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3話
Yomogi
ニア「ア・・・ラド?」
アラド「おう、お迎えに上がりましたぜ。ニア様。」
僕の目の前には、あの時、たしかに死んだアラドが立っていた。
何度目をこすっても、目の前にはアラドがいた。
ニア「ア、ラド・・・アラド、なの?」
アラド「そーだよ。逆に、俺以外誰がいるんだよ。」
ニア「だって、アラドは・・・。」
アラド「俺は毒見係だぜ?多少の毒には耐性がある。でもあの毒は強かった。1時間ぐらいは死んでたかも。でも今はこのとおり、毒を分解して生き返ってきてやったぜ。」
アラドはいつもの、少し煽ったような口調で言ってきた。
でも、左手が少し震えていた。
毒による麻痺が残ったのか、一度死んだことによる恐怖なのか。
ニア「アラド・・・。よかっ、」グラッ
アラド「おっと、前より細すぎじゃね?それに軽い・・・ろくに飯食ってねぇな。ちょっと待ってろ。」
そう言ってアラドは走っていった。
ここ数日、毒で死ぬという恐怖が何度もよぎり、食事を受け付けなかった。
そのせいで、体力や精神などがすり減っているのだ。
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数分後、アラドが大きな魚を3匹取ってきた。
アラド「ただいま、ニア。ほれ、お前にお客さんだ。」
ベル「お久しぶりです、ニア様。ご無事で何よりです。」
ニア「ベル・・・なんで?仕事は?」
ベル「辞職してきました。私はあの場所で働くより、ニア様と料理をしている方が、よほど楽しいということに気が付きました。」
ニア「全く・・・兄妹揃って馬鹿だね。追放された落ちこぼれの王子に、自らついてこようとするなんて。」
ベル「私はかつておっしゃいました。『ニア様がどうであろうとも私は、あの子も、ニア様についていきますよ』と。つかえる場所が違えど、つかえる者は同じです。」
ニア「はは、嬉しいよ。」
アラドが取ってきた魚は、ベルが焚き火の前で美味しそうに焼いてくれた。
でも、アラドが生き返っても、毒で死ぬという恐怖は消えなかった。
ベル「ニア様、食べないのですか?」
ニア「あ・・・いや、その・・・。」
恐怖で言葉が途切れ途切れになる。
そんな中、アラドが自分の目の前にある魚を手に取った。
アラド「ま、王子様に1番手はこえーだろうよ。ここはやっぱり、毒味係の俺が食べてやんねーとな。」
ニア「アラド・・・!」
アラド「いっただっきまーす!」
アラドが、いい焼色の魚の腹部に、勢いよくかぶりつく。
何度か咀嚼し、ゆっくりと飲み込んでいく。
アラド「うんまぁ!とれたての魚に、姉貴の手が加わりゃ最高に決まってる!ほら、お前らもさっさと食えよ!焦げちまうぞ!」
ニア「う、うん・・・。」
ベル「アラド、言葉遣いには気をつけなさい。」
アラド「はーい。」
僕は恐る恐る、魚が刺さっている木の枝を取った。
ゆっくりと口に運び、かぶりつく。
すると、口いっぱいに広がる魚の旨味と、ほのかな塩味、少し香る川の香りがとても良かった。
ニア「お、美味しい・・・!」
ベル「お口にあってよかったです。」
アラド「だろ?やっぱうちの姉貴に勝てる料理人はいねーよ!まだ分からないけど。」
アラドが取ってきた、人の腕ぐらいはある大きさの魚を食べ終わるまで、他愛のない話が続いた。
そして食べ終わり、たくさんの星が見え始めた頃、アラドが深刻な表情をした。
アラド「んで、こっからの俺達についてだ。」
ベル「そうですね。」
ニア「え、なにかやるの?」
アラド「流石にこのままおじいちゃんまでこの生活を送るなんて嫌だろ?しかも俺達は無罪、それも冤罪を着せられてるんだ。何もしねーのは、俺が嫌だ。」
ベル「たしかに、ニア様をこんなにした犯人は捕まえて懲らしめるべきです。」
アラド「ああ。死罪だけじゃ足りねぇ。」
死罪だけって、死罪以上ってあるの?
そしていつの間にか俺のセコムみたいになってる。
ニア「でも証拠ってなくない?」
アラド「俺は毒味係でもあって、傭兵団の副団長でもある。俺があの、目の前で何度も見てきた魔法陣を見間違えるはずがない。」
ベル「私も、大体の予想はつきました。」
ニア「え、わかんない・・・誰なの?」
アース姉弟「傭兵団団長、ファル・ヒューマ第1王子。」