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小説名文引用 1
元々私的利用だったから躊躇してたんだけど、著作権のページを色々と見て、この程度なら大丈夫そうと判断。「他人の著作物の引用」に該当するため、小説タイトルと著者名を載せています。ページ数はわかりません。
目次(作者別・作品名読破順・敬称略)
1. 綾辻行人(三人称・霧越邸のみ一人称)
・人形館の殺人・黒猫館の殺人・迷路館の殺人
・霧越邸殺人事件
・十角館の殺人・どんどん橋落ちた
2. 鮎川哲也
・リラ荘殺人事件
3. 有栖川有栖
・双頭の悪魔・女王国の城・スウェーデン館の謎
・ブラジル蝶の謎・作家小説・ダリの繭
・乱鴉の島・妃は船を沈める・マジックミラー
4. 歌野晶午
・密室殺人ゲーム2.0
5. アンソロジー小説
・川に死体のある風景・事件現場に行こう
・大密室
6. 折原一
・冤罪者・仮面劇(毒殺者)
・望湖荘の殺人(サプライズ・パーティ!)
・沈黙の教室・暗闇の教室(百物語の夜)
・101号室の女
・沈黙者・漂流者
※ネタバレ防止のため(?)、登場人物が入る所に伏字が使われています。
--- 1.綾辻行人(三人称・霧越邸のみ一人称) ---
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≪人形館の殺人≫
・前方に目を転ずると、
・せっかく掴みかけたソラの手がかりは、手から砂が漏れるように、あえなく消えてしまったのだ。
・滔々(とうとう)と述べ立てた。
・悲惨な影が忍び寄る徴候も見られなかった。
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≪黒猫館の殺人≫
・夜は森閑と静まり返っている
・白い海泡石のパイプに葉を詰めて
・あたかも、夜と昼、闇と光の世界は決して溶け合うことがないのだと主張するかのように
・煙草と酒と汗の臭いが綯交(ないまぜ)ぜとなってむっと澱んでおり、顔をしかめたくなるほどだった
・その後の彼の淪落ぶりは悲惨なものだった。
・目だけでお互いの表情を窺った
・ーの足を地面に縫い付ける
・聞き分けのない子供をなだめすかすように
・最近とみに感動する
・吊り上がった三百眼を瞬き・思い至る
・後退(あとじさ)った
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≪迷路館の殺人≫
・暗い迷宮をさまよっている眩(げん)惑感から解放された
・さざ波が押し寄せる風紋に足跡を付けた。
・をかけたように空が霞がかっている
・表情もなく窓の外に目をやっていた
・~は視線を前方に戻し、話の糸口を探る。
・差し向かいで座った男は、乾いた唇を気難しげに曲げた薄く色の入った金縁眼鏡のレンズの中で、小さな目が・ゆっくりとしばたたかれる。
・うららかな風景の中に身を浸している
・ショートにした艶のいい髪を撫でて
・「――」彼は肩をすくめる。その声には僅かながらの皮肉の響きが聞き取れる。
・毛足の長い絨毯を染めた毒々しい色が、彼の死を如実に物語っていた。
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≪霧越邸殺人事件≫
・まるで囚人の様子を監視する獄吏(ごくり)のような目で、見て回った。
・朧に霞んだ山々
・叫ぶように鋭い声をこちらに投げつけた。
・~がいい澱むのを見て女はすっと目を細くした。「お気に召さないのですか」
・それまでになく険しい表情で黙考を始めていた。
・窓の外へ視線(目)を投げた
・口許の微笑を頬にまで広げた。
・微笑を浮かべて長い黒髪を撫で下ろした。
・髪を後ろへかき上げた。
・槍中は私の方へ意味ありげな視線を投げる。――と、その目は語っていた。
・底知れぬ絶望感とともに、叫びの衝動が喉を突き上げて来る。抑えようとしたが、出来る筈もなかった。これが自分の声かと思うほどの物凄い叫び声が、その一瞬後、辺りを包んだ静寂を粉々に打ち砕いた。
・両側の壁が、何か奇怪な音を立てながら捻れ、歪み、倒れかかって来るように見える。
・倒れ込んできた人影は支えを失ってそのまま膝を折り、部屋の境目の床へ崩れ落ちるようにうつ伏した。
・言葉を切り、ふっと低い笑いを洩らす
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≪十角館の殺人≫
・深い水の色に凝然と目を投じていた。
「ずれた、だと?」ーはせわしなく揺すり続けていた足を床に叩きつけた。
・彼は少しずつ眠りから掬い上げられた
・うわ言のように繰り返す声がやがて途切れ、弱々しい啜り泣きに変わる。
・水に滲んだような真っ黒な影が、ゆらゆらと不規則に揺動する。
・波の音は生気を失ったかのように沈滞して聞こえた。
・濛々と吐き出される煙。大気を震撼させる轟音。
・所々小さな深緑色をしたためた茶色い岩肌を、細い石段がジグザグに幾度も折れながら這い上がっている。
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≪どんどん橋落ちた≫
・他者の多数決におもねろうと血道(ちみち)を上げているのがこの国の人々だよ。
・それまで鬱積していた様々な感情が爆発し、半ば衝動的な「――」の実行に至ったのだ。
・隣で女が寝返りを打った。鼻にかかった甘ったるい声が、――の耳をくすぐった。
・引き締まるべきところは締まり、盛り上がるべきところは隆起している。
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--- 2.鮎川哲也 ---
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≪リラ荘殺人事件≫
・花の緋の色が目に染みるように燃えている
・巨大な包丁で削ぎとったように急な断崖の底に、清冽な水が黒い岩を食(は)み、白い泡をたてて身をよじり、捻らせ、もつれあうようにして激しく流れている。
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--- 3.有栖川有栖 ---
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≪双頭の悪魔・女王国の城≫
・雲間に月が覗いていたのだ。
・安易に軋轢を縫合してはいけない
・そもそも視認してなかったのだと自分に言い聞かせた。
・希望的観測に基づく事実を甘受する
・奇妙な音が彼女の耳朶を打った。
・視線で床をひと掃きしてみたが、見当たらなかった。
・迷妄を捨てよ。邪悪な来訪者を打ち砕くべく、神聖にして善なる超越的存在を解き放つのだ。
・独善的に物事を判別するのは良くない。
・寡聞(かぶん)にして知らない
・入り口の断面は長方形だが、すぐに半円形になる。
・ここ以外のどこにもない景観を呈している。類例のない美しさを感じる。
・賛成の声が澎湃(ほうはい)と上がった
・話の車輪を回す
・~は口を半ば開き、右手の親指を前歯で噛んでいる。悲鳴を圧し殺している。
・左手首を握ると、~は腰を落として「こう見えて」体をねじりながら「柔道は」相手を投げて「三段だ」飛ばした。濡れたタオルで叩いたような音が響く。
・村は深い雪のなかに横たわっていた。
・めいめいが~について話すが、その描写は一致せず、どれもが虚構めいている。
・わけの判らない死が猖獗(しょうけつ)を極めているのに、ただ手をこまねくしかできない。
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≪スウェーデン館の謎≫
・癒えない心の傷を抱えた自らを慰撫(いぶ)している。
・しなやかに流れて肩で渦を巻く髪をいじりながら、答える。
・老後は自然に囲まれた空気のきれいなところで過ごしたい。
・永遠の不在を強調しているようでもあった。
・話に花が咲いた
・彼は首に巻かれた縄を牽かれているかのような足取りで食堂にやってくる。
・黙って聞き入るしかない。これまで闇に葬られていたとんでもない事実が引きずり出されようとしているのだ。
・自由を束縛していた頚(くび)木(き)がはずれたというか、呪縛が解けたというか……。
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≪ブラジル蝶の謎≫
・相手は~と目が合ったことにも気づかなかったのか、さりげなく庭を一望して部屋の奥に下がった。
・「老境のご夫婦と拝察しました」
・火村はここで持って回った言い方をする。直接聞けばいいのに。(回りくどい)
・緑したたる山々が広がっている。
・黒革のコートの裾を翻して彼は歩きだす。
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≪作家小説≫
・天佑われになし。さぁさ、貫くがよい。その切っ先を私の血潮で濡らせ。残忍にして驕傲(きょごう)、愚昧にして遅鈍なこの王の最期をしかと語り継ぐのだぞ。
・無意味に新奇な響きに心惹かれがちだが、冷静に考えてみよ。
・海風に髪をなぶらせながら、彼女は恍惚と言った。
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≪ダリの繭≫
・彼はグラスを光に透かした
・虚飾まみれの情報を垂れ流しながら
・とりとめのない想念に漂いたいのに、思考が弛緩しない。
・半ば口を開いたまま視線を巡らせ、仔細(しさい)に調べた
・轟音が鼓膜を刺し、風がスカートの裾を煽る
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≪乱鴉の島≫
・町の明かりも車のライトも空に届かず、星たちの幽(かそ)けき光を遮らないからだ。
・透き通った美しい歌声で、思わずうっとりと聞き惚れてしまった。
・現実に薄い皮膜が掛かったようになって、目を細く開いたまま意識が遠退いた状態だった。
・月の夜ごとに彼女の夢を見、星の夜ごとにその輝く瞳を見る。だから、私は毎夜、海辺の奥(おく)つ城(き)にて、海のほとりの墓にいるアナベル・リーのそばで眠る。
・ドクターは口許を曲げた。どうにも意味不明の微笑だった。
・「まるでーだな」ドクターは意味不明のことを呟いてから、すかさず解説した。それはーのことだ。
・勇を鼓して、先頭に志願した。
・悲しみは弥(いや)が上にも深まって、肺腑を鋭く抉るでしょう。
・永遠と瞬間、それはどこまでも対立しながら、どこまでも離れることのない概念です。人間が思考するもののなかで、この二つほど魅了し合う組み合わせはないでしょう。
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≪妃は船を沈める≫
・いつの間にか雨は上がったようだ。ナイフを入れたように雲が裂け、細い青空が覗いた。
・何か新事実が浮上するのではないか、という期待も虚しく、彼らの証言は既知のことに終始した。
・ひねくれ者の読者のために――というのはおかしいが――、そういう読み方だってできる。喩え作者が許さなくても、作品は許している。
・近くに侍らせた若い男の子たちを掌で転がしたり、食べ散らかすのが趣味だったと思われているのかも知れませんが。
・たくましい想像をさらにたくましくしても無意味なことです。絵に描いた餅は結局、食べられないですもの。
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≪マジックミラー≫
「たのしみにしてる」
――は少し言葉を切って「そうそう、今日、――さんに会ったわ」
「あらそう」
懐かしく、そして少し胸の痛む名前だ。
「姉さん、贅沢なことした」
恵は――の話を冗談にしたくなかった。
(中略)
恵は暗い湖の彼方を見やっていた。遠い星空のもと、ワープロを打っているであろう、――の姿が浮かんだ。かつて自分が傷付けてしまった男の姿が……。
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--- 4. 歌野晶午 ---
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≪密室殺人ゲーム2.0≫
・彼らにとって他人の命は遊び道具。テニスボールやプラモデルのパーツと同等の価値しか持たない。彼らに倫理も情も持ち合わせていない。
・
「さて、どうでしょうね」
――は椅子の上で両膝を抱え、膝頭に顎をのせている。
・それら美しい山脈も、うっすら雪をいただいている。
・「実践ではすべて臨機応変に対応しなくちゃいけない。手順はあっているか? 時間は超過してないか? 誰かに見られてないか――緊張感も尋常ではない。それらを乗り越えて初めて、意義が表出するんじゃないか。なのに、シミュレーションで満足するなんて……」
・その手は手を握っていた。手首から切断された血まみれの手を。
・「これはゲームだ。一般常識の及ばない、正真正銘のゲーム。元々遊びとは無意味を楽しむものだろう。我々は高等遊民であるからして、ゲームをさらに盛り上げるためなら、一般社会では必然性のない行動は有だ」
・人の命は等しいと――は考える。等しく無価値だと。子供の頃からそう思っていた。だから彼は躊躇なく人を殺す。「人」とは他人だけを指しているのではない。自分も例外ではない。だから彼は価値のない自分を守るために全精力を傾けるなど愚かしいと考える。自分を捨てる覚悟はとうにできている。
・
<――の推理を叩き台にしているので、殊勲の半分は向こうにある>
「いらね」――は低く吐き捨てた。褒められるとかえって屈辱だ。
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--- 5.アンソロジー小説 ---
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≪川に死体のある風景≫
・「まるで鳥類の脚をもつ何者かが、大きく爪を立てて顔全体を引っ掻き下ろしたような傷、ですか?」
・信じられない、という風にかぶりを振りながら、彼は呟き落とした。
・川のなかに身を横たえていた。浅瀬らしい岩場に仰向けになって、その体を清流が洗っている。かろうじて顔だけが水面に出ているという状態だ。肩まである髪とスカートの裾のなびき具合から、頭が川上を向いているのが判った。
・誰にも聞こえぬよう、囁き声で喋っているつもりなのだろうが、こういう場所での会話は案外筒抜けになってしまうものだ。
・じりじりと照りつける陽光に、雪面が緩み始めていた。その変化は登山靴に装着したアイゼンを通しても感じることができる。
・若手隊員が戻ってきた。部屋の張り詰めた空気に怪訝な顔をしている。
・ルートを塞ぐ巨大な根をまたぎ越し、額の汗を拭った。
・それで恨みを持つのは、無理からぬことだろう。
・当時の天気は快晴。雪面には強烈な陽光が照りつけていた。サングラスがなければ、雪目を起こし、視力を失う可能性がある。
・水流に押し流され川底にぶつかったであろう頭部は特に擦過傷がひどく、からだのあちこちに生前のものとも死後のものともはっきりしない打撲痕や骨折の跡もある。
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≪事件現場に行こう≫
・記憶の粉飾によるものが働いたのか、しつこく頭に引っ掛かっていて、
・小気味のよい透き通った音が、それでいて不穏な胸騒ぎを煽る嫌らしい響きを含んだ音が、どこか遠くから微かに聞こえてきた。
・彼女はその艶やかな唇に、はっとするような妖しい笑みを浮かべる。
・あなたのその貪欲な目は、こちらの魅力を吸いとろうと必死で、始終私の口元をご覧になっていた様子でした。
・時間の概念が失われ、現実感が消え去って、毛筋ほどの光も見えない闇ばかりが、頭のなかにふくれあがる。
・地霧(じぎり)が地表を薄く白く這っている。
・右手で目を覆い、突然の直射光を避けている。
・天より降り注ぐ光のひびは、地にぶつかり弾け飛ぶ。それは死の孤島の地表を溶かし、生命を焼く。
・喉を絞った細いうめきが、狭い空洞のなかで反響しているようなくぐもった音。空耳でない証拠に、二人の警官も聞き耳を立てている。
・東京タワーの先端が、周囲の汚濁を吸って薄汚れた白い塀の向こうに覗く。
・「深夜に公園に出入りした子供たちを狙った盗難行為やかつあげ、痴漢や暴力沙汰などが横行しており、こちらとしましては看過できない事態だと考えております」
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≪大密室≫
・方位学的な視点で、建物の構造を知ることで、この家の建築家の思想や信仰、信条などの背骨を知ることに繋がる。
・溶解したような様子の塔は、したから見上げていると今にもこちらに向かって崩れてきそうだ。その退廃とした崩壊美がいまだに完成していないとしると、胸が驚きに包まれる。
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--- 6.折原一 ---
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≪冤罪者≫
・なんと乱雑な部屋だろう。この散らかりようは異常としか言いようがない。くしゃくしゃに丸めた紙で、部屋中は足の踏み場のないほどだ。
・変声期前のひどく甲高いボーイソプラノだった。
・母親は~を産んだ時の産褥(さんじょく)熱がもとで死んだし、父親も五年前に胃ガンで死んだ。
・「公園を借景にしてるんだよ。庭みたいでいいだろ?」
・屈辱の汚穢(おわい)にまみれた目から涙が流れた
・人垣が乱れ、まるでモーゼのエジプト脱出のように道が開いた。
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≪仮面劇(毒殺者)≫
・曖昧に言葉を濁した。
・コールタールのような黒い油染みがついているのがみえた。
・笑うとふっくらとした両頬にえくぼができる。スリムな体からは健康的な色気が漂っている。
・恐怖の断片だけがかろうじて、記憶の底にこびりついている。
・あまりに急な話だったので、彼は答えに窮した。
・~は、正の感情と負の感情が顔の中で交錯させた。
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≪望湖荘の殺人(サプライズ・パーティ!)≫
・彼女の全身を覆う動物的な汗のにおい、下半身の脱力感と鈍痛で、何が起こったのか解った。
・大金を受けとる代わりに彼女は身体を差し出した。最近では割り切ってしまっている。情けない。そんな自分がとても情けない。
・水面下に潜んだ憎悪が有るかもしれない
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≪沈黙の教室≫
・雨は降っているが、上空の枝に遮られて木の下道にはそれほど落ちてこない。
・何十年も前にうち捨てられた村は、すでに忘却の彼方にあった。
・神をも恐れぬ傲岸不遜を感じた。これが天の逆鱗に触れなければいいが。
・虫がすだく声が聞こえてくる。新鮮な涼風が谷をわたる。
・暗闇の支配する領域が水に墨汁を溶かすように着実に広がっていった。
・賽の河原に積み上げられた供養の石のように、いくつもごろごろと積み重なっているのだ。
・彼の動物的勘はたとえ漆黒の闇の中であろうと目的地の位置を正確にとらえることができるはずだ。
・校舎の瓦屋根が木の間越しに見えた。
・篠(しの)つく雨が目に突き刺さるため、視界がきかない。
・虫けらな反動分子たちを闇に葬った。これも組織防衛のためだった。
・酔客の声が大きいので、かえって内密の話しには都合がいいのだ。
・根も葉もない噂だが、人々はおもしろい噂に飛びつき、無責任に尾ひれを付けて脚色する。エスカレートしていくのも無理はない。
・金持ちなくせに品性が下劣で吝嗇(りんしょく)な者が多かった。
・涙が滂沱(ぼうだ)として溢れてくる。
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≪暗闇の教室(百物語の夜)≫
・逃げ出したかったのですが、その場に根が生えたようになって、身動きもできなかったのです。
・覚悟を決めたが、案に相違して、~
・~は青々とした陸稲(おかぼ)を連想させてくれる。
・荒涼とした景色がどこまでも続いている。
・悪夢がじわじわと胃壁を伝い、喉元まで這い上がってくる。
・先行きにようやく一つの曙光(しょこう)が見えてきたのだ。
・紅蓮の炎が恐竜の舌のように、窓という窓から外へ出ていた。パチパチと火がはぜる音が見るものの恐怖を煽る。女性たちはいくつかのグループに分かれ、肩を寄せあって震えていた。
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≪暗闇の教室(百物語再び)≫
・この時点で誰も結末を言い当てることは不可能にちがいない。もし、一点の曇りなく完全に言い当てることができるものは、よっぽどの天才かへそ曲がりだ。
・月光の照らす荒涼とした砂漠を歩くものが一人。
・ーが終焉する、その始まりを暗示するシグナルだった。
・日本とオーストラリアは蜜月(みつげつ)関係だ。何かしら裏でつながっていてもおかしくはない。
・どことなく超然とした、茫漠とした目つきをしていた。
・ゲリラ戦の様相を呈していた
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≪101号室の女≫
・無意識のうちに三本目の煙草に火を点けながら、二十日前の失策を思い起こした。苦い唾液が口いっぱいに広がっていく。
・口の中に、土埃を含んだ強風が入ってきた。ジャリ、とした食感のなかにあるはずのない、仄かな甘さを彼は感じていた。
・最近の僕は疫病神に祟られている。ーはそう思って、すっかり意気消沈していた。
・希望と絶望と閉塞感が複雑に君の胸を去来した。
・忌まわしい思い出が、彼の脳の中を洪水のように埋め尽くす。
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≪沈黙者≫
・彼は闇に向かって身構えた。しんと不気味な静けさが家を押し潰すように落ちていた。
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≪漂流者≫
・様々な鳥が囀り、海鳥たちが海上を群舞する
・右手に海上から拳を突き出したような峻険な断崖に取り巻かれた島が見えた。崖に白波が砕け天然の要害そのものだった。
・念仏のようにそう唱えていると、この悪夢から逃れるためにはもはやそれ以外方法がないように思えてきた。
・四囲は見渡す限り茫漠たる海だった
・ーの声にかすかな逡巡の色が加わるのを見逃さなかった。
・夕陽に照り映える岬
一条の光が闇を裂く。
・妻は放心状態になって、その場にくずおれた。
・東の水平線の空は深い藍色になり、まもなく黒くなって闇の密度が濃くなっていくだろう。
・黙して冥するのみである。
・闇が薄墨を溶かしたようになり、刻々と暗さの濃度を増していく。
・黒褐色に変じた血溜まりがあり、黒く疥癬(かいせん)のようになった血痕が点々とあった。
・~の声に彼女の物思いが途切れた。
続きます。