閲覧設定

基本設定

※本文色のカスタマイズはこちら
※フォントのカスタマイズはこちら

詳細設定

※横組みはタブレットサイズ以上のみ反映

オプション設定

名前変換設定

この小説には名前変換が設定されています。以下の単語を変換することができます。空白の場合は変換されません。入力した単語はブラウザに保存され次回から選択できるようになります

公開中

情とは依存、ともなう縛りそれは愛

 目の前に広がっていた景色には、私の身体の熱が段々と上がっていき、喉が乾いて、ムワッとする湿度に内臓が蒸されてしまう程に熱いのに、まるで目の前で私の手によって乱れた女に酷い嘘をつかれ、騙さされてしまったかのような大きなショックを受け、募っていく不信感が肌の表面の温度を急激に下げ、鳥肌が一気に身体の末端からゾワゾワと上に上にと、広がっていった。どうしてだろうか。この女には息が上がって首筋から肩まで真紅に染まり、目を合わせる事も恥ずかしいからと、背中を向けて汗で彼女の短くぷつりと毛先の揃った後ろ髪がうねって湿る、長くて細い首筋に張りついて、首をこてんと傾けてその綺麗に真っ直ぐな髪に潜んで色めかしい視線を此方に向ける、愛しい彼女。そのいじらしい姿に、唆られて、こたえるようにその、甘い香水が汗と交じってラストノートとなり、彼女の甘さとあどけなさそして、私の愛を一心に受けそれに応えるよう、『貴女の愛しい私を見て』と訴えかける愛を享受し、支配的に微笑み、何処かかげりのあるその表情をじっと見つめ、艶々とひかる背中を両腕できつく抱擁し、女の子らしく甘くて可愛らしいシャンプーの香りが肩口からふわふわと漂って、肩からうなじそして鎖骨へと順に唇を当てつけていく。その行為に彼女は甘い嬌声を僅かに漏らす。ふーっとみるみる紅くなり、温度が上がっていく彼女の身体を私の冷たい舌で舐めとる。耳裏までじっくりと虐めぬくと辛抱かなわず、勢いよく私の胸に飛び込み、今にも泣き出しそうな淡くうるうるとした瞳と共に、真っ赤になった頬と唇が私の唇に迫ろうと顔が近づいてきた。なんだか余裕のない彼女がいじらしくて、可愛らしくて、愛おしいと思った衝動にかられ、小さな頭を腕で鷲掴むように抑えてそのぽてっと丸く、小さな唇に思い切りかぶりついた。理性なんていう咎なんて既に捨ててしまったように一心に互いを求めて、受け入れる。次第に彼女との息遣いや目線がゆっくりと間合いをもって、調和していく。苦しいくらいに、痛いくらいに胸の中で心臓が跳ねている。「興奮」ってこういう事をいうのか、と変に俯瞰的に頭が働くも、彼女の一挙手一投足には目が離せない。こうして身体が重なるという快楽は恐ろしいくらいに人のブレーキを破壊させる威力があった事に今更、驚かされていく。そうして互いの隙間を無くしてひとつに紡ぐ、生温い体温で汗となって溶かされていく。 …………… あれからもうどれだけの時間が経ったのか、わからない。まだ深く眠り続ける彼女を起こさないように、ベットから起き上がり、掛け布団を肩まで掛けてやると、ゆっくりとカーテン越しに雫が反射している濁った明かりが漏れる窓に近づく。もう息の乱れようもないのに、まだ心臓がやけに背中や手のひらにうるさく響いている。あれほどにかいた汗は、籠った匂いと合わさった形跡は残したものの消えていた、というのに相変わらず、窓の外の雨は止む事はなくて、そればかりかトントンと屋根に弾く雨音はザーという古い機械のモーター音のような不快なノイズが空から降り注がれている。 いつも通りの1日であったなら、この雨もいち早く止む事を望んでいただろう。 否、彼女と出会った時から、既にいつも通りなんていう不確定でいて安心感のある日常など、もうとうに消え失せてしまっていただろう。 雨が止めば、きっと我にかえってしまう 梅雨があければ、もう二度と………
「いらっしゃいませー」 明るく、軽やかな声色で先程まで訪れていた、アパレルファッション店の店員が私を出迎え、期間限定セールを大々的に宣伝していた。 「すみません。ラフで動きやすく、きちっとした印象のパンツってありますか?」 何となく、彼女のいつも見る私服姿とは違った格好で会うことになるのだろう。と予想して、柄にもなく、店員に声をかける。 「はい!そうなりますとー、あちらの看板の下を通った先にお勧めの商品がいくつかございますー」 「では、ご案内致しますねー」 ……………… 「じゃあ、これとこれを試着します。」 「はい!かしこまりましたー。では女性用試着室までご案内させていただきますね」 いやに、丁寧な接客をされて少し疲れてしまう。店員の首から下がる名札にはバッチが2つほどあったので、とても仕事のできる人なんだなぁと勝手に詮索まがいな思考が働き、自己嫌悪に陥る。 それより、無自覚にも彼女との約束に舞い上がっている自分がまだ心に巣食っているこの状況が、一番怖いとさえ、思う。 私はここまで彼女を想っていたとは、付き合っていた時には気づきもしなかったというのに。
<< 前へ  1 / 3  次へ >>
目次