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扇風機と梅雨入り
生活館へようこそ。
何を展示しようか悩んでいるうちに、7月が近づいていました。
今回展示するのは、『扇風機と梅雨入り』です。では、お楽しみください。
「今年は例年より早く梅雨入りとなります……早くとも今日の午後には……」
一人暮らしの私の一室に響く、天気予報士の台詞。信憑性が時間の進みによって当たらないことがある予報を容易く信じる方ではないが、私の一室から見える空は少しばかり澱んでみえたため、珍しく聞き耳を立てていた。特に家を空ける用事はないのに、体が何故かそわそわしている。洗濯物の中に乾きにくい洋服はなかったか。今日のうちにスーパーで買い物した方がいいかもしれないとか。私の隣である103号室に住む、中学生の男の子を育てている奥さんと同じようなことを珍しく考えている。
そろそろ身内が私にいい人との出会いを申し立て、周りの吉報にまた焦り出す二十代後半に差し掛かってしまった私は、ただ一人マンションの102号室で静かに過ごす。
「今のうちに扇風機出しとかなきゃな」
特に誰かとの出会いを求めず、扇風機を求める。学生のころから使っていた扇風機は少し塗装も剥げている。これだけでも十分古めかしいのに埃かぶっているものだから、私はティッシュで簡単に拭く。
どうしてか実家の自室を思い出す。あの頃も、自分で扇風機を取り出していた。あの時は扇風機がかぶっていた埃が多くて咳き込みながら綺麗にしていたっけ。私は笑みをこぼしながら延長コードにコンセントを挿し、電源をいれる。
音を立てて、羽根が回り始める。まだ梅雨入りが近いだけなのに、夏を一人感じて涼む。日々の暑さが少し冷やされていく。ただ風を感じるために、扇風機の前に座り込む。
「あ゛ー」
子供みたいに扇風機に声の震わせを手伝ってもらう。部屋は少しずつ湿気が篭り、蒸し暑さをかんじれるようになってきた。あの天気予報士が言っていた午後から梅雨入りは、嘘じゃなかった。
いかがでしたか?最近天気がすぐれないため、足元には気を付けてくださいね。
それではまたのお越しをお待ちしております。