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柿
これは、オリキャラの過去編です。
昔々…ではなく、つい最近の出来事。
自然豊かな森に囲まれた小さい村に住む、心優しき青年の生涯のお話。
自然豊かな森。
人が沢山いる街からは離れている。
森の中には、小さな村がある。
その村には、とても仲の良い姉弟が居た。
姉の名前は『ルルディ・カロスィナトス』
明るく、心優しい子だ。ルルディは自然が大好きで、自然もルルディが大好きだ。
弟の名前は『プシュケ・カロスィナトス』
大人しく、心優しい子だ。プシュケは自然が大好きで、自然もプシュケが大好きだ。
ルルディは16歳、プシュケは15歳。
2人は村で、共に助け合いながら幸せに過ごしていた。
小さな村は、とても平和だった。皆温厚で、争いごとも一度も起こったことがない。
ルルディは村に居る子供と一緒に遊んであげていた。
他にも、家事などを積極的に手伝った。
プシュケは畑仕事や植物の世話をした。
プシュケの育てる植物は成長が早く、とても美しく育った。
ルルディとプシュケは、花が大好きだった。
仕事が無い時は、決まって村の奥を進む辿り着く花畑に行った。
この花畑は色とりどりで、とても美しい。
花畑はプシュケが大事に育てていて、立派に育っている。
蝶が美しい花につられて集まってくる。
プシュケは、次第に蝶と心を通わせ、蝶の言葉が分かるようになった。
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…自然と共存し、平和に過ごしていたある日のこと。
ルルディが奇病にかかってしまった。
身体中に花が咲く病。治す術は無い。花に養分を取られ、最終的に衰弱死する。
プシュケは悲しかった。逃れられない、大切な姉が死んでしまう運命に。
でも、ルルディはあまり悲しんでいなかった。
「死ぬのは怖いけど…何かの為なら…大好きな自然の役に立てるなら、幸せよ。」
儚い笑顔だった。花のように繊細で、今にも散ってしまいそうだった。
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…プシュケは働きながら、沢山勉強した。寝る間も惜しんで、ずっと、ずっと。
どうにか治せないか、どうにか寿命を延ばせないかと…
でも、方法は見つからなかった。
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ルルディが奇病になってしまって、数ヶ月の月日が経った。
ルルディは、いつの間にかプシュケがよく行く花畑で眠っていた。
身体の到る所に、白い花々が咲いている。
それをプシュケが知ったのは、ほんの数分後だった。
蝶が、プシュケにルルディのことを伝えたからだ。
プシュケが花畑に行くと、ルルディの身体は冷たくなっていた。
花に囲まれて眠っている様子は、とても美しかった。
プシュケは、ルルディの冷たい手を優しく握ると、涙を流した。
泣いているプシュケに、一匹の蝶が近づいてきた。
蝶は、ルルディに伝えられたことを話した。
「私の命はもうじき散る。私は、自然の中で眠りたい。」
「…私が死んだら、花畑の近くに埋めてほしい…」
…プシュケは、すぐに村の皆に知らせた。泣きながらも、丁寧に。
村の皆は、当然とても悲しんだ。
でも、まずはルルディの願いを聞き入れることが先だった。
花畑のすぐ隣に墓を建てた。何時でも自然を見れるように。
その後、ルルディの身体を、ガラスで出来た棺桶に入れて土の中へ埋めた。
ルルディがかかった奇病は、不思議なものだった。
身体の養分を取って育った植物は、死んでも尚、四季問わず咲き続けるらしい。
しかも、身体は腐敗もせず、ずっと、植物も、身体も、美しいまま。
ただ、眠っているように見えた。
雨が、しとしとと降ってきた。
プシュケは、静かに泣いていた。ずっと、ずっと、泣いていた。
雨は、皆の心を映すかのように、ザァザァと強くなっていった。
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…ルルディが眠りについてから数年が経った。
プシュケは20歳になった。
ルルディが眠りについてから、プシュケは毎日花畑の所へ行くようになった。
ルルディが伝えたことを話した蝶は、ずっとプシュケに寄り添った。
プシュケは、これまで以上に手伝いや仕事を頑張った。
村の皆は心配し、ちゃんと休むように注意した。それでもプシュケは精一杯だった。
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また数年経ち、プシュケが24歳になって数ヶ月。
…村で、火事が起きた。
あっという間に家が燃え盛る。
一番に気付いたプシュケは急いで村の皆を避難させ、消火に取り掛かった。
一生懸命避難等を取り掛かったおかげもあり、負傷者が一人も出なかった。
運よく火事もすぐに収まり、被害はとても少なかった。
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火事が起こった後、片付けを行った。勿論プシュケは積極的に手伝った。
村のまだ小さい子が、うろついている。
(こんな所に居たら危ない)
そう思った束の間、燃えてしまった残骸は運悪く子供の上から落ちてきた。
(このままじゃ間に合わない…)
そう分かっていながらも、子供を助けようとプシュケは全力で走った。
すると、ふと自分の体が浮くような感覚になった。
気付くと、子供と自分の居た位置が入れ替わっている。
能力が発動した。〈対象の位置を入れ替える能力〉
(良かった…子供は助かった。)
プシュケは安心した。
でも…
プシュケは、子供の代わりに燃えてしまった残骸の下敷きになった。
そして、そのまま死んでしまった。
子供は大きな声で泣いていた。
正直、何が起こったのかこの時は分からなかった。
村の皆が、泣いている。
また、ルルディの時みたいに、雨がザァザァと降り始めていた。
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プシュケの亡骸は、ルルディの隣に埋められた。
ルルディと同じように、ガラスで出来た棺桶の中で眠った状態で。
沢山、青色の蝶が集まっていた。死を悲しむようだった。
ルルディの棺桶の中から、植物の蔓が伸び、プシュケに絡みついた。
そして、ドクダミを中心に色んな白い花がプシュケから咲いた。
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…確か意識が消えてから、数時間後だった。
目が覚めた。
…いや、俺は死んだのか…?
蝶が近寄ってきた。よく見た光景だ。
蝶にそっと触れた。いつものように。
…触れた途端は蝶は腐った後、粉々になった…
俺はパニックになった。怖かった。夢中で助けを求めるように走り、村に着いた。
俺が生まれ育った村。
…俺は村に入るのを躊躇った。
死んで迷惑をかけてしまっただろうし、きっと誰も俺は見えないだろうから。
すると、声をかけられた。
振り向くと、一匹の蝶が居た。ルルディ姉さんの伝言を話した蝶だ…
蝶がいつの間にか、妖精になって居た。蝶は、「ディア」という名前らしい。
ディアは、花畑の守護者で、ルルディ姉さんと俺の墓守をしていると話した。
ディアは、ルルディ姉さんの伝言を伝えに来たと言った。
「□□□□に、村に入るように言って。きっと大丈夫だから。」
それが、ルルディ姉さんの伝言だった。
でも、やっぱり怖い…不安でいっぱいだ…
誰かに背中を押された気がした。励ましを込めて。
村の子供が、俺に気付いて近づいてきた。
俺は、思わず目を見開いた。
…数時間後ではなく、数年も経っていたのか…
自分に近づいてきた子供は、あの日燃えてしまった残骸から救出された子だった。
名前は「アマ」。あの時はまだ2歳ほどだった。
しかし、すっかり成長して12歳くらいになっていた。
「あの……僕の所為で…死んじゃった…ごめんなさい…」
アマは、今にも泣きそうな表情だった。
『…俺は、お前が助かったならそれで良いんだ。』
そういいながら、アマの頭を優しく撫でた。
「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…」
アマは、泣き出してしまった。
『…おい、今はもう寝てる時間だろ?帰ってもう寝ろ。俺は大丈夫だから。』
そう言って、アマを抱っこした。
今はもう深夜0時。なぜ起きてるのか疑問でしかない。
アマは、すぐに抱っこされたまま眠ってしまった。
『…~♪』
小さな声で子守唄を歌いながら、アマの家まで行った。
「!?アマ…もしかして、プシュケに会いに行って…?」
アマのお母さんは、俺に代わってアマを抱っこした。
「…□□□□、ありがとう…あの時、アマを助けてくれて…」
アマのお母さんは、アマみたいに、今にも泣きそうな表情だった。
『俺は、そうしたかっただけなので…今日はもう遅いので、寝てください。』
そう言うなり、俺は速やかに村から離れた。
ふと気付けば、俺とルルディ姉さんの墓がある花畑に着いた。
『…今なら、助けられる…?』
ふと、そんな気がした。前とは違う能力を感じる。
俺は、ルルディ姉さんを棺桶から出した。
ルルディ姉さんの手を握り、目を閉じた。
何処か暖かい感覚がして、自分から何かが流れていった。
「…ぁ…あ゛?」
…蘇生出来たのかと思った。でも、目を開けると前のルルディ姉さんは居なかった。
r「…養分…¿」
変わり果てた姿。それに、俺を認識していない。
『…姉…さん…?』
困惑した。目の前に居るのは、一体誰だ?姉さんなのか?それとも…
「…魂を狩りなさい。」
何処からか、ルルディ姉さんの声が聞こえた。
俺は、混乱した。何かが手に当たった。
それは、死神が使う鎌だった。
『…ごめんなさい。』
そういいながら、変わり果てたモノに鎌を振った。
光り輝いている、魂が出て来た。
…俺の姿が変わっていく。
---
…俺はその日から、「影人(カゲビト)」になった。
恐らく、能力の使い方を誤った結果だろう。
俺以外、種族が「影人(カゲビト)」の者は居ないらしい。
「…□□□□、貴方は今日から死神の仕事をする。頑張ってね。」
また、何処からか、ルルディ姉さんの声が聞こえた。
『…□□□□?』
今更、違和感を覚えた。
俺の名前は「プシュケ・カロスィナトス」のはず。
でも、その名前は今は自分の名前ではない気がした。
『…俺の名前は…「ヴィラン・チェンジャー」だ…』
名前が、不思議と自分に馴染んでいく。
その様子を見ていたのは、ディアとルルディ姉さんだけだった。
柿…「自然美」「優しさ」「恩恵」「広大な自然の中で私を永遠に眠らせて」。
ドクダミ…「白い追憶」「野生」「自己犠牲」。
アマ…「あなたの親切に感謝します」「感謝」。