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実体
寝返りをうてば、喉から吐瀉物が口の中にあがってきた。
昨夜は吐き気がひどくて気持ちが悪かった。帰りの電車の中で胸の居どころが悪かった。
急いでベッドから起き上がり、トイレへと駆け込んだ。便座をあげて、ごく少量だが吐き出した。吐き出した後でも酸っぱくて刺激物のような酷い味が口内にひろがる。熱くて妙な臭いがした。
原因を頭の中で探る。日に日に、電車に乗るのが辛くなっていった。多分、乗り物酔いと臭いが原因だろうと適当に片付けた。
トイレを後にしてみると、なんだか食欲が湧いてきた。
「唐揚げが食べたい。」
不思議なくらいに吐き気なんぞはどこにもなかった。
だが、時刻は午前1時4分。唐揚げなど、この家の中にはない。仕方がないので、冷凍した米を電子レンジで温めてふりかけをかけて食べることとした。
「うん、うまい」
一昨日使った茶碗を昨日の昼間と今、使う始末だ。
不衛生そのもの。
「あ」
吐いた後に口をゆすぐのを忘れていた。
汚いな。そう思ってからとりあえずスマホで流したドラマを見ながら片手間に食べ続けた。ふりかけのかからなかった部分の米だけが残ったので、ひとまず寝転ぶ。
「近頃のりばっか、食べてたからか?」
自問自答をした所で俺の胃は何も答えてはくれない。
サザエさんのあの愉快なBGMが脳内で永遠、繰り返されている。
ベッドには、ずっと眠たそうにしていた兄弟がぐっすりと熟睡していた。
リビングで薄い掛け布団にくるまっているこの人は朝になったらせかせかと身支度や家事やらをして、働きに出ていくだろう。
かという私は、なんなんだ。
ろくでもないな。
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今日は来なくても良かった気がする。無駄に傷ついた日のように思えた。
ああ、いつも思う。この帰り道を歩くたびに。
私の双子が俺になりすまして、私を殺していたって結末にならないか、と。
日常で何もかもがうまくいかなかった日は特にそう思う。
うまくいかなかったのは俺じゃない奴のせいであってほしかった。
物悲しいな。
近頃は人の気持ちがわからなくなった。コミュニケーション的な意味合いでも、こうして物語を描く上でもだ。グラデーションのような波も掴めず、ただ日々に翻弄されていくしかなくなってきていた。
私は既に死んだのだろうか。
「ハッ、ついに門脇与一も幕引きか………」