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貴方と出逢う奇跡の日_1話
放課後の校舎は、西日に照らされて黄金色に染まっていた。
流唯は隣を歩く幼馴染の彩を見やりながら、軽く肩を揺らす。
彼らのような「表現者」としての顔を持つ者は、時折、日常の中に潜む非日常的な瞬間を敏感に察知する。
しかし、その瞬間の静寂を破ったのは、一人の女子生徒が落とした書類の音だった。
風に舞い散るプリントを前に、彩は迷うことなく動いた。
彼は無言のまま地面に膝をつき、一枚ずつ丁寧に紙を拾い集める。
彩:「……あ、すみません」
彼の手が瑠夏の手に触れた瞬間、微かな熱が指先から伝わった。
瑠夏はその感触に心臓を跳ねさせた。
(……何、この感覚)
有名モデルとして数多の視線を浴びてきた彼女にとって、他人の体温はこれほどまでに鮮烈なものだっただろうか。
一瞬で意識が遠のき、胸の奥に甘く重い「恋」という名の沼が広がるのを感じた。
瑠夏:「大丈夫です。それと……拾ってくださり、ありがとうございます」
彼女の声はわずかに震えていたが、その瞳には熱を帯びていた。
流唯はそんな二人の空気を見逃さず、茶目っ気たっぷりに彩の肩へ腕を回した。
彼はアイドルとしての立ち振る舞いを完璧にこなしながら、場を和ませるための言葉を選ぶ。
流唯:「あの、俺たちこれからそこのカフェでなんか食べて帰るんすけど、先輩たちもどうですか?」
その時、背後から鋭い声が飛んだ。
プロゲーマーとして研ぎ澄まされた反応速度を持つ陽奈は、瑠夏の様子がおかしいことに即座に気づいていた。
陽奈:「瑠夏? 何突っ立ってんの? で、誘われてるけどどうすんの?」
瑠夏は我に返り、頬を赤く染めながら頷いた。
瑠夏:「ごめん……お礼もしたいし、行こ」
彩:「お礼なんて別にいいですよ」
彼らは近隣にあるカフェへと足を踏み入れた。
注文した料理が運ばれてくるまでの数分間、四人の会話は弾んだ。
勉強の話、ゲームの戦略、絵の技法、そしてアイドルの過酷なスケジュール。
それぞれの世界で輝く者たちが、一つのテーブルを囲む。
瑠夏は、目の前で笑う三人の顔を見つめていた。
(……この人たちともっと一緒にいたい)
それはこれまで一度も抱いたことのない、切実で純粋な願いだった。
陽奈:「あー、これ美味しい。次はこのゲームのアップデートについて語り合おうよ」
流唯:「いいですね、僕もその企画に興味あります」
彩:「……うん、それなら俺も描けると思う」
賑やかな笑い声がカフェの中に溶けていく。
しかし、瑠夏だけは知っていた。この出会いが単なる偶然ではないことを。
そして、この時間が終わった後にも、まだ語り尽くせない物語が続いていることを。
窓の外では、夕闇がゆっくりと世界を覆い始めていた。
それは、四人の運命が複雑に絡み合い始めた、最初の一ページに過ぎなかった。