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目次
濡れた髪のあの子と僕 前編
それはプール終わりのことだった。僕はあの子に生まれて初めての感情を抱いた。
濡れた髪、曇天を見つめる憂いを含んだ瞳、机を叩く細い指、それは一年に数回も見れない姿だった。その姿に、僕は見惚れてしまっていた。あの子が机を叩く弱々しい音は教室に響き続ける。初めて見る姿ではないのに、何かがあったわけではないのに、そんなことを考えていた。それは、気を逸らしているふりをしていた。だが、そんな抵抗も無駄に終わり、依然、僕はあの子を見つめていた。
あの子がふと、こっちを見た。僕はすぐに目を逸らした。しかし、あの子は首を傾げて、こちらに歩いてきた。その足音が時計からの秒針の音と同期する。秒針の音がどんどん近づいてくる。普段は何気ないその動作だがいつもとは違うあの子が歩いて来ると考えると不思議と胸がドキドキした。心拍数が上がり心臓が爆発しそうだった。すぐそばに来た彼女の髪からはほのかに塩素の匂いがした。
『どうしたの?』
そんな一言を投げられた、答えはすぐに出た、だが、答えられなかった。
本当に転載ではありません!