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シティ・ロマンス 第三話
林沢レオ
「下手くそ!うるさいぞ!」
遠くから声が聞こえた。たまにくるおじさんの声だ。
僕は演奏をやめなかった。これこそ彼に対する最大の反撃だと勝手に思っている。ざまぁねぇな。
指先が作る椎名林檎が今日はアップテンポだと感じる。ミスをしそうで怖い。
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「やっほー」
公園に行くとまた佐倉さんがいた。
「こんばんは」
「また浮かない顔してるねぇ。絵に描いたような落ち込み方じゃないか。はははっ」
「笑い事じゃないですよ。大変だったんですから、もう」
「そんな怒ることないじゃん。で、なにがあったの?」
「…ピアノが趣味で、駅で演奏してたんですけど、ミスっちゃって」
「そんだけか。つまんねーの」
そんだけなんて言っても、僕にとっては大問題なんだ。
「あ、今怒ったでしょ」
「当たり前ですよ。僕にとっては大変なことなんですから」
「じゃあ私の昔会ったやつの話でもする?」
「昔ね、変な男の人に会ったんだ。『俺は今会社で大成功しかけてる。そろそろ社長になれるかもしれない。もし俺が社長になったら、結婚して欲しい』なんて言っちゃって」
「借金までして色々進めてたんだって。でもねー、直前で信頼してた部下が逃げて、2000万負けてた」
「その挙句一文無になったそいつは借金返すためにまた借金、その借金返すために…っていう風になっちゃったんだ」
そこまで行くと僕のさっきのミスなんてどうでも良くなってきた。
「ありがとうございます。気が休まり…」
「本当に話したいのはこっからだから!私の話を聞け!」
「はいっ」
「お利口さん」
「それでね、裏社会の人に頼むようになっちゃったんだ。ま、それも返すの遅れに遅らせて」
「そんなことしてるうちにもうカンカンになっちゃって。ちっちゃいグループの2人に小刀でお腹切られて内臓売られて死んじゃった」
「えっ!?」
急展開すぎて声が出てしまった。グロすぎる。
「驚いた?はっはっは!」
「嘘だったんですか…?」
それは確認というより希望だった。頼むから嘘であってほしい。
「全然マジだよ。怖い?」
「怖すぎるでしょ…」