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〖3分でクレーマーを片す店員〗
はじめまして、ABC探偵です。
シリーズを出せる機能があったので、軽く出してみました。
健全モノですが、場面によっては描写がグロテスクかもしれません。
とあるネットゲームカフェの221B室。薄暗い部屋の中でパソコンのキーボードを打つ音だけが響く。
その音を出す手者は、ある一つのwebニュースにて手を止めた。
「遅いッ!!!!!!」
耳をつんざくような恐ろしい怒号。その怒号は俺が受け持った男性の喉から発せられた。
「申し訳ありません、お客様」
「遅いって言ってるだろ!一体、客を何分待たせる気だ!頼んだレアカード一枚ごときを見つけるのにそんなに時間がかかるのか!?」
そう、この男性客...カードゲームのレアカードなるものを本店のネトゲカフェに頼んでいた。だが、購入ではなく紛失したカードを探しているのだ。しかし...そのカードは調べてみると数万円とファンの間で取引されるらしく、そのカードの落とし主を店のチラシで大々的に探しているものだから所謂ところの転売者が現れる。
「お客様、申し訳ありませんが私にはそのカードがどのような形状で、どんな作品のものなのか理解しかねます。失礼ですが、お聞きしてもよろしいですか?」
「エセモンの“ヒカゾウ”の電気タイプだと言ってるだろ!」
エセモンのヒカゾウねぇ......しかも電気タイプ?変だなぁ、ヒカゾウって水タイプなんだけどなぁ。
「どのような効果ですか?」
「...でっ、電気タイプなんだから相手を麻痺させるに決まってるだろ!」
んなわけねーだろ。水タイプだぞ?電気出したら逆にヒカゾウが麻痺っちまうよ。
「お客様...」
「なんだよ!あのレアカードは俺がこの店で無くしたんだ!このチラシの落とし主ってのは俺だ!いいから、持ってこいよ!あるんだろ!?」
「ええ、ありますよ」
「なら!」
「ですが、貴方はその持ち主ではありません。ヒカゾウのレアカードの効果は周りに水を発生させターン毎に己の体力が回復していく効果です。それにヒカゾウは水タイプなんです。
本当の持ち主なら、カードの効果やキャラのタイプを知っていて当たり前ではありませんか?」
「......チッ」
コイツ、舌打ちしたな。滅びろ、転売ヤー。
「ですので、今回はお引き取りください」
「......くそったれ!!」
この間、約3分。
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例の転売ヤーが帰り、俺はエセモンのヒカゾウレアカードを見る。ヒカゾウというキャラは黄色いボディにゾウっぽい見た目をしている為かにわかには電気タイプと間違えられる。
本当のファンはしっかりと水タイプだと答え、何なら効果や良いデッキ編成まで答えられる。ファンというのはそういうものだ。
「あの......お兄さん」
カードから目を離すとカウンターを伺う黒髪の青年がいる。歳は十代半ばだろうか。
「お客様、どうなさいましたか?」
「その、エセモンのヒカゾウのレアカードを探してまして」
「......ヒカゾウのタイプとそのカードの効果をお答え願います」
「えっ...」
露骨に驚いたな。なんだ?転売ヤーか?今日は多いな。
「...ヒカゾウは水タイプで、周りに水を発生させてターン毎にプレイヤーのキャラクタースキル発生ターンを3分の一に下げる代わりに5%で休憩するデメリットとプレイヤーの体力を回復させる効果ですね。
電気タイプとの相性は不利ですけど、炎タイプ相手だと周りに発生させた水で継続ダメージを発揮することもできて、水電気のデッキで組むとめちゃくちゃ強いんですよね。そもそも単体でも強いですよね!もう自分、このカードめちゃくちゃ強くて大好きなんですよ。あと、さらに...」
「いえ、もう十分です。有り難うございます。こちら、ヒカゾウのレアカード〖水浴び〗です」
「あっ、もう良い...え、あ、有り難うございます!」
本当のファン、というのは...こういう青年のことだ。...答えるだけでも3分話してたんじゃないか?
さて、その青年が嬉しそうに帰る姿を見つつお答えしよう。
俺は和戸凉(ワト リョウ)、店長からは3分でクレーマーなどの厄介客を片す凄腕論破王だと......無駄に囃したてられている。
ただ、そんな俺でも片付けられない厄介客がこのネカフェの221B室、アルバイトからはシャーロック・ネトゲ廃人と言われる厄介客......日村修(ヒムラ オサム)がいる。しかしこの客はネカフェに住み着いて約三ヶ月が経つ。今月の料金を払っていないらしく、今回ばかりは俺が料金を押収しなければならない。
「嫌だなぁ...あのお客さん、変わってるんだよな......」
愚痴を溢そうが無駄だ。俺は決心して、221B室の扉のノブに手をかけ、思いっきり開けた。
お疲れ様です。
主人公の話しか今回はありませんが、次回からは例のホームズ視点で続きをあげようかと思います。
読んでいただき有り難うございました