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ゼリー
2026/03/11 ゼリー
お姉ちゃんが死んだ。風邪気味だから薬買ってくると言って薬局に向かった、その帰り道の横断歩道で信号無視の車にぶつかったようだった。
お姉ちゃんが買ってきたコンビニの袋には、つぶされた薬と包装が破れているアイスが入っていた。ほかに、交通事故現場の近くにゼリーが落ちていたという。お姉ちゃんが買っていたものだろう。車と衝突した衝撃で袋から抜け出し、そこら辺に転がったと推測された。
いま、私の家の冷蔵庫には、そのゼリーが入っている。お姉ちゃんのお葬式が終わってもう2週間経つのに、家族の誰も食べていない、オレンジ味のゼリー。ナタデココ入りのゼリー。
夜8時、夕食を食べ終えた私は、そのゼリーに手を伸ばした。なにも言わずにスプーンとそれを持って自分の部屋に行った。
これ、食べれるのかな。蓋をぺりっとめくって、匂いを嗅ぐ。おかしな匂いはしない。だから私はスプーンで少しすくってみた。口を開いて、スプーンを口元に運ぶ。
だけど私がスプーンをかたむけることはなかった。するりと舌の上にゼリーを入れることには、抵抗を感じた。
私はスプーンの上のゼリーをしばらく眺め、捨てるか容器に戻すか悩んだ末、戻すことにした。
あっさりと空いた穴に入り込み、境界線も曖昧になったゼリーに、私は敬意と嫌悪を同時に抱いた。