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焦げた努力は美味しくないから削って捨てる。
2025/09/18
チン、という音がした。パンが焼けた音だった。オーブントースターの中からパンを取り出した。焦げていた。焼く時間を間違えたらしかった。私はナイフで黒い部分を削った。
削りながら、頭は自然と昨日のことを思い出していた。昨日、中間テストの総合得点と順位が出た。私は勉強があまり得意ではなかった。テストは500点中189点で、クラス最下位だった。それに特段ショックを受けたわけではなかった。いつも通りのことだったから、ただ、頑張ったのになといつも通りのショックを受けていた。『青柳さん、点数やばすぎ!アタシより低いじゃん。もっと頑張れよ〜。』そう言ったのはクラスメイトのマドノさんだ。漢字は多分、窓野。彼女にたまたま、私の順位が表示されている画面を覗かれた。私はマドノさんと関わったことがないから、マドノさんのテストの点数とか順位とかはよく知らない。でも、クラスの中心人物で気が強くて、いわゆるギャルというか、人との距離が近いというか、みんなのことを均等にいじってくるというか、そういう人なのはわかる。私はマドノさんが苦手だった。私も頑張っているんだよ、これ以上頑張れって言われても、じゃあ今までの頑張りはなんだったの。そう思った。口にはできなかった。マドノさんは自分の言いたいことだけ言って、すぐに友人らとの話に戻った。マドノさんの友人もやっぱりギャルっぽい。
「あ。」いつの間にか、パンの焦げていないところまで削っていた。私はナイフを置いて、それを立ったまま食べた。すぐに食べ終わって、制服に着替えた。今日もいつも通りに学校があって授業があって、マドノさんの姿を見ることになるだろう。考えるとスカートのベルトを通す手が一瞬止まったけれど、風邪でもないのに休むことはできないから、頑張る。