、理解されなかった。興味ももたれなった。そう、自分の生み出した作品にも目もくれない者たちに対して、いつも俺は恨み言を頭の中で並べながら見返そうとただ1人で筆を走らせる。食い潰してやる。あいつら全員、俺の作品に骨の髄まで魅了させて、灰にしてやる。っていつもなら、創作の燃料タンクにぐちゃぐちゃにして放り込んでいた。でも、でも、今回のは違う。
明らかに違う。悔しくもない。傷つきはしただろうが、ああ……そうか。俺はあいつに期待していたんだ。あいつと俺は同じ地平線の上で生きてる。そうどこかで思い違いをしていたらしい。
ああ、そうか
これは失望だ
「表現者と代弁者は別物だろう………」
この言葉もあいつに届いてしまえば、酷く傷つけるだろう。その程度の愛情なのか。ああ、あいつはそれまでなんだ………
実体
寝返りをうてば、喉から吐瀉物が口の中にあがってきた。
昨夜は吐き気がひどくて気持ちが悪かった。帰りの電車の中で胸の居どころが悪かった。
急いでベッドから起き上がり、トイレへと駆け込んだ。便座をあげて、ごく少量だが吐き出した。吐き出した後でも酸っぱくて刺激物のような酷い味が口内にひろがる。熱くて妙な臭いがした。
原因を頭の中で探る。日に日に、電車に乗るのが辛くなっていった。多分、乗り物酔いと臭いが原因だろうと適当に片付けた。
トイレを後にしてみると、なんだか食欲が湧いてきた。
「唐揚げが食べたい。」
不思議なくらいに吐き気なんぞはどこにもなかった。
だが、時刻は午前1時4分。唐揚げなど、この家の中にはない。仕方がないので、冷凍した米を電子レンジで温めてふりかけをかけて食べることとした。
「うん、うまい」
一昨日使った茶碗を昨日の昼間と今、使う始末だ。
不衛生そのもの。
「あ」
吐いた後に口をゆすぐのを忘れていた。
汚いな。そう思ってからとりあえずスマホで流したドラマを見ながら片手間に食べ続けた。ふりかけのかからなかった部分の米だけが残ったので、ひとまず寝転ぶ。
「近頃のりばっか、食べてたからか?」
自問自答をした所で俺の胃は何も答えてはくれない。
サザエさんのあの愉快なBGMが脳内で永遠、繰り返されている。
ベッドには、ずっと眠たそうにしていた兄弟がぐっすりと熟睡していた。
リビングで薄い掛け布団にくるまっているこの人は朝になったらせかせかと身支度や家事やらをして、働きに出ていくだろう。
かという私は、なんなんだ。
ろくでもないな。
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今日は来なくても良かった気がする。無駄に傷ついた日のように思えた。
ああ、いつも思う。この帰り道を歩くたびに。
私の双子が俺になりすまして、私を殺していたって結末にならないか、と。
日常で何もかもがうまくいかなかった日は特にそう思う。
うまくいかなかったのは俺じゃない奴のせいであってほしかった。
物悲しいな。
近頃は人の気持ちがわからなくなった。コミュニケーション的な意味合いでも、こうして物語を描く上でもだ。グラデーションのような波も掴めず、ただ日々に翻弄されていくしかなくなってきていた。
私は既に死んだのだろうか。
「ハッ、ついに門脇与一も幕引きか………」