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第8話:不滅の烈風(ガミジン登場~フルコンビネーション)
タヌキ
第8話:不滅の烈風(ガミジン登場~フルコンビネーション)
巨大な門番を撃破した俺たちは、ついに城の最奥にある、不気味な紫色の炎が揺らめく『玉座の間』へと足を踏み入れた。
部屋の中央、禍々しい漆黒の玉座に腰掛けていたのは、人間の形を模しながらも、その背中に空間を歪ませる巨大な闇の翼を纏った悪魔――三魔神が第1のボス、【歪魔(わいま)ガミジン】だった。
「よくぞここまで来た、学園の羽虫ども。門番を倒した程度で、この私に勝てると思ったか?」
ガミジンが冷酷な笑みを浮かべてすっと両手を掲げた瞬間、玉座の間の空間全体がぐにゃりと反転するように歪んだ。
これまで出会ったどの悪魔とも桁違いの、肌がヒリつくような凄まじい威圧感が部屋を満たす。
「羽虫どもが……ここで私に押し潰されるがいい!」
ガミジンの魔力が膨れ上がり、目に見えない空間の圧迫感が俺たちを襲う。だが、今の俺たちのチームは、ただ突っ立っているだけの落ちこぼれ集団じゃない。
「ウチらを無視してんじゃないわよ、トカゲ野郎!『シュガー・レイン』!」
姉のゴスロリ少女が叫ぶと、天井から数万本の鋭いアメの針が豪雨のようにガミジンへ降り注いだ。
「ガムも追加。……爆発しろ」
妹のパンク少女が放った無数のガム爆弾が、アメの針に連動してガミジンの周囲で一斉に大爆発を起こす。
ズドガガガガガァァァン!!!
凄まじい爆煙が玉座の間を満たす。しかし、ガミジンは煙を突き破り、無傷のまま俺たちへ向かって突進してきた。空間をズラして爆発の直撃を避けたのだ。
「甘いわ!」
ガミジンの鋭い爪が双子を引き裂こうとした瞬間、ガキガキガキッ!と巨大な氷の壁が立ちはだかり、その一撃を真っ向から受け止めた。
「私の氷を、二度も簡単に壊せると思わないことね!」
氷華が青い瞳を輝かせ、魔力を全開にする。さらに、その氷の壁を透過するように、レンの銃口が火を噴いた。
「おいおい、俺の弾からも逃げられると思うなよ!『トリック・ウォーター』!」
レンが放った水の弾丸は、ガミジンが歪めた空間の「隙間」を縫うように何度も直角に跳ね返り、ガミジンの両手両足を正確に撃ち抜いてその動きを完全に縛り付けた。
アメとガムの猛攻、氷華の防御、レンの精密な足止め。天才たちが完璧に繋いだ、一瞬の勝機。
「迅!! ラスト、ぶち抜いてこい!!」
レンの声が道を開く。
「おおおおおおおッ!!!」
俺はボロボロの肉体を駆動させ、ガミジンの胸元へと飛び込んだ。
足の裏で大地を掴み、腰を回し、すべての連動を右拳へと乗せる。
ただのそよ風じゃない。みんなが繋いでくれた、この一撃は――世界を穿つ烈風だ!
「これで……終わりだぁぁぁッ!!!『烈風(インパクト)』ォォォォッッ!!!!」
―――ドッ、パァァァァァァンッ!!!!!
玉座の間が完全に吹き飛ぶほどの、本日最大の衝撃波がガミジンの胸の核(コア)を真っ向から捉えた。
巻き上がる凄まじい爆煙。手応えは確かにあった。俺は勝利を確信し、大きく息を吐き出す。
「やった、か……!?」
だが、煙の奥から響いてきたのは、絶望を誘う冷酷な笑い声だった。
「ククク……ハハハハハ! 見事だ、羽虫ども。まさか私の『空間防御』をここまで紙一重まで突き破ってくるとはな」
煙が晴れた中心。そこには、胸の制服の一部が焦げているだけで、傷一つないガミジンが立っていた。
迅の烈風の直撃すら、当たる寸前で空間をミリ単位でズラして完全に受け流していたのだ。
「うそだろ……俺の最大の一撃が、全く効いてない……!?」
俺が愕然と一歩退がったその瞬間、ガミジンの瞳が禍々しい紫色に発光した。
「今度はこちらの番だ。――『空間反転(リバース・ディメンション)』」
ガミジンが指をパチンと鳴らす。
次の瞬間、世界がぐにゃりと一回転した。
「キャッ!?」
「うわっと!?」
重力が上下左右めちゃくちゃになり、天井が床に、床が壁へと目まぐるしく入れ替わる。
体勢を崩した俺たちに向けて、ガミジンは容赦なく空間を引き裂く闇の刃を無数に放ってきた。
「ウチらが防ぐ!『キャンディ・シールド』!」
姉のゴスロリ少女が慌ててアメの盾を展開するが、空間ごと切り裂くガミジンの刃の前には紙同然だった。アメの盾が粉々に砕け散り、双子は激しく壁へと叩きつけられる。
「くそっ、動きが読めねえ!『トリック・ウォーター』!」
レンが逆さまになった天井から弾丸を連射するが、ガミジンが空間をねじ曲げたことで、放たれた水の弾丸は全てレン自身の方向へ反転し襲いかかった。
「うわあああ!?」
自分の弾を喰らい、レンが血を吐いて倒れ込む。
「レン! ……『氷結・絶対零度』!!」
氷華が怒りを込めてガミジンを凍らせようとするが、ガミジンはその冷気ごと空間を切り取り、なんと氷華の真後ろへと転送した。
「くっ……ああっ!」
自分の冷気で身体を縛られ、氷華もまたその場に膝をつく。
空間を操るという能力の、圧倒的な理不尽さ。
アメとガムの猛攻も、レンの精密射撃も、氷華の絶対の氷も、すべてがねじ曲げられ、自分たちに牙を剥く。
一瞬にして、俺以外の仲間全員がボロボロになって倒れ伏してしまった。
「これで終わりだ、落ちこぼれのそよ風くん。お前のその貧弱な風で、この歪んだ空間のすべてをどうにかできるとでも思ったか?」
ガミジンが冷たい目で見下ろしながら、ゆっくりと俺に向かって歩み寄ってくる。
逃げ場のない、四方がねじ曲がった絶体絶命の空間。
一人残された俺は、激しく痺れる右拳をじっと見つめ、そして、倒れた仲間たちの姿を見た。
(みんなが命がけで繋いでくれたんだ……。ここで、終わってたまるか……!)
俺の脳裏に、かつて自分をかばって死んだ恩師の背中が、そして極上地獄門で厳十郎さんが見せた「能力を使わない一撃」の光景が、鮮烈に蘇る。
「……まだ、終わってねえよ」
俺は不敵に笑い、ガミジンに向かって、再び右拳を限界のさらに奥まで引き絞った。
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