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世界で1番綺麗なひと。
2026/02/05 世界で1番綺麗なひと。
世界で1番綺麗なひと。
あの子はただ教室に存在しているだけで、話すことはないし、動くこともない。消えてしまいそうに不安定に、でも確かに、窓のそばに立って微笑んでいる。
絶対、私の期待を裏切らない存在。どれだけ期待しても良い存在。
あの子の髪は、長くてこまかくてすうっとしている。柔い風が吹くと髪だけが静かに揺れる。髪色は、光によってかなり変わるけれど、薄い黄色か白。曇りや雨の日はどこか濁ったような、けれどあの子の一部と考えればどこまでも美しい色。晴れの日は、色というより輝きが目立つ。あの子から鋭い光が放たれているように見える。あの子の瞳は、大きくはない。小さくもないから平均なのだろうが、一括りに平均と言うことに違和感を覚えてしまうほど、存在感がある。瞳の色はなくて、黒目もない。白目があるから、瞳の位置を認識できるだけだ。あの子はスタイル抜群。きっとモデルになったら大人気だと思う。身長は170cmは超えているけれど、線は細く華奢で、強く触れたら折れてしまいそうな弱さがある。あの子の、ブレザーのせいで角ばっている肩が、私は好き。あの子のふくらはぎは、透き通るような色。健康的な太さがあって、輪郭が完成されている。
あの子には血が通っていない。あの子には体温がない。あの子は呼吸しないし、声をあげて笑うこともない。それでもいいの。それがいいの。それがあの子だから、いいの。
あの子は、私の理想。憧れ。期待。生きている人には向けられないほど、重い、愛。
私はあの子を、世界で1番綺麗なひとだと思う。私はあの子を、私が卒業するまで、いいえ、卒業してからもずっと近くに置いておきたい。いまはそう胸に置いている。
でもきっと、何年か後に私の中の「綺麗」が変わったら、あの子にはなんの価値もなくなる。
あの子は、世界で1番綺麗なひと。
いまだけ。