――よくここまで、たどり着いたね。
気がついたら私――紅華結は知らない建物の前にいた。
途方にくれて、周りに何もないから、とりあえず建物に入ってみたら……。
「いらっしゃい! あなたを待っていたのよ」
手を広げて歓迎してくれた、女の人がいた。
「あなたはこれから、この純喫茶❨くものうえ❩の店長になってもらうわ」
ええっ?! 急に何?!
動揺する私のことを置いておいて、サクサクと準備を始めた女の人。
わ、私の生活、どうなっちゃうの〜?!
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目次
『純喫茶❨くものうえ❩本編小説』#1 不思議な喫茶店、始めます?!
「ねーねーっ。夏休みどこいく?」
「ってか部活多すぎ〜。がちめんどい」
「彼ぴに会えないじゃん……つらっ……」
「|結《ゆい》ちゃん、また夏休み明けにねーっ!」
終学活が終わったあと、教室はすぐに話し声に溢れた。
みんなの遊びに行く約束とか、楽しそうな様子を見て、いいなぁって思っちゃう。
「またねーっ、|心華《こはな》ちゃーん」
私は声をかけてくれた女の子――|梁野《はりの》|心華《こはな》ちゃんに手を振る。
……はぁ、今年も`夏休みぼっち生活`かぁ……。
憂鬱で足が重いよ……。
でも、ここにいたらみんなが羨ましくて、もっと憂鬱になるよね。
私はさっき以上に重くなった足で教室を出た。
---
<どうもみなさんこんにちは😃>
<みなさんの思っているであろうことを代読する天の声(☆主☆)です😊>
<まず、「主人公のこの女の子はだれなんだ?!」と思ってるでしょう>
<私が天の力で主人公ちゃんに伝えますよ>
<オンリャァァァァァァ!!!!!🤛🤛>
---
「ん――? 何この紙」
私はいきなり道端に落ちてきた紙を拾う。
そこには、
<はじめまして主人公ちゃん(^ν^)>
<天の声(☆主☆)です>
<あなたが自己紹介をしないせいで心優しすぎる読者のみなさんが困っているのでさっさと自己紹介しろやゴラァ🤛🤛💢>
<というわけでしてね☆>
と、書かれていた。
……礼儀正しく見えたと思ったら後半から口異常に悪いしなんなのこれ。
でも、自己紹介してないのは事実だし……こいつの言いなりになるのは嫌だけどやるかぁ。
――私は|紅華《くればな》|結《ゆい》!
めちゃくちゃ平凡な普通の中学生だよ。
……得意なこと? え、っと……。
……すいません、実は`ない`んです。アハハハハッ……。
うう〜……私だっていろいろなことに挑戦してるよ?!
でも全部普通で、特別上手なものがないんだよ!
苦手なことなら大量にあるんだけどなぁ。
えっと、水泳でしょ? 雲梯、球技、勉強、友達作り、工作……。あっ、あと、コツコツ続けるのも苦手かも。
……っていう感じの、いたって平凡な得意がない子なんです〜……。
自己紹介をしながら、改めて自分の平凡さに落ち込む。
「私に、得意なことってあるのかなぁ……」
思わず呟いた、そのとき。
――君だ。必要なのは。
頭の中に透き通った綺麗な女性の声が響いた。
「なっ、何?!」
――さぁ、目をつぶって。私が案内するよ!
またもや響いた女性の声。
何もわからないまま、スルーして何かが起きても怖いから目をつぶったら……。
--- ぶわっ! ---
いきなり風が強く吹いて、私をつつみこんだ。
そしたら、足が地面から離れて、体が宙に浮いた!
「えええええっ、何ぃ?!」
怖くて声が震える。
目を開けようとしても、なぜか開けられない!
「いやぁぁぁぁぁっ!!」
私はされるがままに、そのまま宙に飛んでいった。
---
――よくここまで、たどり着いたね。
また頭に響いた女性の声で、目を開けた。
な、なんだったんだろう……?
まるで夢の中にいるような感覚で周りを見渡す。
あるのは、目の前にあるでっかいおしゃれな建物以外に、何も見えない。
う〜ん……なんでこんなところにいるんだろう……?
とりあえず目の前の建物のドアを開けようと、手をかけた。
ギイッという音を立てて開いた先には――。
「いらっしゃい! あなたを待っていたのよ」
と、手を開いて歓迎の声を上げる、女性がいた。
この声、頭の中に響いてた声だ!
ってことは、この人が私をここに……?
だったら危ない人?!
身構えた私に、女性はアハハッと、声を立てて笑う。
「そんなに警戒しないでよ。私は|北里《きたさと》|陽火李《ひびり》。ここのオーナーよ。よろしく」
にこっ、と愛想のいい笑顔で笑う北里さん。
「あなたはこれから、この純喫茶❨くものうえ❩の店長になってもらうわ」
「うぇぇぇっ?!」
い、いきなりなに?! なんで?!
私、さっき自分の平凡さに落ち込んでたんですけど?!
動揺しまくりの私を置いておいて、「さー、準備準備!」と張り切る北里さん。
わ、私の生活、どうなっちゃうの〜?!
『純喫茶❨くものうえ❩本編小説』#2 新たな仲間
【前回のあらすじという名の☆主☆がふざける場】
どうもみなさんこんにちはこんにちはこんにちはぁ〜〜!!!!
ふざける☆主☆でっせ。
あらすじ紹介しますよ!
得意がなくて落ち込んでいた夏休みぼっちの主人公、紅華結。
いきなり頭の中に声が響いたと思ったら、体が宙に浮いた!?
そのまま知らない場所に連れて行かれて、そこにいたのは頭に響いた声の主、北陽火里李。
結は「純喫茶❨くものうえ❩の店長になってもらう」と言われ……。
結の生活はどうなってしまうんだ?!
ってとこで終わってましたよね!
続きですよっ。
何もわからないまま、北里さんから渡されたメモ通りに物事を行っていく。
ってか、掃除くらいやっといてよ! めんどくさい!
私――|紅華結《くればなゆい》は、そう考えてふと疑問が思い浮かんだ。
そういえば、私が店長になるって言っても、店員がいなくちゃ意味がなくない?
私一人で回すわけじゃないよね!?
衝撃でモップを動かしている手が止まる。
それだったらさすがにヤバい……。
私は大急ぎでモップの掃除を終わらせ、北里さんのいる事務室に駆け込んだ。
---
「北里さん!」
「あれ、どうしたの、結」
バンッと事務室のドアを開け放つと、机に向かって真剣に資料を見ていた北里さんが顔を上げた。
彼女はきょとんとして、私の顔を見つめてくる。
「このお店――ええと、なんて名前だっけ」
「くものうえ」
「そう、それですっ。んで、私がここの店長をやるって言っても、店員はいないんですか!? まさかのワンオペとかないですよね?」
「あー、そゆこと。大丈夫! まだ`来ていないだけだから`」
来ていない? じゃあいるってことなんだ。
ホッと一安心したけど、またあることに気づいた。
これ、店員の人が年上だったらやだな……。
私が渋い顔をしていると、北里さんがアハハッと笑う。
その笑い声が事務室に響いた、そのとき。
--- どんっ! ---
尻もちをついたような音が聞こえた。それに続いて、
「いったぁ!?」
「な、なんだよ、ここ……。」
と、可愛らしい女の子の声と、低くて凛々しい男の子の声が聞こえた。
「お、来たみたいだね」
北里さんが声のトーンを上げて言う。
立ち上がった北里さんはドアから外に出ようとして、ふいに足を止めた。
私の方を振り返ると、小さく手招きされる。
「結も来て。店長でしょ?」
にっこりと笑いかけられた。
いや、私人見知りだし、店長になることokしてないんですけど。
でも、その笑顔にぐぬぅ、となって、
「……わかりました」
と、ついて行ってしまった。
---
チリン、チリン。
北里さんに続いて事務室を出ると、入口についている鈴が音を立てた。
さっきの女の子と男の子かな。
「いらっしゃい!」
北里さんが声をかけた途端、二人はびくっとなる。
うん、そうだよね。警戒するよね。
「……あんたは、さっきの」
「頭に響いた声の人……?」
男の子は女の子を背中にかばいながらぎろりと北里さんを睨む。
「こんなとこに連れ出して、俺と`|紗枝《さえ》`をどうするつもりだ」
その迫力に、私は思わずすくみ上がる。
でも、北里さんはおびえる様子もなく、にこにこと二人を見る。
「やだなぁ、そんなに睨まないでよ。私は北里陽火李。ここのオーナーよ」
「えっと、じゃあここはお店?」
男の子に紗枝と呼ばれていた女の子が言う。
そして北里さんの後ろにいた私に目を向けた。
「あなたは……?」
うぐっ。だよね、そうくるよね。
でも私は人見知りだから、すぐには答えられなかった。
それを男の子が不審に思ったみたい。
「ここはもしかしたら表向きが店なだけの監禁施設か? だとしたら、オーナーのあんたが後ろのこいつを――」
「ちょちょちょっ、`|覚《かく》`! 絶対違うって、落ち着いて!」
北里さんにつかみかかろうとした覚と呼ばれた男の子を、女の子がすぐさま止める。
「ごめんなさい! あの、覚は早とちりが多くてっ。こういうことがよくあるんです!」
ぺこりと、女の子がお辞儀する。
北里さんは特に気にしている感じもなく、
「いいよいいよ! 私、怪しいもんね! じゃ、私は忙しいから、結。あとはよろしく~」
といい、事務室に戻っていった。
わかってるんだ、自分が怪しいって。
そう思いつつ、場の静寂さに怖くなる。
……私、こういう雰囲気本当に嫌いなんだよ……!
気まずいし、何にも言えない自分が嫌になる。
と、思っていたら、女の子が口を開いた。
「えっと、まず、自己紹介……かな。私は|紫月《しづき》|紗枝《さえ》。そしてこっちは双子の兄の|紫月《しづき》|覚《かく》」
「……ども」
女の子と男の子――ええと、紗枝ちゃんと覚くんがぺこりと私に向かって礼をしてくれる。
私はあわてて続いて礼をする。
「わ、私は紅華結です。よろ、しくお願いします」
カタコトになっちゃったけど、うまく言えたかな?
心配だったけど、紗枝ちゃんがわあっと声を上げた。
「素敵な名前! じゃあ、結ちゃんって呼んでいいかな?」
にっこりと笑ってくれた。
その笑顔に私はすごくうれしくなる。
「うん……! ありがとう」
私が笑顔になったところで、覚くんが一枚の紙を出した。
「あのよ。俺たち、ここに来る直前にこんな紙を拾ったんだけど、なんか知ってるか?」
私は差し出された紙を確認する。
<はじめまして双子ちゃんたち😊>
<天の声(✰主✰)です>
<突然ですが義務教育中のあなたたちを働かせます>
<職場体験ですよ文句は聞きません>
<じゃあがんばってね!!>
と書かれてある。
「こういうの、私も持ってるよ!」
ポケットに入れてある紙を私も取り出す。
二人はそれを確認して顔を見合わせた。
「送り主、絶対同じだよね……!」
「じゃあ黒幕はこっちか!?」
「わかんないけど……今は何もできない、かな……」
私たちは何か不穏なものを感じながら、近くの椅子に座った。