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名作で学ぶ! 場面の書き方 2

有栖川有栖『狩人の悪夢』(角川文庫 p5~10) https://www.kadokawa.co.jp/product/321810000183/ の抜粋です。 ところどころ空行追加と、ルビを振りました。 未読の方はネタバレ注意? まあ、最初の場面ですから、そんなことないかも。
わりと普通の文章ですが、実は「彼は~」が使われている文章は最後の一文以外ありません。これが驚きです。作者の技巧が出ています。 同じような意味の「自分」も、3000文字中5つのみ使われていて、三人称なのにかなり少ない!と思いました。 序盤の1・2ページはその「自分」すら使われていません。 つまり、読者は背格好も容姿も年齢もわからない、人称代名詞すらない謎の人物の動向を気にして読み進めていくわけです。これが初読では読みづらいところです。   これは、夢だと自覚していく時間推移を表現している気がして、暗中模索感があります。 頑張って読み進めていくと、その人物は明晰夢だと自覚し、その後山姥っぽい女と狩人追いかけっこをして、ようやく悪夢から本格的に覚めていきます。 そして、最後の文の「彼は悪夢しか見たことがなかった」と読んだところで、ああなるほど、この人は夢ではなく「悪夢」を見ていたのか、と分かる感じです。読みづらさは悪夢の不気味さ、悪夢の濃密さ・分厚さを表現しているかのようです。 全体的になんかルビも多いですね。 ルビって多いと目がつまづくんですが、僕的にはこれも狙ってるのではないかと深読みしているんですがどうでしょう。速読させないように、わざと振ってるのではないかと。 3000文字をぜいたくに使って、とある人の悪夢を形作っている。本書のタイトル『狩人の悪夢』から物語が始まるのです。おしゃれ。
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