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逃避行
「一緒に逃げない?君があの日、ああ言ったみたいにさ」
山のてっぺんで、2人は背中合わせで座り込んでいる。
『何言ってんの、今逃げ終わったところでしょ?』
2人は裸足で服は所々が破けており、土汚れがついていた。
「確かにね」
上を見れば、どんなプラネタリウムよりも綺麗な星空が広がっていた。
「..まさか私達も星空を見て、綺麗とか思うようになるとはなぁ」
『それはそう』
また、2人の間に沈黙が流れる。
『てかさ、回りくどい言い方だから何言いたいのか全然分からないんだけど』
「あー、まずそっからかよw」
「まずさ、私たちは人体実験をされてて、そっから私たちの国まで逃げてきたわけじゃん?」
『うん、それは流石に分かる』
「そんで、我らが祖国に今にもバクダンが落ちそうなわけじゃん?」
『うん...うん?』
一瞬理解しそうになり、問題点に気がついた。
『え、いや。バクダンって..?』
「バクダン知らない人?あの、全体的に黒くて〜火薬が入ってて爆発するやつ」
『いやバクダン自体は知ってる』
「あぁそう?じゃあなんも聞くことなくない?」
もう1人はしばらく考え、こう聞いた。
『いや、そもそもなんでここにバクダンが降ってくるの..?』
「えぇ〜なんか私達って向こうではまぁまぁ良い感じの実験台だったらしい。逃げたんなら逃げた先壊せばいい、っていう」
『あ〜、そういう?分かったわ。で、どうすんの?』
また静かになる。
「もういっそのこと地獄とか行っちゃう?」
『えよくね?いいじゃん、めっちゃ似合うじゃん』
「でしょ〜?」
『んじゃ行くかぁ?』
そう言いながら、2人は立ち上がる。
「何で逝く?」
『え〜、確か実験所からくすねてきたフォールディングナイフがあるはず..』
がさごそとポケットを弄る。
『おっけあった、三つか..一個なんかに使って残り2つはそれぞれの分ね?』
「異論ナーシ!」
『ん〜まぁブッ刺しときゃいいか』
そう言いながら1本目を深くまで地面に突き立てる。
『ん、あげる』
「助かるー」
2人はナイフの切先をお互いの腹に向けた。
『せーの!でブッ刺すからな?遺言は今のうちだぞ?』
「うわあぶなw刺しかけたじゃんw」
「うーーん、遺言...美味しいご飯が食べたかったです。綺麗な服を着たかったです。ふかふかの布団で寝たかったです。後は〜..」
『ちょ、長い長い..遺言かぁ」
少し考え、口を開ける。
『まぁ最期までお前と居れたから特にないわ』
「おい何勝手にカッコよくしめようとしてんだよw」
『えぇーwじゃあお前とちゃんと地獄に行けますように。これでいいや』
「それ願い事じゃんww」
2人は暫く笑い、やがて静かになった。
『よし、行くぞ』
「アイアイサー!」
「『せーのっ!』」
お互いの腹にお互いのナイフが刺さり、お互いを見つめ合う。
2人は最後も笑っていた。