編集者:水主 透
赤い目を持つ嘉神楊雅(かがみようが)は村に忌み嫌われている。
しかし幼馴染みの紫門清矢(さいもんせいや)だけは、変わらず隣にいてくれた。
そんな楊雅は五十年に一度の式年祭で、男にも拘わらず【巫女】に選ばれた。
忌み子を排除するためか、あるいは神の気紛れか。
積年の憎悪と執着が、青年を壊していく――
辺境の因習村から始まる和風エロホラー。
作者の性癖にのみ配慮しています。
※性描写の有無に関わらず全話R18表記です。
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目次
序
鳶の鳴き声が晴天を貫く。
一陣の風によって揺れる枝葉の音は、さながら人間の動揺を真似ているかのようだ。草の禿げた広場の中心では壺が転がっており、その周りを村人が取り囲むようにして立っている。
彼らの顔には動揺とも安堵ともつかない表情を貼り付け、右へ左へ|か《・》|ぶ《・》|り《・》を振って隣り合う村人と視線を交わしていた。
「どういうことだ……」
「男が選ばれるなんて今までなかったのに」
村人たちは口々に云い、辺りはざわざわとした音に包まれていく。それを、村長の男が声を上げた。
「神託は絶対だ。|水《みず》|神《がみ》様は|彼《・》|を《・》|巫《・》|女《・》に選ばれた」
たった一言で、静寂が戻る。すると今度は村人の視線がある青年に集中した。
背の高いその青年は、黒い穴を自分に向けて転がる壺をじっと見下ろしている。長い髪で表情は隠れ、痩せぎすの身体を微動だにせず立つ。
彼の名は――|嘉神《かがみ》|楊雅《ようが》という。
村長はしばらく村人たちの反応を静観していたが、やがて興味を失ったかのように踵を返す。
「選ばれた|巫《・》|女《・》はその壺を持って私の所へ来るように。他の者は引き続き準備に励んでくれ」
村長が家路を辿り始めると、他の村人もそれに倣って解散する。
そうして二人だけが残った。|巫《・》|女《・》に選ばれた楊雅と――楊雅の幼馴染みである|柴門《さいもん》|清矢《せいや》。彼らはいまだ地面に横たわったままの壺を見下ろし続けている。
風が強く吹いた。一際大きく揺れた楊雅の髪は、持ち主の顔を更に隠す。彼の真正面に立つ清矢は、苦々しく顔を歪めて幼馴染みを見た。
「……なんで、お前なんだよ……」
押し殺した怒りの言葉は、誰の耳にも届かず消えていく。