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三話「覚悟の末に、私は___」
リライナ「セレ………!」
リライナが反論する前に、オリバーが机を叩いた。ビーフシチューの入った器が宙に浮き、戻る。
オリバー「セレ、本気か……?」
セレ「………うん、本気。」
オリバーは怒るとも悲しむとも言えない表情でセレを見つめた後、席を立った。
オリバー「………今日はごちそうさま。」
オリバーは歩いて扉の前まで行く。静かに閉まる扉を、私は寂しげに見つめた。
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ベッドに入って、私はオリバーのことを考えた。オリバーは多分本気で心配してくれたんだと思う。だって、彼の父は外の世界に行って帰って来なかった内の一人なのだから。オリバーの父はオリバーと病弱な母を置いて相棒と出て行ってしまったのだ。その後、何年かしてオリバーの母は私の父と同じく流行病で死んだ。それで、私達の家に引き取れた。だから、オリバーが心配するのも分かる。
セレ「分かってるよ………外の世界は危ないことくらい………。」
私は闇の中に溜まったものを吐き出した。それは闇の中に溶けて、混ざって消えた。考えることが多かった。私はしばらく唸った。
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五時半、私は物音で目が覚めた。窓の外に誰かがいる。窓を開けて確認するとそれはソウだった。
セレ「ソウ!?」
ソキウス「セレ、悪い予感がする!」
切羽詰まった様子のソウに私は不安をおぼえる。ソウ、アルスの悪い予感は大抵当たる。私は素早くベッドから出て着替える。ソウが翼の付け根から弓矢を取り出した。私はそれを持つと部屋を出て、大声で叫んだ。
セレ「ソウのお告げが来た!!」
私はソウが悪い予感がすることをお告げと呼ぶ。すると、隣の部屋の扉が壊れんばかりの勢いで開いた。出て来たのは寝癖をつけたオリバー。
オリバー「本当か!?」
オリバーの答えに私が頷いているところに、リライナも来た。包丁を持っているところを見ると、料理中だったのだと思う。
リライナ「ソキウスは!?」
私は部屋の窓を指差す。リライナは大声でソウに確認する。
リライナ「本当!?どんな予感!?」
ソキウス「分からない。けど、これまでとは比べものにならないくらい、大きな災いだ。」
ソウの言葉に、私達は喉を鳴らす。オリバーは自分の部屋に走って戻った。着替えに行ったのだろう。リライナは私の部屋の机に包丁を置く。
リライナ「ソキウス、私の武器を取りに行かせてくれる?」
ソウが頷くと、リライナは窓から外に出た。リライナが跨がると、ソキウスは地面を蹴ってリュコス山へ向かった。それを見届けると、私は振り返った。そこには、開けっ放しの扉の前に佇むオリバーがいた。オリバーは私に気づくと手招きした。私はオリバーの元まで行く。
オリバー「セレ、外の世界に行きたいって気持ち変わんないのか?」
セレ「うん。変わらない。」
オリバーは長いため息を吐き出し終わると、壁の背に座り込んだ。私も倣って座り込む。
オリバー「俺は反対だ。外の世界に行った父さんは帰って来なかったから。」
セレ「うん。」
オリバー「俺はセレとは血のつながりはないけど、家族みたいなもんなんだ。」
セレ「うん。」
オリバー「だから、家族を二人も外の世界に行かせたくないんだ。」
セレ「うん………。」
オリバー「それに、俺はセレが好きだ。」
セレ「は!?」
私は思わず素っ頓狂な声を発する。オリバーの横顔を見ると、顔が耳まで真っ赤になっていた。どうやら本当なみたいだ。私は意地悪な顔で立ち上がる。そして、オリバーの前に仁王立ちした。
セレ「私が好きだと?」
オリバー「あ、ああ………。」
セレ「この私が恋愛に興味あるとでも?」
オリバー「だよなぁ~………。」
オリバーはがっくり肩を落とす。俯くオリバーを私は勢いよく抱き締めた。
オリバー「セレ!?」
私もずっと思っていた。11年しか生きてないけど、オリバーといると楽しかった。次第に、これって恋なのかなと思っていた。私は口を開き、精一杯の笑顔を向ける。
セレ「私………。」
言い終わる前に、爆破音が聞こえた。一つじゃない、次々に爆破音と悲鳴が聞こえた。そして、すぐ近くでなった爆破音は、玄関からだった。
?「谷の子は一《《匹》》残らず全員殺す。」
玄関から聞こえた声と、殺気。私はオリバーの口と自分の口を塞ぐ。ソウはまだ帰ってこない。相手は一人。私は手元の弓矢を見る。
オリバー「__セレ………。__」
セレ「__オリバーは隠れてて。__」
私は弓の弦を指ではじく。弦はピンと張っている。私は矢筒から矢を一本取り出す。相手は多分大人。この一本を外せば死ぬかも知れない。それに、人を殺すことになる。私は両手を見る。この手が血で染まる。
私は、大きく息を吸い込み、吐き出す。そして、覚悟を決めた。大切な人を守るためなら。
セレ「上等だ。人でも何でも殺してやるよ………。」
あとがき
セレよりもオリバーが好きです。
オリバーって聞くと白髪に少し赤が入ったあっちのオリバーが………分かる人いますかね?
いたら教えてください。
けど、その後に登場するあいつも好きだ。
第二章が楽しみだ。