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春
あの人は可愛い
第一章 夏
あの人は今、一体何をしているのだろうか...
「あの人と出会った日も同じくらいの暑さだったなぁ。」
あの人、もとい私の初恋の相手は今日のような猛暑の日に私の通う中学で出会った。
その出会いは運命的な何かがかかわっているというのだろうか。とてつもない奇跡であった。
あの人は、いわゆる変わり者というやつで自己紹介の時には頑なに下の名前を言わなかった。
でも、そんなあの人が喋るときには、変わり者な雰囲気ががらりと変わった。
大人っぽい雰囲気のような、子供っぽい雰囲気のような、そんな不思議な雰囲気が喋る姿にあった。
今、思い返してみるとその雰囲気に私は心惹かれていたのかもしれない。
あの人の席は私の隣だった。
授業中、よくあの人が気になって横をちらちら向いて、先生に怒鳴られていたなぁ。
私があんまりにもあの人を見るものだから、周りからは気味悪がられていたものだ。
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あの人が転校してきてから、一日たった昼の屋上でのこと。
その日の屋上は、やけに静かだった。
そりゃそうだ。あの日は私とあの人しかいなかったんだから。
これはチャンスだと思い、あの人に喋りかけてみた。
なんて喋ったかわかるかい?
正解はこうだ。
「あ、あの。今日って空がきれいですよね。まあ鬱陶しいほどに太陽はギラギラして暑いですが...」
笑えるよな。でもこれがあの時言えた最大限の言葉だったんだ。
あの人はなんて返したと思う?
「そうですね、空がきれいですね。雲一つないせいでとてつもなく暑いですが...」
って笑いながら返してきたんだぜ? 声がドタイプだったからそりゃもう一目惚れよ。
返してくれた喜びと、声がドタイプだった驚きで返せないでいると、あの人から
「あなたは毎日屋上に行くっているんですか?」
って聞かれたんだよ。 聞かれてからなんとか正気に戻って
「あ、、はい!いつも屋上にいるんです!」
って馬鹿みたいに返して、両方ともその返し方に笑っていたんだよ。
やっぱ笑い方も可愛いし、ドタイプだわ。
それから、昨日のアニメとか、他愛もない話ばっかしていても、その時は本当に楽しかった。
楽しい時間はすぐに過ぎ去っていき、また授業が始まる。
あの人も、私も、授業中の私語はしないような真面目(私はちらちら見たりする)だったもんで、放課後まで、あの楽しい時間はお預けだった。
放課後、一緒に帰らないかと提案すると、あの人は快く承諾してくれた。
なんと、あの人の家は私の家の一件挟んだ場所にあったのだ。
その時は神に感謝をしまくったよ。
なんて出会いなんだろうって。
それから、毎日一緒に登校するようになって、仲も自然と深まった。
でもまだ勇気が足りないから、告白なんてことはできなかったがな。
告白はできないくせに、日に日に思いは強まっていってしまう。
もういっそのこと告白したいほどに思いは強まったある日のこと。
その日はなぜか体がだるかったから休んでいたところ、あの人が家に来てくれたんだ。
なんて優しいんだろう。女神だ。女神としか形容できないようなその行為は、誰かに指示されたわけではないらしい。なんて優しいんだろうか。
あの人の助けもあり、すぐに体はよくなった。
この出来事があってからはあの人と、私との距離はみるみる近まり、たまにどっちかの家で泊まるなんてこともあった。
そんな日常がたまらなく幸せだった。
第二章 秋
秋、夏のような青々とした葉から茶色くなっていく変化をあの人と二人で見ながら登校する。
夏からは関係が悪くならず、よくなってきている。
体育祭や文化祭でも、あの人と同じ班になりたい気持ちをぐっと抑え、今のあの人とは違う班での活動に専念している。
文化祭では喫茶店をやることになった。あの人はファッションに詳しく、クラス全員の喫茶店での服装をコーディネートしている。私も手伝いたいが残念なことに私はファッションセンスが壊滅的で、コーディネートはあの人がやっている。
私はほかの場所を専念しないとあの人に向ける顔がなくなってしまう。
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体育祭当日
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今日、あの人にかっこいい姿を見せるために猛特訓を積んできた。
負ける気がしない。あの人はなんと、手作りのお弁当を二人で食べようと誘ってくれた。
誘われたときは内心、大喜びしたが、あの人の前でそんな子供のようなことをするわけにもいかない。
行動は抑えたつもりだったが、出ていたらしく、あの人が笑っていた。可愛い。
見事体育祭は私たちのチームが大活躍し、あの人にかっこいい様を見せることができた。
あの人のお弁当はとてもおいしかった。
今まで食べた何よりもおいしかった。店を出せるほどに。
嗚呼、最高だ。こんな生活がずっと続きますように。
第三章 冬
最近、あの人から手作り弁当を分け合えるほどの仲になった。
本気で作った力作を食べてしまうのは少々もったいなく思ってしまうが。
そういえば最近、疲れがたまっていてふらふらする。
テスト期間中で勉強しすぎなのだろうか...
あの人に相談してみると、疲れをとるのに良いといわれているアロマと、アロマストーンをもらった。
あの人も愛用しているそうだ。
それと、疲れをいやすための飲み物ももらった。
やっぱりあの人は優しいなぁ
「これで疲れをいやしてね!」
だって、本当に可愛い。
テスト期間が終わったら告白をしよう。
あの人となら一生別れない。そんな気がする。
**疲れをいやす飲み物として渡された物はジギタリスが入っていた**
病院に搬送されたが回復せず、病院で死亡。
享年 十四歳
死因 不整脈源性心停止(毒殺)
「ほんと、あなたってバカね」
告白、かなわず...
こうして、「私」は「あの人」に殺害されたのもわからぬまま死んでゆく。
誤字と表記ゆれが致命的