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目次
転生まで、あと365日。#1 転生なんてしたくない!?
私、死ねたよ。
いうとおりにしたよ。
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『井上若葉 死因:`自殺` 享年:15歳』
気が付いたら、そう書かれたカードを首からぶら下げていた。霧の中、私以外の人影は見当たらない。
他にも不思議なことはたくさんあった。
ジャージを着ていたのに、今着ているのはワンピースだということ。
記憶が混沌としていて、さっきまで何をしていたのかさえ忘れている。
しかし、ここがいつもの町じゃないことだけはわかった、
そこで大体、感づいた。たぶんここは、天国だ、って。
「私、死んだんだ…!」
私……、井上若葉は、自分でもよくわからないが、ぱぁぁっと目を輝かせた。
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「え、ここも立ち入り禁止ですか…!?」
「ごめんねっ、ごめんね~!劇場は入っちゃダメなんだ~!」
白髪で、男子の制服のようなズボンをはいた女の子に止められた。たぶん私と同い年くらいかな…?
ていうか、ひどい!
天国に行ってから二日。たくさんのテーマパークなどがあって、地面が雲で覆われてることと、無料で何もかもができる以外はほとんど地上の街と同じだ。
……でも、私はあることが理由でほとんどの施設が出入り禁止みたいなんだ。
「それはさぁ、自殺者だからねぇ~……」その女の子は当然のように、諭すような口調で私に言う。
「私、自殺じゃなくて…!」
言いかけて、慌てて口を噤む。こんなこと言ったらもっとひどい目に遭うかもしれない…!
仕方なくその女の子に背を向けて、『寄宿舎』と書かれた看板を目がけて歩き出した。
赤い文字で『死因:自殺』と書かれた名札が視界に入るたたび、投げ出したくなる。
この文字のせいで自由が利かない。
それに私、自殺じゃない!
総勢200名が暮らす寄宿舎に帰ると、よっ、新入り~みたいなノリで声をかけてくる子がたくさんいる。
しかし名札の赤い文字を見た途端、適当に話をこじらしてどこかに行ってしまう。
やっぱり自殺者は浮いてしまうみたい、だ。
……そりゃそうだよね…。生きたいのに死んだ人がたくさんいる中自殺だなんて。
寄宿舎っていうのは、亡くなった人が転生までの間に暮らす施設。
そんな、転生までたくさんの時間を過ごす中でこれじゃあ、後々大変だなぁ…。
なるべく目立たないようにしながら、慎重に私の部屋がある二階に上る。
「なんかこの感じ…、生前にもあったようなぁ……」
そんなことを思いながら、すっかり見慣れた自分の部屋のガラスのドアを開ける。
その時。
私しかいないはずの部屋の白い絨毯に、黒髪をなびかせている女の子がちょこんと座っていた。
「不法侵入者っ!?」
え、というかどうやって入ったの⁉
私の大声にその女の子は振り返った。
その子はぱっちりとした目を大きく見開いてから、優しく微笑んだ。
不法侵入者に微笑み返されても困るんですが!?
「私はかのんって言うんだ。12歳だよ」「わ、私は若葉……っ。中3…。」
反射的に名前を言ってしまった!その子……、かのんちゃんは続けた。「私ね、若葉ちゃんの見張り役を任されたんだ」
見張り…役…?
「いやなんで、」
「ってことでよろしくね!」
かわいらしい顔でそう言われ、何も言い返せない。
かわいいってずるい!
「……うん、よろしくね」
見張り役っていうのはやっぱり納得いかないけど…。自殺者立ち入り禁止がある世界なんだから見張り役っていうのもあるのかな…。
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『転生まであと365日』
「えっ」
突然壁に掛けられている日めくりカレンダーの『30』という数字の上に現れた文章にびっくりしてしまう。
「え……?は…?」
「つまり、転生まであと365日ってことだね~」
う、うん!?
私も日本語読めないわけじゃないからそんなことはわかるんだけど…、365日!?一年後!?
するとかのんちゃんは不思議そうに私の顔を覗き込む。
「え、生まれ変わるの嫌なの?」
「嫌じゃ無いけどさ…、生きるってことでしょ…?」
「生きるの嫌なの?」
そういわれると…。「嫌ってわけじゃないけど…。大事な、約束があって」
言葉を濁らせたら、かのんちゃんは意外にも追及してこなくなった。
かのんちゃんは急に真面目な顔になり、
「転生したら会いたい人っている?」
と聞いてきた。
「……急にどうしたんですか、かのんちゃん……」
「私はいるの」
その真剣さに圧倒されちゃう。
やっぱりかのんちゃん美人だよ…。
「……私もいる」
勝手にそんな言葉が出てしまった。
でも本当に、いる気がするんだ。でも、生きちゃダメな気がして…、なぜだかはわからないけど、そこが少し引っかかる。
一面が眩しいくらい白で覆われた部屋で、私に一番眩しい笑顔を見せてくれるかのんちゃん。
「転生するときは、一緒に転生しよ……」「若葉ちゃん、言われなくてもそうするって!」
私、この子のためなら何でもできるーーー!
そんな気持ちで胸がいっぱいになった。
転生まで、あと365日。 #2 ふたりの死因は
「ああ、転生時計のこと?」
転生…時計…?
泉のほとりの近くで、日めくりカレンダーに表示された数字のことを昨日の白髪の作業員の女の人に聞いてみた。
どうやらあの『365日』という表示、、『転生時計』っていうらしいんだ。
そこにかのんちゃんがひょっこり顔を出す。
「ねえねえミレイさんミレイさん、天国でどんなお仕事してるの⁉」
「かのんちゃんっ!?」
そこにかのんちゃんがひょっこり顔を出す。
いきなりの登場に腰を抜かしつつも、私はミレイさん……、白髪の作業員さんの名前……の言葉に耳を傾ける。
だってそれ、私も知りたい!
「いやぁ~、せいぜい雑用係だからさぁ~!」と、ミレイさんは答える。
え、案外地味!
「もっとすごいことやってるかと思……」
そう言おうとしたとき風が吹き、ミレイさんの髪がふわりと揺れた。
「かのんちゃんこれ落ちたよ!」
そうしてミレイさんは、かのんちゃんに名札を手渡した。
そういえばかのんちゃんの名札見てなかったなと思い、ちらっと見てみると、死因の欄に、衝撃的なことが書かれていた。
『放火殺人』
その四文字を二度見した。だって、殺人事件の被害者なんて。
かのんちゃんは私の視線に気づいてないようで、ミレイさんに相変わらず話しかけている。
かのんちゃん、生きたくても生きれなかった立場だったのに、勘違いだろうと名札に『自殺』と書かれている私と仲良くしてくれて…。
私は下唇をかんだ。そして覚悟を決めて、かのんちゃんに言った。
「こんな私と仲良くしてくれて、ありがとう!」
---
「え、いきなり…?」
かのんちゃんはぽかんとした声を漏らす。
そしてミレイさんは突然「お二人さん、ラブラブだね~?」といなくなってしまった。
え!?
ミレイさん、そんなんじゃなくて!
そしてかのんちゃんに目を向ける。「だ、だって、自殺、って書いてある私と、仲良く……。」
「……そんなことないよ。若葉ちゃんだから、なんだからーー」
「『わかばちゃんだから』…?」
困惑しておうむ返しに聞き返す。
でもかのんちゃんはそのことには返事をしてくれず、代わりにこんなことを話し始めた。
「…………私、大好きだった子に、放火で殺されちゃったの」
……大好きだった子、に?
なんで?
「すごく大好きな子がいて、その子、火薬を扱うのがすごく上手で…。尊敬、してたんだ。……その火薬で殺されるとは思ってもいなかったけど……。」
「大好きだった子に!?」
私の勢いに圧倒されたのか、「う、うん」と返事をしながらかのんちゃんは私の言葉に耳を傾ける。
「……ほんとはね、自殺じゃないの。私も、大好きな子に`殺された`の。」
思わず全部言ってしまった。
私…、施設育ちで、そんなとき、仲良くなった子がいて。
私、その子のことが本当に大好きだった…。まるで今の、かのんちゃんのように。
しかし、ある日突然その子に言われたんだ。「ね、死んでよ」って。
その子は笑ってた。まるで、『一緒に遊ぼう』というような表情で。
私はその子が大好きだった。大好きだから、文字通り、なんでも、聞いてあげたかったんだ。
気が付いたらマンションから飛び降りてた。
そこからはよく覚えていない…………。
「……それって、『花空町マンション放火事件』のこと?7月28日に起きた」
「ミレイさん」
ミレイさんは「うん、話の内容だとたぶんそれだと思う。……それでさ、こんなこと言っちゃ悪いけど……………」
「え、なんでそれ知ってるの⁉」
かのんちゃんがミレイさんの話にかぶせるようにして尋ねた。
……確かに、なんで人間の世界の事件を知ってるんだろう。
ミレイさんは当たり前のように「ああ、私現役の人間だよ!」といった、
「え、人間…?」
なんで生身の人間が天国にいるの⁉
「人間界に天国で働く人を育てるところがところがあるんだよ~!」
え、そうなんだ!?
ミレイさんは身体を乗り出していった。
「そういえばさ、二人の死亡日時ってほぼ同じだよね、7月28日の深夜。しかも二人とも出身同じらしいね?」
「「え」」
私とかのんちゃんは同時に声を上げた。
だってそれって………。
「もしかして、犯人同じの可能性ってない…?」
かのんちゃんが小声で告げた。
ミレイさんはうーんと考え込むように腕を組み、「可能性としては十分あり得るわね。ここまでマッチしてるんだ」
「それなら!三人で、犯人探してみませんか…!?」
言ってからしまったと思った。
みんなから嫌われ者の私がやすやすと!?
しかし二人は、「やってみよう!」「人間界の事なら任せて!」
と、快く受け入れてくれた。
「私もかのんちゃんみたいないい子がどうして死ななきゃいけなかったか、し、知りたい!」
私は必死に告げた。
………。
わ、私今めっちゃキモいこと言ってる!?
でもそれが本心だったんだ。
「よしっ、れっつらご~!」
かのんちゃんが叫び、私は決意した。
突き止めるんだ。かのんちゃんを、殺した私の大嫌いな犯人を!
湖のほとりから、街へと歩き出した。