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通学路無視は楽しい
「ねえ、三風ちゃん。ちょっと寄り道していかないのだ?」
校門を出てすぐ、海月(みづき)は三風の制服の袖をきゅっと引っ張った。
いつもなら、先生や親に言われた通りの「正しい通学路」をまっすぐ帰る。でも、もうすぐ夏休み。クラスメイトたちの浮き足立った空気に当てられたせいか、海月はなんだか、いつもと違う冒険がしてみたくなったのだ。
「えっ、でも……通学路以外の道は通っちゃダメって言われてるよ?」
三風は困ったように眉を八の字にした。真面目な彼女らしい反応だ。
「大丈夫なのだ! 海月族の勘が、こっちの道に『何か面白いものがある』って言ってるのだ!」
海月は胸を張り、いつもの大通りではなく、鬱蒼とした木々が影を落とす細い脇道を指差した。坂道を下った先、きらきらと光る海がいつもより近くに見えるルートだ。
「う、うん……。みづきちゃんがそこまで言うなら……」
少しだけ辺りを気にするようにキョロキョロと見回しながらも、三風は海月の後ろを小さな歩幅でついてきてくれた。
アスファルトから土の道へと変わり、踏み締めるたびにカサカサと乾いた音が響く。
頭上を覆う青葉の隙間から、夏の強い日差しが木漏れ日となって二人の肩を斑に照らした。ジリジリと鳴く蝉の声が、大通りにいる時よりもずっと近く、大きく聞こえる。
「わあ……。なんだか、トトロに出てくる道みたい」
緊張していた三風の表情が、いつの間にか小さなときめきに変わっていた。
「そうなのだ! こっちの方が涼しくて気持ちいいのだ」
「本当だね。いつも通る道なのに、一本ズレるだけで全然違う場所みたい……あ、見てみづきちゃん!」
三風が指差した先には、古い石垣の隙間から溢れんばかりに咲き誇る、鮮やかな青いアジサイの花があった。
「綺麗なのだ……!」
「うん。学校の帰り道に、こんな場所があったなんて知らなかったな」
二人は足を止め、静かな木陰でその花を見上げた。
頬を撫でる風には、ほんのりと潮の香りが混ざっている。誰もいない秘密の道。二人だけの特別な空間。
(海月はお姉さんだから、三風ちゃんに良いところを見せられたのだ!)
心の中でドヤ顔を決める海月。そんな彼女の横顔を見て、三風はふっと優しく微笑んだ。
「みづきちゃん。私、夏休みのお散歩、この道に来てみようかな」
「いいアイデアなのだ! その時は海月も……」
――ガサッ。
その時、近くの草むらが大きく揺れた。
「ひゃうっ!?」
「な、何なのだ!?」
二人は思わず抱き合う。
びくびくしながら様子を伺うと、草むらからぬっと現れたのは、一匹の大きな三毛猫だった。猫は「にゃあ」と気だるげに鳴くと、二人に興味なさそうに、そのままトコトコと去っていく。
「……猫さんだ」
「びっくりしたのだ……。海月、心臓が止まるかと思ったのだ……」
顔を見合わせ、どちらからともなく、ぷっと吹き出した。
静かな小道に、二人の高い笑い声がこだまする。
「あはは! みづきちゃん、海月族なのに猫が怖いの?」
「違うのだ! 不意打ちだったからなのだ!」
手を繋ぎ直した二人は、またゆっくりと歩き出す。
通学路を無視したちょっぴりいけない冒険は、二人の距離をまた少し、近づけてくれたようだった
配信でも言ってたのだ!
リアルには近づけてないのだ
またリクエストあったらファンレターっていうもので教えてなのだね~~