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Ⅱ《フローライト》
**「ファイヤァァァ!!!」**
喧騒を切り裂くように現れたのは、朱色の外套を羽織った魔法使いだった。手には幾つもの爆弾が握られており、その目は狂気と興奮にギラギラと輝いている。彼女は街の破壊などお構いなしとばかりに、次々と爆弾を投げつけていった。
連続する凄まじい爆風が、宝石竜を容赦なく抉り取る。あまりの早技に、竜すらも態勢を崩して咆哮を上げる暇もない。地面が揺れ、熱風とまばゆい閃光が周囲一帯を呑み込んだ。
「面白くなってきましたね」
私はそう呟いて荷車を庇うように身を屈め、女性と男性も慌てて耳を塞ぐ。しかし、爆破の魔法使いの攻撃はそれだけでは終わらない。トドメとばかりに放たれた一撃が、竜の直近で炸裂した。
**ゴォォンッ!!**
その衝撃波が、周囲の空気を震わせ、私たちの髪や服を激しく逆立てる。その瞬間、風圧に耐えかねた女性の耳元で小さな金属音がした。先ほど私が売り渡したばかりの元商品が、爆風に巻き込まれて盛大に吹っ飛んでいく。
「ひっ……私のピアスが!」
女性が震えて指指す先で、青く輝く宝石は虚空を舞う。
一方の宝石竜は、立て続けの爆破によってついに耐えきれず、ガシャアアアッと崩れ落ちて地面に伏す。早技すぎる討伐劇の結末に、私は感心しながら自分の商売道具の無事を確認した。
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もうもうと立ちこめる白煙の向こうから、軽やかな足音が聞こえてくる。
煤けた朱色の外套を靡かせて再び現れたのは、白い髪に黒い肌、それからオッドアイ。やはり見覚えのある魔女だ。その手にはまだ微かに魔力の火花が散っている。彼女は倒れ伏した宝石竜をちらりと見下して、
「あーあー、また粉々にしちゃった」
と呟きながら、足元に転がっていた小さな物体に気づく。あの青いピアスが奇跡的に無傷のまま落ちていた。彼女はしゃがみ込み、それを器用に指先でつまみ上げる。
「あ、それ……」
青いベレー帽の女性が、おずおずと声を絞り出した。買ったばかりの宝物が乱暴に扱われないか、ハラハラしながら見つめている。魔女は女性を一瞥し、ふっと悪戯っぽく笑ってみせた。
「これ、あんたの? なかなかいい趣味してる。私の魔法にも耐えたし、上物よ」
そう言って、彼女は女性の手のひらに、ぽんとそのピアスを乗せた。